【e-Sportsの裏側】ゲームが上手いことに価値がある世の中を。ポノスキーマンインタビュー | GameBusiness.jp

【e-Sportsの裏側】ゲームが上手いことに価値がある世の中を。ポノスキーマンインタビュー

e-Sportsに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのe-Sportsシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【e-Sportsの裏側】。

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e-Sportsに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのe-Sportsシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【e-Sportsの裏側】。

■e-Sportsとは?
e-Sports(Eスポーツ)とはElectronic sportsの略で、コンピュータゲームやビデオゲームで行われる競技のことです。高額な賞金のかけられた世界的な規模で行われるプロフェッショナルな大会から、アマチュアまで競技が行われており、ジャンルやゲーム毎にプロチームやプロリーグが多数あります。現在e-Sportsの対象となっているゲームを遊ぶ人の数は、全世界で5500万人を超えています。(ゲーム大辞典参照)

第19回目となる今回は、京都に本社を置きスマートフォン向けゲームアプリを自社で企画・開発するポノスの板垣 護氏にインタビューを実施。『にゃんこ戦争』のヒットから、配信中のワンチャンある系リアルガチ対戦バトルゲーム『ファイトクラブ』の話を交えつつ、日本e-Sports市場についての想いを語ってもらいました。



―――宜しくお願いします。ポノスといえば『にゃんこ大戦争』のイメージが非常に強いです


板垣:そう思います(笑)。次の投資をどうしていくかという話があった時に、構想していた『ファイトクラブ』の話が役員にあがり、やりましょうという話になったのかなと思います。

――『ファイトクラブ』はもともとスマートフォンでいくと考えていたんでしょうか

板垣:はい、スマートフォンでいくと決めていました。e-Sportsが盛り上がっていく条件として、ゲームのプレイヤー人口が多いかどうかは大事だと考えていて、今までのPlayStationやPCゲームだと、どうしても人口の上振れというところがスマートフォンに比べると少ないかなと思っていて、スマートフォンゲームでゲームをする時代になると、誰もが電車の中などでゲームをする環境になります。そうなるとe-Sports化しやすい時代が絶対来るだろうなというところで、プレイ人口という面からスマートフォンゲームでのe-Sportsというのがカギになるんじゃないかなと。その時はそこまでe-Sportsを意識していたスマートフォンのゲームがまだ無かった時代で、賭けるんだったらそこが良いんじゃないかなと思っていました。2014年~2015年ぐらいの頃の話です。

――何人ぐらいのチームで制作したのでしょうか

板垣:最初の企画の構想だけでいうと僕1人で、プロトタイプを作る時点ではエンジニア2人とデザイナー2人と僕で。プロトタイプを作って、これはいけそうだ、面白いってなってから徐々に人を増やして、今は結構いる状態ですね。

――格闘ゲームっぽいUIだなと思うんですが、最初の構想段階から今のゲームジャンルは固まっていたのでしょうか

板垣:格闘ゲームと言っていいかどうかはわからないのですが、いわゆる格闘ゲームの駆け引きの部分をスマートフォン向けに落とし込んだイメージではいます。例えば、昔ファミコンで『アーバンチャンピオン』というゲームがあり、左右にマンホールがあって、駆け引きをしながら相手をマンホールに落とすというシステムだったんですが、それが発展していって『ストリートファイター』とかそっちの方向に振っていった。そこの駆け引きの部分をスマートフォン側に落とし込んでいったのが『ファイトクラブ』です。格闘ゲームではあるんですが、方向性が若干違うといえば違いますね。操作性ではなく駆け引きに特化した形で構想を練りました。

――板垣さん自身は何かのゲームタイトルをやりこんだというのはあるのでしょうか

板垣:最近だと『スプラトゥーン』はやり込みましたね。大会とかにも出ましたし。昔だとそうですね…。格闘ゲームでいうと『ストリートファイター ZERO II』とかそのあたりはすごくやりましたし、『ギルティギア』もやり込みました。上手くはないんですが『スプラトゥーン』は自信があります。

――改めてお聞きしますが『ファイトクラブ』はどういったゲームなのでしょうか

板垣:見て楽しいゲームという言い方をしているんですが、やって楽しいだけでなく、観戦してるだけでも楽しいっていう感じですね。

――リリースして3ヶ月ですが、反響であったりユーザー層を教えていただけますか


板垣:ユーザー層で言うとe-Sportsがどうこうというのを考えている人がプレイしているわけではないですね。格闘ゲーム好きの人も遊んでくれているみたいですが、このゲームで初めてe-Sportsに触れたみたいな人がコア層には多いです。年齢的には20代前半とかがコア層になっています。

