日本ディープラーニング協会設立…AIジェネラリスト10万人を育成するというが | GameBusiness.jp

日本ディープラーニング協会設立…AIジェネラリスト10万人を育成するというが

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日本ディープラーニング協会設立
  • 日本ディープラーニング協会設立
  • 経済産業省商務情報政策局 前田泰宏大臣官房審議官
  • 東京大学大学院 松尾豊特任准教授
  • ディープラーニングによる非連続な革新
  • グローバルでプレゼンスが下がる日本企業
  • 事務局長 岡田隆太朗氏
  • 協会活動の5つの柱
  • 組織概要
日本ディープラーニング協会の設立発表会が4日、千葉市の幕張メッセで開催中のCEATEC 2017内で開催された。理事長は国内AI研究の権威のひとり東京大学大学院 松尾豊特任准教授。理事にはNVIDIA 井ざき(崎の大の部分が立)武士氏の名前もある。協会設立にあわせてトヨタが賛助会員として参画した。

AI活用は日本の成長戦略のひとつとして注目を集める分野だ。日本ディープラーニング協会(JDLA)設立発表会には、経済産業省商務情報政策局 前田泰宏大臣官房審議官が出席し、世耕弘成経済産業大臣のメッセージが読み上げられた。その中で「ディープラーニングの研究と活用は、日本の産業競争力に直結するもので、協会の発足と産業界のさらなる発展を祈念する」と大臣が語るように、JDLAに対する産学官の期待は高いものだ。

協会を代表して松尾理事長は、JDLA発足の背景と目的について次のように語る。

「大臣の言葉にあったように、協会の目的は、ディープラーニングの活用によって日本の産業競争力を高めることで、それに必要な人材育成、官民への提言、国際連携といった活動を担う」

松尾氏によれば、クイズ番組で高い正解率を出したワトソンやプロ棋士に勝ったAlpha GoによってAI・人工知能が注目されているが、60年にもおよぶAI研究の歴史の中では3度目のブームだという。しかし、今回の革新はディープラーニングという新しい技術によってもたらされており、一般的な科学技術の連続性のある進化とは一線を画す非連続な躍進だったとする。

松尾氏はこの進化を「生物でいえば、眼の誕生に匹敵する出来事であり、その後生物に起こったさまざまな進化が機械やロボットにも起きるもの」だと述べる。約5億年前、カンブリア爆発という生命の一大変革期があり、このとき現在の生物学の「門」に相当する種族のほとんどが生まれている。古生物学者 アンドリュー・パーカー氏は、その原因を「眼」の発生だと分析した。眼で光や対象をとらえることで、生物は外圧などの入力に反応するだけの存在から、モノを見て活動する存在に変わったという。ディープラーニングは機械に眼を与えたということになる。

「ディープラーニングのプレーヤーはベンチャーだけでなく製造業でも世界中に広がっているが、日本企業は遅れているといわざるを得ない。企業の時価総額ランキングでもトヨタが29位に入るのがやっとで、アリババやテンセントなど中国企業にも抜かれている」。こう指摘する松尾氏は、同時にこれはチャンスでもあるともいう。「日本のものづくりと若い世代の力をディープラーニングによって競争力強化につなげることができる」からだ。

ディープラーニングを産業に生かすには、企業側の問題もある。たとえば、人工知能の定義は難しく、専門家でも意見が分かれている。一般的な定義は「外界の状況に応じて賢く振る舞うもの」とあるので、考えようによってはサーモスタット(温度で作動する弁、スイッチ)でさえ人工知能といえる。過去に、このような「人工知能」がキャズムを超えられなかった。現在も、多くの企業が、機械学習(マシンラーニング)とディープラーニングの区別があいまいなまま「なんでもできる」「なにもできない」と誤解ばかりが広がっている。

協会が目指す人材育成や産業界への提言(啓発)は、これらを是正する意味もあるという。

具体的な取り組みについては、事務局長 岡田隆太朗氏が解説した。

岡田氏によれば協会の活動には5つの柱がある。「活用促進」「社会提言」「人材育成」「国際連携」「社会対話」だ。ディープラーニングについて、活用事例を発信、共有し、政府・産業界への提言、資格試験等による人材育成を行う。倫理・法を含んだ課題への国際連携や、各種情報発信を行うというものだ。

これらを実行するために、理事会の下には「産業活用促進委員会」「試験委員会」「プログラム認定委員会」「パブリックコミュニケーション委員会」そして「事務局」が設置される。

各委員会が、外部への発信や業界の情報共有、マッチング、シンポジウム開催、政府や国際機関との連携を行う。人材育成については、JDLA推薦図書の選定、認定事業者によるセミナーや教育プログラムの拡散、標準スキルの認定試験などの施策を考えているという。

認定試験では、「ジェネラリスト検定(G検定)」と「エンジニア資格(E資格)」を計画しており、シラバスを公開するとした。オンライン試験となり、ジェネラリスト検定はを年内(12月)に実施する予定だ。エンジニア資格についても来年4月を予定している。

協会では、2020年までにジェネラリスト合格者を10万人、エンジニア資格取得者を3万人を目標に、AI人材不足解消に貢献していきたいとした。

以上が、日本ディープラーニング協会設立発表会の概要だ。ただ、根本的な疑問も残る。AI、ディープラーニングによって日本の産業競争力を高めるには、関連の人材育成は不可欠だろう。しかし、その対策として、旧態依然とした資格認定制度というのは意味があるのだろうか。

協会の趣旨に異論はなく、むしろそのような団体の必要性は感じるが、学術研究も活発に行われており、進化・発展途上にある最先端分野において、選択式の問題解答スキルと知識がどれほど役に立つのか疑問というか、不安がある。試験合格者が増えれば、AI人材の解消になり、国際競争力がつくとは限らない。

エンジニア資格には実技試験も予定されているという。試験や資格が無意味とは思わないが、協会には、ただの資格認定団体にならないことを期待したい。
《中尾真二@レスポンス》

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