ユーザーに遊ばせる、サムスンのコーポレートサイトを分析(3)・・・「世界を面白くするGamification」第47回 | GameBusiness.jp

ユーザーに遊ばせる、サムスンのコーポレートサイトを分析(3)・・・「世界を面白くするGamification」第47回

3回目の投稿となりますizupyoです。 前回に引き続き業界初!自社サイトにゲーミフィケーション要素を導入した米国サムスンの事例Samsung Nationをご紹介します。

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3回目の投稿となりますizupyoです。 前回に引き続き業界初!自社サイトにゲーミフィケーション要素を導入した米国サムスンの事例Samsung Nationをご紹介します。



前々回の投稿「第1回 Samsung Nation体験レポート」ではSamsung Nationの概要について、前回の投稿「第2回 Samsung Nationをゲーミフィケーション・フレームワークに当てはめた考察(前編)」ではSamsung Nationをゲーミフィケーション・フレームワークの4つの項目に当てはめたレポートをさせていただきましたので、まだご覧になっていない方は是非ご覧ください。

【第3回 Samsung Nationをゲーミフィケーション・フレームワークに当てはめた考察(後編)】

前回に引き続き、Samsung Nationにどのようなゲーミフィケーション要素が組み込まれているのかゲーミフィケーション・フレームワークを用いて分析していきます。 今回はゲーミフィケーション・フレームワークの6つの項目の内、2つを見ていきたいと思います。(前回は全6つの項目の内、4つを考察しました。)

(今回の調査対象)
●プレイサイクル
●改善・運用

(前回の調査対象)
●目的と利用者
●可視化要素
●目標要素
●ソーシャルアクション

より詳細な各項目の説明や、フレームワークの概念図、各項目のつながりなどは弊社 深田の著書「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」にてご紹介させていただいておりますので、ご参照いただけると幸いです。

■プレイサイクル
前回の投稿で提供者(米国サムスン)の目的は、「サムスンサイトの訪問者をサムスン製品や会社自体のファン(以下、サムスンファン)に変えてしまう」と考えました。

その目的を達成するためにどのようなタイミングでユーザの行動に対してフィードバックを行えば良いのでしょうか?そのタイミングの設計をプレイサイクルと言います。 Samsung Nationのプレイサイクルの設計は以下のようになっています。

「商品を閲覧した」→「商品閲覧のBadgeを取得した」
※つまり「アクション」→「Mission達成」という流れになっています。

このサイクルを繰り返すことによりSamsung Nationでユーザ登録を行ったユーザがサムスンコーポレートサイト(以下、サムスンサイト)をより楽しんでもらうことにつなげています。 サムスンサイトは全体的に良くできていますが、課題はこのプレイサイクルにあると思います。

というのは、Samsung Nationではユーザ登録した直後の初心者に対してチュートリアルを設けていませんでした。チュートリアルがなくとも、コーポレートサイトという性質上、ユーザのサムスンサイトで行うアクションは商品閲覧、商品のシェア(tweet、like)、記事を見るなどのブラウジングであることが自明なので、それらのアクションに対してポイント、Badge、Trophyを授与し、プレイサイクルを間接的にユーザに知らせるという方法がとられています。


※例えば、Badgeを獲得した場合、上記のような案内が画面の最下部に現れます。

しかし、本当にこの方法がベストかと言うと疑問が残ります。なぜなら、ソーシャルゲームでは初心者に対して手厚くチュートリアルを施し、プレイサイクルを最初に強く意識してもらう場合が多く、ユーザもチュートリアルをフックにその後のゲームの継続がやりやすくなるからです。

Samsung Nationはチュートリアルが弱いために、ユーザがサムスンサイトに再訪してくれるかどうかは正直わからないという印象が残りました。(ユーザは最初1回の訪問は面白がってサムスンサイト内でいろいろとアクションをとってくれるかもしれません。現に私がそうでした。)

サムスンも、DMを送付する、月に1回新しいBadgeをリリースする、商品のプレゼントキャンペーンに応募するなどの施策を打ち、定期的にユーザにサムスンサイトを訪問してもらおうという工夫はなされていますが、もともとのサムスンファン以外のユーザが定期的にサイトを訪れてくれるフックはもっと用意した方がいいでしょう。

プレイサイクルをユーザに印象づける演出に工夫が必要な理由は、まだあります。 実は新しいBadgeが月1回でリリースされるという事実はちゃんと調べないとわかりません。ということは、調べない大半のユーザへの認知はされないということです。単に商品を見に来ただけというユーザに対して過剰にプレイサイクルを意識させる演出は不必要なので、その辺のバランスは必要ですが。

