デフォルメとリアルの両立を目指した『新サクラ大戦』キャラデザインだからこそ、瞳のアップが活きる【CEDEC 2020】 | GameBusiness.jp

デフォルメとリアルの両立を目指した『新サクラ大戦』キャラデザインだからこそ、瞳のアップが活きる【CEDEC 2020】

9月2日から4日までオンライン上で開催された「CEDEC 2020」では、アニメ・漫画的なデフォルメ感とリアリティのある質感・存在感を両立させることを目指した『新サクラ大戦』の制作手法と今後の課題が公開されました。

ゲーム開発 ビジュアル
デフォルメとリアルの両立を目指した『新サクラ大戦』キャラデザインだからこそ、瞳のアップが活きる【CEDEC 2020】
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2019年12月12日に発売されたPlayStation 4用ドラマチック3Dアクションアドベンチャー『新サクラ大戦』は、ナンバリングタイトルとしては『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』以来14年ぶりの新作。


メインキャラクターデザインを漫画家の久保帯人氏が務め、2D主体だったイベントイラストが、一部の演出を除いて3Dになったことが話題になりました。


9月2日から4日までオンライン上で開催された「CEDEC 2020」では、『新サクラ大戦』でキャラクターリーダーとして取りまとめを行ったデザイナー・柳瀬遼平氏が「デフォルメとリアルの両立を目指して ~新サクラ大戦のキャラクター作成事例~」のセッションを実施しました。


『新サクラ大戦』のキャラクター表現では、トゥーン的諧調表現とPBRのリアル質感表現の双方を混在させ、アニメ・漫画的なデフォルメ感とリアリティのある質感・存在感を両立させることを目標としていました。また、複数の作家によるキャラクターデザインが混在する同作で、全体の統一感を出しつつ、元デザインの個性を活かして調整するという点についても課題の一つでした。その制作手法とプロセス、さらにそこから判明した課題点から、同社が重きを置いているキャラクターの見せ方が明らかとなっています。

『新サクラ大戦』はなぜ2Dから3Dになったのか?


『新サクラ大戦』では、PlayStation 4世代にふさわしいリッチな表現が必要と判断し、リアル表現をデフォルメの中に可能な限り導入することを決定。ハイエンドゲームなどのリアルタイムCGの描画に使われるPBRと、手描きアニメーション風のトゥーン、2つの特徴を両立させることを目指しました。




イベントシーンでは、キャラクターの髪・着物袖など物理揺れ物表現、画面正面だけでなくカメラの方を見るような視線変化、瞳のハイライト移動、瞳のハイライトが潤んだアニメーション、髪の毛の天使の輪の移動表現など、クオリティーの指針を定めています。

元となるキャラクターデザインでも、優しいふんわりした感じに凛とした強さを加えた現在の形に変遷が見られる


衣装はどうやってモーションを作った?


キャラクターモデルは、ポリゴン数が4万~6.5万、実機は30fps、体型はS・M・Lの3種類、可動を演出するために骨子を繋いで組み合わせました(ヒロインのさくらであれば、350本ほど)。全キャラクター共通の汎用アニメーションを適応するため基本骨子構造はレギュレーションモデルを使用し、各キャラクターの身長差はS・M・Lの体型に合わせてゲーム実機上でかけて表現しています。




衣装を作成する上でも基本骨子構造と体型に基づき、ロングヘア、着物袖、萌え袖、袴、ミニスカート、ロングコートなどのボリューム感を決めました。これによって、揺れた際の破綻を抑制できます。



衣装の皺はZBで直接描いたほうが良いとし、フィギュアを参考にリアルにしすぎないように大きな単位でデフォルメしました。ZBからの法線マップ、SubstancePainterで生地などの質感を作成、これらをPhotoshopで合成し、ゲーム実機上でさらに調整しています。


揺れもののシステムはBulletを使用し、各ボーンに対して角度制限、質量、質量減衰率、反発係数、速度減衰、角度減衰などのパラメーターを設置しました。各骨のパラメーターを調整して、通常の歩き、衣服や髪の干渉、走りなどの動作を一つずつチェックしました。




