「ゲームを遊ぶ側から作る側に意識を変える」―専門学校・大学・企業はどうクリエイターに育てるのか?その議論の模様 | GameBusiness.jp

「ゲームを遊ぶ側から作る側に意識を変える」―専門学校・大学・企業はどうクリエイターに育てるのか?その議論の模様

ビデオゲームの価値が高まるなか、いかにして学生たちをゲーム業界で活躍できる人材に育成すればよいのでしょうか?専門学校、大学、そして企業それぞれの立場から、議論が行われました。

人材育成 教育
「ゲームを遊ぶ側から作る側に意識を変える」―専門学校・大学・企業はどうクリエイターに育てるのか?その議論の模様
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3月26日、Future Tech Hubにて「ゲームクリエイター育成会議 オフラインミーティング Vol.1」が開催されました。

初開催となった今回のイベントは、「遊びと学びの研究者に聞く、ゲームデザイナーの育て方」をテーマに、元ナムコ、コーエーのクリエイターである遊びと学び研究所代表の岸本好弘氏と、大学や専門学校の教師などがディスカッションするミーティングです。

ビデオゲームの価値が高まるなか、いかにして学生たちをゲーム業界で活躍できるように育成するかも問題になっています。近年はゲーム専門学校だけではなく、大学でもビデオゲームを教える学校も増えており、ゲーム教育の重要さは増すばかりです。


ゲームクリエイター育成会議」はこの問題を掘り下げる書籍としてスタートしました。専門学校の非常勤講師も務める、ゲームジャーナリストの小野憲史氏と、株式会社聖地会議の柿崎俊道氏が制作し、ゲーム教育の現場にいる方にインタビューをしながら現状や課題をまとめています。

しかし書籍で伝えられる内容には限りがあります。そこでゲーム教育の関係者たちが実際に会って議論をしたり、交流を深めたりできる機会を設けるために、今回のオフラインミーティングが開かれました。小野氏が司会を務め、ゲームを教育する問題について語り合います。

「楽しく学べるほうがいい」―岸本好弘氏の教育方針



「ずっと面白いことが好きで、楽しいことを優先させてきました。」始めに岸本氏が、ゲームクリエイターからいかにしてゲーム教育に携わるようになったかを振り返るセッションが行われました。

岸本氏は学生のころ、「コミュ障で、不真面目な学生でした」と話します。大学生のころに『スペース・インベーダー』と『ギャラクシアン』に出会い、ナムコへ就職。『パックランド』、『プロ野球ファミリースタジアム』をヒットさせますが、決して優秀な学生ではなかったといいます。なんと「考古学部で、楽な授業しか選ばなかった」そうです。


その後コーエーに勤め、51歳で退社後に選んだキャリアは、なんとニュージーランドへ半年間の英語留学でした。岸本氏は「若者たちと一緒に暮らして、本当に楽しかったですね。」と語り、「日本に帰ってからも若者と一緒にわいわいしたいですね。それができるのはゲームだなと。」と考えます。そこで帰国後のキャリアに、ゲーム教育を選びました。


2012年、岸本氏は東京工科大学のメディア学部に着任します。「自分が先生になったとき、学生に授業を楽しみだと思われるようにしようと考えたんです」と自らのスタンスを語りました。

岸本氏は「ニュージーランドで学生をしていたことで、学生側の視点を持てた強みがあります。」と説明。「学生をやってわかったことは、授業を選べないということです。ニュージーランドでは授業は楽しくやってくれて、楽しく英語を学ぶことができました。」と語ります。楽しく授業を受けられる先生もいれば、図書室で自習したほうがいいような授業をする先生もいたそうで、やはり楽しいほうがやる気になるし、学びやすいことを挙げていました。

また岸本氏は「自分は挫折する生徒の気持ちはわかる」と言います。「大学の先生のほとんどは、学生のころから優秀なんです。挫折の経験がない。だから学生が、なぜできないかが、わからないんです。」と現状を説明します。コミュニケーションも上手くなく、優秀でもなかったという学生時代の経験から、挫折を覚えた学生と寄り添えることも、自分の良いところだと語りました。

どんな人材を育成したいか?実践して育てていく



東京工科大学で開発されたカリキュラムに担当教員として参加した岸本氏は「人々をやる気にさせるのがゲームデザイナーの仕事」だと定義。「この仕事に必要な力は、企画・プロデュース・プレゼンテーション。この3つの力を学生につけさせたいんです。」と方針を語ります。さらにゲーム教育は一部分だと話し、「社会教育などすべてを面白くする」ことを目指しています。「世の中を面白くしたいんです。面白くて、やる気になるものがいい。」

「大学1年生ではデジタルには触らせません。まずはゲームの仕組みから学んでもらう」方針で、最初は他人と一緒に遊ぶアナログゲームから学ばせるのだそうです。

「早めに自分が、ゲームを作る人に向いているかどうか見極めてもらいます。合わなければ、他の学部に行けます」ゲーム学部には100人ほどの入学生がいるのですが、2年目には50人、3年目にもなれば、わずか25人にまで絞られるとのことです。


学生にはアウトプットの機会をたくさん作ることを大事にしていると言います。たとえば東京ゲームショウまでにゲームを制作したり、ゲームジャムに参加させたりしています。いくつものプロジェクトに関わることで、実践から学んでいくそうです。

また学外活動も充実しており、企業や団体に学生が出向いてプレゼンテーションも行います。「企業が企画を見て、興味を持った学生を呼ぶ形」で進められているそうで、後期演習では、さらに学生の自主性を尊重したカリキュラムが組まれています。


「自分よりも今のゲームを知っている、学生に任せたほうがいい」と、ペラに書いた企画書のチェックシートを、教員が決めるのではなく、学生たち自身で話し合わせて作らせているとのこと。岸本氏は「先生は場を作ってあげることが大事。教えることじゃないです。」とこの方針の意義を説明します。

「次世代のゲームを生み出せる人を育て上げることが、育成のゴール」であり、「次にどんなゲームが流行っているかを予測して、商品として発売できるような人材を育てたい」と語る岸本氏。学生が一ユーザーからクリエイターになるにあたり、「自分がゲームのどこを面白いと思っているかを、考えられる人になってほしいですね。」とまとめました。社会に出たときに、スムーズに活躍できるように、実践的な教育を行っていることがわかります。

次のページ:ゲーム教育のディスカッション
《葛西 祝》

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