では、上手にプレイサイクルを提示しているサービスはないのか? ということを突き詰めたときに、最近面白いと思ったものを共有させていただきます。 手前味噌で恐縮なのですが、弊社から2011年11月にリリースした街づくりを楽しめるソーシャルゲームアプリ「MyTown(※1)」の遊び方なのです。

MyTownは、クエスト(Samsung NationでいうところのMission)が設定されていて、クエストをクリアするというのも一つのプレイサイクルです。MyTown自体が、「日常をgamifyする」をコンセプトに掲げているだけあって、ちょっとしたお出かけや、移動時間についつい遊んでしまうのです。

具体的に、この時は実店舗のローソン付近に行き、チェックイン(現在地を記録すること)して、実在の建て物デザインの建て物を建てるミッションや、所定の回数ローソンのお店でチェックインするとデジタルアイテムがもらえるので、意識してクリアしようとついつい遊んでしまいます。 ゲームを始めた当初はちょっとだけしか遊ぶつもりはなかったのですが、気がつけば結構長い時間遊んでLv32(これそこそこすごいんですよ!)まで到達してしまいました。

ここでのポイントは次に何をすればクエストをクリアできるよ!とMyTownが常に教えてくれていることです。このためMyTownをはじめてチェックインしたことがないような場所に行くとついついアプリを起動してしまう自分がいます。この「ついつい」やってしまう、仕掛けがSamsung Nationは工夫の余地があります。


※このときはLv28ですが、今はLv32です!

(※1) MyTown:アメリカで700万人のユーザがいる、位置連動型ソーシャルゲームアプリです。ユーザは位置情報が取得できる端末を使って自分がいる場所にチェックイン(現在地を記録すること)、チェックインした建て物を購入、自分の街に購入した建て物を建てることができます。(2011年12月27日現在、iPhoneのみ提供)建て物や土地にデコレーションも施せ、また提携企業では実在の建て物デザインやオリジナルデジタルアイテムがもらえるリアル連動も魅力です。

■改善・運用

ゲーミフィケーション要素を1度サイトに実装したら、それで目的を達成できるようになるでしょうか?現実的にそれだけで目的を達成することは難しいことがほとんどです。そこでゲーミフィケーション要素をサイトに実装した後、ユーザのサイト内での行動をモニターし改善点を見つけ、よりよい仕組みを実装していく必要があります。

Samsung Nationではポイント、Badge、Trophyをユーザに与えることにより、どのアクションがユーザによく実行され、どのアクションが実行されないのかということをモニターできるようになっています。その結果から今後どのアクションを促す仕組みを強化して、どのアクションを捨てるのかを選択できるようになります。
以下、Samsung Nationで改善した方が良いと感じた点を挙げます。

●ユーザに2回目以降、サムスンサイトに来訪してもらう工夫をする。
●どのようなアクションに対してMissionが課せられているのか、ナビゲーションを一見しただけではわかりやすくする。
●Facebookとの連携からユーザ登録をしたのですが、この場合Twitterとの連携が悪く商品のtweetをしてもMissionを達成するためのポイントにカウントされていないので(モチベーションの低下を招く)、カウントされるようにする。
●運用面では上記の改善点を効果的にユーザの声として吸い上げる仕組みを実装する。

【まとめ】

Samsung Nationではサムスンサイトの訪問者をサムスンファンになってもらうという目的の下、サムスンサイトにおけるユーザのアクションに対してポイント、Badge、Trophyの付与し、ユーザがサムスンサイトで楽しく行動できる演出していました。

私のような初心者ユーザでも上記の演出により、あっ!もっとサムスンのことを知ろう、面白い製品があれば友達に共有してみようと思わせてくれる仕組みが実装されていました。ただサムスンサイトを一度訪れた後、再訪するかといわれるともう少し工夫がほしいなと思うところでした。

【最後に】
Samsung Nationの事例を通して、もし自社サイトにゲーミフィケーション要素を追加しようとした場合、ユーザの目的を何に設定しようか?どのようなアクションに対してフィードバックしていこうか?継続的に利用してもらうためにどのような工夫をしようか?ユーザからのフィードバックをどのように取得しようか?などといろいろな考えが浮かんだかと思います。

本投稿を機にゲーミフィケーションをもっと学びたいな、自社サイト(サイトに限らずサービスにも)にゲーミフィケーション要素を導入しようかなと思うきっかけになれば幸いです。

3回にも渡る長い連載を最後までご愛読いただきどうもありがとうございました。

PS 本ブログではゲーミフィケーションの概念を日本の皆さんにもっと知ってもらいたいという想いから投稿を続けています。 本投稿もしくは本ブログの他の投稿でこれは面白い、もっと多くの人に読んでもらいたいと思うものがあればtweet(Twitter)やlike(Facebook)などでご友人にシェアしていただきたいと思います。ご賛同いただけるようであれば、ご協力の程どうぞよろしくお願い致します。
《深田浩嗣》

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