髪の毛や瞳など顔の情報量を多くしたリアルへの寄せ方



肌はスムーズな陰影や柔らかなシェーディングを表現するため、複数のテクスチャを組み合わせる形に。




頬のハイライトでは、艶を表現するために顔のフォールオフのみ、他の部分とは逆に、中心から端へかけて光らせました。顔周りは法線マップを直接編集し、鼻周辺の影や全体の方向性を調整しています。ただし、肌に関しては法線マップを使っていません。理由は法線マップを使うほど凸凹しておらず、トゥーンの名残を残すように手作業です。


髪の毛は天使の輪を表現するための専用のテクスチャを作成。天使の輪がベースカラーに加算され、カメラ角度によっての移動幅をパラメーターで指定しています。


また、前髪が目にかかるキャラクターは、前髪を別のバッファに描画して後から合成することで、透過して見えるようにしました。


瞳の表現では、白目は内側にえぐれる凹形状になっており、黒目は凹レンズの瞳に半透明の凸レンズを重ねました。カメラの角度によって凹(瞳)と凸(半透明レンズ)がズレるように動くことで、瞳の奥行きが出る上、どの角度でもハイライトが綺麗に見えるようになります。


また、アニメ的表現では瞳の虹彩は省略されたデザインになることが多いですが、アップを長時間見られても耐えうる密度を持たすために詳細に描いています。キャラクターの感情が盛り上がった時の表現に適しています。


キャラクターの肌を綺麗に見せる陰影


キャラクターの肌補正をすることで、顔にかかる陰影を消すなど、綺麗な状態で見せることができます。髪の影や頬の輪郭に沿う影など、影を残すところと残さないところをバランス良く調整しています。



キャラクターがいる空間には、ライティング情報を記録した「ライトフィールド」を設置しており、バウンスした色情報を含んでいるので周囲の環境色がキャラクターに反映します。




また、キャラクターのライティングはメインライトに加えて、キャラ専用のバックライトを3灯追加で焚くことで、ライト方向が逆光になった時に極端に暗くならないようにフォローしています。



異なるキャラクターデザインを統一するための共有点


『新サクラ大戦』では、複数の担当者が別々にキャラクターデザインをしたため、キャラクターの頭身や個性が現れやすい瞳や表情などを統一するバランス調整が欠かせませんでした。



特に同じ画面内に異なる等身のキャラがいると頭が大きい方が着ぐるみを着ているかのような見えてしまうため、全員を並べて頭の大きさと身長を調整した結果、元々頭が大きいデザインはスリムになりました。


瞳においては明暗の関係性だけは内側が暗くなるように全体で統一。


表情は共通のボーンアニメーションで作成し、原画の喜怒哀楽を忠実に再現。また、カスタムできるようにして、喜怒哀楽を強調することもできます。また、口を大きく開く描写が必要であれば個別にパーツを作って足すといった形を取っています。


特殊な表情も複数パターンを用意し、頬染めはイベント用ツールで透明度をコントロールし、たまり涙や悔し涙は顔がアップになるので、虹彩を足すことで情報量を増やしました。




瞳のアップが多い『新サクラ大戦』に合わせたアニメ表現の死守すべきライン


アニメ表現が写実表現と異なる点は、パーツの描き方、線の省略、線が消える、線の太さの誇張など挙げられますが、要は誇張と省略です。『新サクラ大戦』では瞳がアップになるシーンが多かったため、省略することを選ばずに虹彩を描き込んで情報量を増やしました。


キャラクターデザインにおいても、全体的にデフォルメされていますが顔以外はリアルに寄せています。これについては、キャラクターの顔さえ守れば衣服や環境をリアルめに描いても問題ないと判断したためです。


一方で今後の課題として多く挙げられたのは、目の表現力や髪の毛の表現力など、バストアップに耐えられる顔のディティールアップ。キャラクターの魅力を伝える上で、バストアップ描写に重きを置いているのかがうかがえました。

《乃木 章》

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