【Autodesk University Japan 2017】「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(後編)」で語られたプリプロの重要性とCGのこれから | GameBusiness.jp

【Autodesk University Japan 2017】「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(後編)」で語られたプリプロの重要性とCGのこれから

スクウェア・エニックス 野末 武志氏とポリゴン・ピクチュアズ 監督 瀬下 寛之氏は、Autodesk University Japan 2017で「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(後編)」と題し、前編に引き続き両者の思想の共通点や3DCGの展望についての講演を行いました。

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スクウェア・エニックス 野末 武志氏とポリゴン・ピクチュアズ 監督 瀬下 寛之氏は、Autodesk University Japan 2017で「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(後編)」と題し、前編に引き続き両者の思想の共通点や3DCGの展望についての講演を行いました。

前編ではお互いのワークフローを確認し合いながら、「フォトリアル・セルルック共にプリプロの思想は同一で、手法にもそれほど差異はない」という結論に至りましたが、後編は更にプリプロを掘り下げつつ、3DCGの未来までの内容に触れるような講演となりました。講演冒頭、「準備に力を入れすぎてしまって、まだ75枚分のスライドがある」という話題で笑いを誘いながら、引き続き和やかな雰囲気で進行しました。

◆『KINGSGLAIVE』で取り入れたプリプロでの新たな試み



後編のはじめに、「プリプロ段階で行った新しい試み」と題して、今回の作品に対してのそれぞれのアプローチについて説明がありました。『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』では、プリプロに3DCGの概念を取り入れるため、衣装設計などを型紙から作成し生地面積に違和感が出ないような仕組みを取り入れた他、キャラクターの装着するバイザー(被り物)も3DCGで問題なく可動するような作り方をしています。

主人公ニックスはプリプロ用のCGが作成され、その後にCGに似たアクターをオーディションして3Dスキャン撮影を行っているそうです。また、近年では複数の企業が共同でひとつの作品を作り上げる事も多いため、イメージ共有のためのパイロットムービーの作り込みを意識しており、前編でも紹介のあった「Thunder Reference」「Glauca Liquid Armor Reference」などの魔法のデモ以外にも、2分程度のドラマシーンのムービーなどを作成したといいます。

これに対し瀬下氏も「BLAME!でも1分半程度のパイロットムービーの制作は行ったが、これが出来るとゴールが定まるので非常に効果的」と同調し、野末氏からも「ビジネス的にも、(提携企業などに)分かって貰いやすくなる」と補足がありました。また、同作ではパイロットムービーを社内だけでなく外注も入れて制作しているということで、その場合は外注先に対し「この先一緒に出来るかどうか」の見極めも併せて行っているそうです。

10分程度の全内容が分かるボックスカバー(プロットムービー)も作成し、楽曲の方向性や重要コンセプトアートの箇所の決定に役立てています。ボックスカバーは登場人物のバストアップが描画され、音楽と共に「誰が何をした」という情報が表示されていくというもので、これらは営業や経営プレゼンにも大いに役に立ったと説明されました。

◆プリプロの思想‐映画をCGという手法で形作るためにはストーリーが最重要


続いては瀬下氏より、プリプロダクションについての説明がありました。瀬下氏は映画を「映像という言語に翻訳された劇的な物語である」と定義し、この”映画”を”CG”という手法で作って行くためにはプリプロでの設計(デザイン)がとても重要と語りました。

また、”物語”という言葉になぞらえて、プリプロを大きく二つの軸に構成していました。ひとつは、何をどのように”語る(時間)”かを作るストーリーデベロップメント、もうひとつは、”語り”に必要な”物(空間)” を作るプロダクションデザインです。作品にとってストーリーが最重要としながら、「場面そのものに魅力が無いと、いくら切り取っても良い画面にならない」というコメントがあり、場面設計に非常に重点を置いて制作をしているとのことです。

さらに、瀬下氏はプロダクションデザインの際に「デザインツリー」と呼ばれる独自の手法を取り入れています。これは物語の世界における技術・歴史・文化・宗教などのバックグラウンドに基づいて、それらを物同士の遺伝的な系統化を行ってデザインするという考え方で、論理的に作品世界観の一貫性を構築しているとのことです。

その後、講演内ではプロダクトデザインのスケッチやCADによる場面設計例を数点提示し、それぞれについての説明も行われました。

◆脚本・構成・プロット作成のワークフロー



続く講演では、『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』における脚本についての説明がありました。本作は長谷川 隆氏が社外脚本家として起用されており、構成の段階からは更にハリウッドのスクリプトドクターが参加し、客観性のある意見を交えて制作が行われました。国外のスクリプトドクターが参入するのは珍しいケースですが、「ハリウッドのポジティブな”現場の空気を良くする能力”は本当に凄かった。」と野末氏は語ります。

なお、プロットはFINAL FANTASY独自の作法もあり、ゲームとリンクした個性の強い部分は結果的に野末氏自身が作業を行ったそうです。作品は4幕構成となっており、スケジュールの都合から、構成FIX後、幕ごとに脚本をFIXさせていきました。なお、初期構成はディレクター+社内ユニットディレクター、中期構成はディレクター+脚本家、最終構成はハリウッドシナリオドクター+ディレクター+脚本家という構成で作業を行っています。


『BLAME!』のストーリーデベロップメントに関する項目では、ストーリーの制作工程を”Logline”、”Synopsis”、”Plot”、”Script”、”Screenplay”の5つに大別し、それぞれについての説明が行われました。”Logline”は短い数行の分にまとめた物語の要約のことで、その後”Synopsis(物語の梗概)”つまりあらすじを作成、続いて物語の構成となる”Plot”を作成します。”Plot”ではターニングポイントやミッドポイントなどで何が起こるかを徹底的に書き出し、それらの点を線で繋ぐことで徐々にストーリーが組み上がって行きます。

その後はシドニアでも共作となったベテラン脚本家の村井さだゆき氏が”Script(脚本)”作成を行い、登場人物たちの行動と感情、展開の基本構成を作った上で”Screenplay(台本)”を作成します。『BLAME!』のワークフローで特徴的なのは、この”Screenplay(台本)”であり、それは脚本に詳細な「場面描写」を記述したものとのことです。この台本を基にプレスコを行うと瀬下氏は説明します。

プレスコの段階では絵は一切無く、この台本だけを使って音声収録を行います。そして「まずはラジオドラマとして面白いか?」を判断し、「この段階で面白ければ、絵をつければ絶対もっと面白くなる」と瀬下氏は語っています。

◆終わりに ‐CG屋はこの先なにを目指すのか?‐



講演終盤は、「ストーリー」「リバースエンジニアリング」などのひとことだけが書かれたスライドが数十枚用意され、それらを元に二人が対談をする形式となりました。瀬下氏は「僕たちはCGが大好きでCG屋をやっているが、今はもうCG屋が自らで発信しないといけない時代が来ている。CGのことを良く分かっている人が、自分からIPを作らないといけない。」と語り、そのためにはプリプロが最重要だと繰り返しました。

『KINGSGLAIVE』はゲームと連動した作りになっていますが、瀬下氏も『BLAME!』のセットやキャラクターでVRゲームやプロジェクションマッピングによるライブなどの展開ができたら嬉しい…と述べています。これに対し野末氏も「CGで作るからこそアセットが存在する、それを活かすというのはCG屋の発想だし、その流れは作って行きたい。」とコメントしました。対談中はAutodesk社への要望なども飛び出し、その度に会場からは笑いも起こるなど、終始賑やかな講演となりました。
《神山大輝》

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