――オンラインのマッチングが肝になる気がします

板垣:リリース直後は勝つ人がいれば負ける人もいるわけで、負け続けて怒ってやめちゃう人もいましたが、今はマッチングを同レベル帯の人が当たるように修正して、落ち着いてきているかなと。怒って離脱した人たちは相当怒っていると思うので、その人達が戻ってきてくれるのかという話はありますが。

――ランクなどでマッチングができていなかった?

板垣:強い人と中間ぐらいの人が当たることにより、すごく強い人に負けて怒るみたいな。初心者は初心者同士が当たっていました。最初はチューニングがそこまで進んでいなくて、とりあえず人と絶対当たるようにしていましたが、マッチングに関しては終わることはないかなと思っていて、改善は常に行っています。

――スマホゲームだと課金の話になりがちですが

板垣:ゲーム内の通貨を買うという形にはなっていますが、ゴリゴリのガチャモデルにはしていないです。ゲーム内で大会があるのですが、それをやっていればとりあえず課金しなくても遊べますし、大会に出れない人が、大会に出る代わりに課金してちょっと装備を整えたりといった感じです。あとはゲーム外のマネタイズとかも考えていくようなところ。パラメーター課金みたいなことはしたくないです。

――ゲーム内通貨を課金で購入可能とのことですが、どういったものを購入できるのでしょう

板垣:時短アイテムまでとは行かないですが、ゲーム内で入手したアイテムを開封する時に使うとか、大会に出場すればもらえるはずだったものが直で購入できたりとかですね。

――逆に言うと課金しなくても大会で勝てばアイテムがゲットできるということですね

板垣:大会で勝ち続ける人は、おそらく課金しなくても遊べるんじゃないかと思います。課金してもいいんですけど(笑)。大会が他のゲームで言うイベントみたいなもので、そこに参加して入手できるのがゲーム内通貨と装備。課金でも入手できますが、大会上位者はゲーム内通貨も大会の中でもらえるので、装備も手に入り課金しなくても買うことができる環境になっています。

――ゲーム外でのマネタイズという部分が気になったのですが、どういったものを想定しているのでしょうか

板垣:構想の話でいうとアバターを実際の衣服メーカーとコラボして、実際に作ってみるというのはあります。アバター系のものと現実世界を紐づけて、現実世界でも何かを売っているみたいなものを最終的にやりたいと思っています。ゲーム内のものと紐付いたものを実際に作って、それが欲しくなって買う、というような感じですね。

あとはゲームエンジンの話。ゲームエンジンを他の会社さんに使ってもらうことによって、そこでエンジン代を頂くというのも考えています。

――OEMとしてゲームエンジンを外に提供していく形ですか?


板垣:そのまま使えるようにするか、もしくは新たに作るというのも考えていますね。他社さんのIPを使って僕らが新規タイトルを作って、『ファイトクラブ』のユーザーとそのIPのユーザーとその他のゲームのユーザーが裏側で共通化できるので、どんどんゲームのシステムで遊んでいる人が横に増えていくということでどうですか、という。表面的には別のゲームなんですが、ゲームのシステムや裏の会員基盤は一緒という形です。例えばファイトクラブネットワークみたいな形で大会を開いて、色々なIP同士が戦うというのもあると思います。

――壮大です

板垣:それができるとどんどん人が増えていくので、マッチングもどんどんされていくような世界が作れると思っているので、そっちを目指してはいますね。今の直近の課金はゲーム内課金しかないです。

――プラットフォームを作る、みたいなイメージだと思うんですが、どれぐらいまでにやりたいなというところだったり、実際やりますって言っている会社さんはありますか

板垣:まだこれからって感じですが、そこのプラットフォーム化していく話よりも海外展開を先にしたいとも思っています。ゲームのモデル的には日本よりも海外の方が受け入れやすいモデルだと思っているので。

――海外展開について、地域は?

板垣:まずはアメリカ。ローカライズの面でもアメリカはやりやすいですし。その後は韓国とかはすぐ出したいなと思っています。韓国であればラグもそんなにない状態でできることがわかっているので。

――EVO JAPANに出展していましたが、反響はどうでしたか。

板垣:評判は良かったです。EVOに行きたいと思っているゲーマーからすると、すごく欲しかった話だと思いますし、その人達がベータテストをやってくれたので、良いデータ取れました。優勝したのは若い方だったんですが『ポッ拳』のピカチュウを使ったら日本一の人が優勝したんですよ。その方は格闘ゲームがそもそも好きで、こうしたらもっと面白くなるといったアドバイスももらえましたし、配信にも出てもらえたので『ポッ拳』を遊んでいる人には『ファイトクラブ』は向いているんじゃないかというみたいな感じで、遊んでくれたりとかもありましたね。

――『ポッ拳』ユーザーが『ファイトクラブ』ユーザーになりうるというのは想定したのでしょうか

板垣:全く想定していなかったですね。今となっては駆け引きという面では通ずるところがあるのかもしれないと思っています。

――ポノスさんとしてe-Sportsに対してやっていることを教えてください

板垣:切り分けが難しいんですが、e-Sports向けのスマートフォンゲームの開発・運営を行っていることと、プロゲーマー社員を雇って広報活動をしています。広報活動自体はゲームや会社の広報としてですね。

――『ファイトクラブ』以外にはe-Sportsを意識したタイトルは制作しているのでしょうか

板垣:リリース時期までは決まっていないですが、今開発中です。

――プロゲーマー社員は何人いるのでしょうか?

板垣:現在7人ですね。格闘ゲームが2人、『クラッシュロワイヤル』が4人、ゲーム実況が1人で合わせて7人です。

――ゲーマーを社員にしようと思った理由はあるのでしょうか

板垣:ゲームが上手いことに価値がある世の中になっていないので、それを価値がある世の中にしていこうというのがそもそもあって、その人達をまずは支援していこうと。支援するにあたって、自分たちが作っているゲームの親和性だったり、セカンドキャリアとして、ゲーム開発に興味があるかとかも含めて、社会人としてちゃんとやっていけるのであれば社員として雇いつつ支援をできるだろうと。彼らが活躍することで会社にもメリットがありますし。

――毎日出勤しているのでしょうか


板垣:毎日定時出社・定時上がりというわけではないですが、ゲーセンに行って練習する日もありますね。深夜に練習会があるので明日は午前休みますっていうのもありますし、海外大会に出場するのも出張扱いです。既存のルールに則りつつ、社員として普通にいるので、ゲームをやる広報社員みたいな感じの立ち位置で入っています。

――反響はどうでしょう

板垣:他のプロゲーマーの方たちからも良い取り組みだね、と評価をしていただいています。ウメハラさんやふ~どさんといった既に活躍されている方たちからは、一緒に盛り上げていきましょうという感じで言ってもらえています。e-Sportsに関わっていなかった会社さんからも、話を聞きたいと来られることが増えましたね。ポノススポーツという名前の知名度が上がってきたような気はします。

――今後もプロゲーマー社員を増やしていく?

板垣:気持ちとしてはあるんですが、それだけでマネタイズできるような状態であればどんどんやっていくんですけど、ゲームの売上と紐付いてしまうので、そことセットで考えています。

――ポノススポーツに所属するために必要な要素とは何でしょうか

板垣:今作っているゲームとの親和性というところはもちろん、人によってたぶん違うとは思うんですが、「クリーンさ」みたいなものは結構大事にしています。純粋な気持ちで、ゲームで食っていける世の中があるんだったら食っていきたいです、っていう人で、セカンドキャリアのことも一緒に考えられる人であれば、っていうところですね。

――年齢制限はあったりするのでしょうか

板垣:得にはないですね。

――卒業した人のキャリアがどうなっていくかはポイントになりそうです

板垣:ガリレオ君はまだプレイヤーとしてやりたいと思っているので、引退の話も全然していないですが、一番セカンドキャリアのことを考えているのはガリレオ君かなと思いますね。なので積極的にゲーム開発の仕事を手伝ったりもしていますね。『ファイトクラブ』も広報的な露出は彼がかなりやってくれています。攻略動画を撮ったりとか、ゲームバランスを作ったりだとかも練習の邪魔にはならない程度にやってもらっています。あとはセカンドキャリアがゲーム開発だけではないので、その取り組みを通して、彼ら自身の知名度が上がっていって、実際他の会社から出演依頼や仕事が入ってくることとかもあって、そこでお金が発生するので、それが増えればそれで食っていけますし。

――板垣さんが考えるe-Sportsとは


板垣:難しいんですよね…。ゲームが上手いことに価値がある世の中になった状態というのが大事だと思っていて、上手い人がいるからその人を見て楽しむという文化があって、そこまでがセットでe-Sportsかなとは思っています。今までのゲームって、1人でプレイしてクリアして終わり、となってしまうことがお多かったのですがが、上手い人同士が戦って毎回ドラマが生まれて、それを見るために観戦する人が増える、ゲームをやる人も増える、みたいなものが起きているのがe-Sportsだと思います。

――日本のe-Sportsマーケットをどう見ていますか

板垣:大きくはなっていくと思います。そこにどういう人達がどう絡んでいくかというのは未知数だと思っていて、海外を模倣して成功する感じでもないので、日本ならではのやり方でちょっとずつ広がっていくというのが起きるだろうとは思っています。

ただ、絶対に変わらないことがあって、プレイヤーが増えることとそれを応援する人が増えないとe-Sportsはそもそも成り立たないので、それをどういった手段でやるかですね。RAGEとかかなり目立っていると思うんですが、あの辺はマネタイズもセットでちゃんと考えていますよね。

――『ファイトクラブ』は、地方大会などを積極的に行っていく予定でしょうか

板垣:積極的にやっていく予定です。オンラインで大会ができるので、基本的にオンラインベースで大会はやっていて、地方巡業みたいなものもしていく予定はあります。先日、大阪でイベントをやったんですが、コアなファンに向けて最新情報を先に教えたりとか、ローカルでしかできない変わった対戦会をしようとか思っています。

――日本のe-Sportsマーケットに欠けているものは?


板垣:足りてるものはないと思いますが、根付いている日本の文化みたいなものもあって「ゲームはやっぱり所詮ゲーム」という根強い思いが日本にはあると考えていて、それをどうやって拭えるのかみたいな話はありますね。拭うための手段はいっぱいありますが、それが足りてないのかなと。地上波でプロゲーマーっていう人がいてね、みたいな話がちょっとずつ出てきていますが、それでも「プロゲーマーなんて所詮」みたいなところで毎回止まってしまっている。そのハードルをどうやって越えていくかだと思います。

――ゲームに対する偏見という話ですよね

板垣:そうですね。

――ときどさんなんかはゲームをひたすら練習して、フィジカルも鍛えるためにジムに通っているそうです。プロゲーマーはアスリートなんじゃないかと

板垣:サッカーや野球の練習と全然変わらないと思っています。ゲームに対する印象があまり良くない人が多いから偏見が生まれるのであって、それを突破できるのがスマートフォンのゲームなんじゃないかと思っています。みんなスマートフォンのゲームをやっているからこそ、ゲームに対する偏見がちょっとずつ減っていくんじゃないかと。見たことあるゲームであればなおさら。そろそろこの1、2年で来るんじゃないかと思っています。

――『PUBG Mobile』をプレイしていてボイスチャットを使うのですが、感じたのは若い人はコミュニケーションツールとして使っているんだろうなと思いました。ゲームも楽しいけど、知らない人と話すのも楽しいという声も多くて。「SHOWROOM」みたいなガヤガヤできるような要素は実装予定でしょうか

板垣:そういった機能は実装をする準備をしています。ベット機能も準備していて、上手くないからトップランカーにはなれないけど、プレイするのも楽しいし上手い人の試合を見るのも楽しい、そこで予想が当たればバックがあるという感じですね。賭けに寄るのではなく、スポーツベッティングに寄った形で実装を考えています。

――最後に読者にメッセージをお願いします

板垣:僕たちはゲームが上手いことに価値がある世の中を作りたいと思っています。プレイする側はもちろん、「見て楽しむ」という文化も作りたいと思っているので、『ファイトクラブ』なりプロゲーマー達の応援をよろしくお願いします。

―――ありがとうございました




「ゲームへの偏見」という部分について、国内ではまだまだ払拭しきれていないのが現状ですが、果敢に挑もうと姿勢を見せるポノス。『ファイトクラブ』をはじめとしたタイトルはもちろん、プロゲーマーやゲーマーのセカンドキャリア含め、新たな価値創造を創出できるのか。彼らのこれからの動きに期待です。
《森元行@Game*Spark》

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