リアルな課題解決にゲームを・・・深田浩嗣「世界を面白くするGamification」第6回 | GameBusiness.jp

リアルな課題解決にゲームを・・・深田浩嗣「世界を面白くするGamification」第6回

次に登場したのは Jane Mcgonigal氏 である。個人的には初日のセッションではこれが一番面白かった。私自身も今回のカンファレンスで初めて知ったのだが、彼女は有名なゲームデザイナーで、GDC(Game Developers Conferance)なんかでもよくスピーカーとして登壇していた

その他 その他
次に登場したのはJane Mcgonigal氏である。個人的には初日のセッションではこれが一番面白かった。私自身も今回のカンファレンスで初めて知ったのだが、彼女は有名なゲームデザイナーで、GDC(Game Developers Conferance)なんかでもよくスピーカーとして登壇していたりもする。プレゼン、うまい。

もともと学術的な観点でゲームの研究をしていた人のようで、「Positive Psycology」という学術領域とゲームを結びつけるということがテーマ・・・らしい。すいません、未知の領域です。まああの、なんというかゲームが持つプラスの要素を現実の世界に当てはめていくことで、現実世界の問題解決が出来るというアプローチで以前からやってきているというそういうことであろう。今回の「gamification」という言葉出てくる以前から同じような観点でもってやってきたという人のようだ。

余談だが、シリコンバレーの特徴なのかこうした産業としても新しい領域にアカデミックな領域の人がかなり食い込んでいて、実際にかなりしっかりとした分析が行われているというのはとても羨ましい環境である。日本のアカデミックな領域の人も是非頑張ってもらいたい。

さて、彼女はこのプレゼンでは「gameful」という言葉を使っていた。いわく、

to have the spirit, and not just the mechanics, of a good game
よいゲームの構造だけではなく精神・考え方を持っていること


だという。gamificationの先にある概念だ、とも言う。これはゲームそのものという意味ではなくゲーム以外の領域に「よいゲーム」の要素を持ち込む場合の考え方を示したものであるとのことだ。

うーん、gamificationでさえ全体像を捉えるのに四苦八苦する感じがあるのにさらにその先ってどういうことやねん。と思いつつ聞いていく。Jane曰く、ゲームとは

games are unnecessary obstacles we volunteer to tackle
ゲームとは、自発的にチャレンジしようとする、無用な課題である


・・・なんか訳がしょぼいが許されたい。例で挙げていたのがゴルフである。ゴルフとは、遠くの穴にボールを入れるという競技だが、わざわざクラブというものを使わないといけない。なぜこんなことをしなければいけないのか、ということは冷静に考えると意味がわからないが、こうした「無用の課題」にチャレンジすることがゲームであり、それ自体に面白さがあるわけである。

Janeが強調していたのは「EUSTRESS」ということであった。positive stress、ということだとのことだが、つまりはゲームにはこのような楽しめるストレス・チャレンジというような、人をモチベートさせる要素があるという。言われてみれば確かにそうで、こういうよくわからないルールやゴールがありつつもそれを楽しむところにゲームの面白味がある。

こうしたゲームの要素を抽出していくと、次のようになるという。

・urgent optimism
・social fabric
・blissful productivity
・epic meaning
・super-enpowered hopeful individuals

またなんだか訳が難しくて困るのだが

・強力な楽観性(失敗しても何度もチャレンジするような要素のことか)
・ソーシャルな要素、他人と絡む要素
・やったことに対して結果がすぐに、かつ明確に分かること
・物語性、ストーリー性
・とても力があって前向きな主人公(に自分自身がなりきる)

というニュアンスだろうか。特に強調していたのは一番最後の「super-enpowered hopeful individuals」という点だった。ゲームをやるならこれがなきゃ!という感じだったのだが確かに自分が主人公になりきってどんどん進んでいくような感覚はゲームとしては重要そうだ。

・・・ちょっと長くなったのだが大体話していたことはこんな感じである。でこれでどうするんだということなのだが「これらを含めてデザインするのはかなり難しい」というコメントで、どないやねんという感じでもあるのだが、彼女は「リアルゲームデザイン」、つまり実際の課題を解決するためのこのような要素を織り込んでいるということで、gameful.orgを見てくれということを最後に述べていた。これ以外にも企業のコンサルタントとして課題解決にこれらの手法を使ったりという点では実績があるらしい。正直どんなふうにやっているのかちょっとイメージしづらいのだが追ってまた見てみたいと思う。

gamificationとはまた異なった切り口でゲーム要素の抽出と活用を提案している点、Webサービスへの適用というよりはもっと広範な課題解決への適用という観点などは新鮮で興味深かった。なお、このプレゼン当日に書籍を発刊したそうで、「Reality Is Broken」というタイトルである。

Reality Is Broken: Why Games Make Us Better and How They Can Change the World

興味のある方はどうぞ。

■著者紹介

深田浩嗣(ふかだこうじ)
株式会社ゆめみ(代表取締役 社長)。1976年京都生まれ。京都大学大学院情報学研究科在学中2000年1月に株式会社ゆめみを設立。高い技術力を駆使し、モバイルEC、メール配信、大規模CRMの開発やソーシャルゲームプロバイダなど「モバイルを戦略的に使うためのコンシェルジュ」として、モバイルインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける。ゲーミフィケーションの詳細はコチラ公式ブログほか、Twitterはコチラ。facebookはコチラです。
《深田浩嗣》

この記事の感想は?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら