韓国のモバイルゲーム市場の今昔、そして今後の展望は?―ネクソンコリア・モバイル事業総括が語るについて語る | GameBusiness.jp

韓国のモバイルゲーム市場の今昔、そして今後の展望は?―ネクソンコリア・モバイル事業総括が語るについて語る

2018年における韓国モバイルゲーム市場の総括と今後の展望について語られた講演をレポートします。講演には、ネクソンコリアでモバイル事業を担当しているソ・ヨンソク氏が登壇しました。

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2018年4月26日~28日まで、Nexon Developers Conference(NDC)が開催されました。本イベントは韓国最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス。今年で12回目の開催を迎え、来場者は約2万人以上、公演数は100以上も行われています。今回は、2018年における韓国モバイルゲーム市場の総括と今後の展望について語られた講演をレポートします。講演には、ネクソンコリアでモバイル事業を担当しているソ・ヨンソク氏が登壇しました。ヨンソク氏は2007年からネクソンモバイルに所属し、現在はネクソンコリアのモバイル事業の事業総括を担当しています。

韓国のモバイルゲーム市場は1990年代半ばにモノクロのゲームからスタートしました。ゲーム市場のスタートから間もなくカラー電話が急速に普及し、無料のゲーム市場も有料へとスピーディに変化。2000年代初めにFree to Playのモデルが登場したことをキッカケに、市場はさらに拡大していきました。これは今のスマートフォンゲーム市場に似ており、韓国のフィーチャーフォン市場も最初はワンボタンやミニゲームといったカジュアルなゲームからスタートしましたが、戦略RPGやスポーツ、アクションなどコアな方向に軸足を移していきました。特にアクションRPGはこの移行期の間に市場の中で最大の売上を上げていました。

しかし、フィーチャーフォン時代に成功していたアクションRPGは、スマートフォンに移行しても失敗してしまいます。失敗の原因は、世界的にクオリティの高い『Angry Birds』などのカジュアルゲームが安価で多くリリースされてたためです。2009年からはiPhoneを普及しましたが、韓国のモバイルゲーム各社はここから2年ほどあまり売上を立てられませんでした。それを反転させたのは、Google PlayやAppStoreのゲームのカテゴリーが韓国に定着したり、カカオトークでサービスしている『Any Pang』や『みんなでチャチャチャ』などのカジュアルゲームが普及したことです。スマートフォンゲーム市場の成長は目まぐるしく早いもので、フィーチャーフォンが15年に渡って地道に成長を遂げてきましたが、スマートフォンゲーム市場は1年単位の急スピードで成長しました。『Any Pang』は1日の売上が1億ウォン(約1000万円)、『みんなでチャチャチャ』は1日10億ウォン(1億円)という規模にまで至りました。

カジュアルジャンルで市場を広げた後で展開した人気ジャンルも、フィーチャーフォン時代と似通った性質を見せました。カジュアルからスポーツ、戦略RPGと人気は変化していきましたが、スマートフォンでもこのプロセスを踏みました。戦略RPGの後に出てきたアクションRPGも売上のコアになりましたが、この変化のスピードはフィーチャーフォン時代とは異なりました。フィーチャーフォン時代でビッグヒットを遂げ、3年間サービスした全ゲームの売上を足すと300億ウォン(約30億円)という規模でしたが、アクションRPGが人気を博したことで、スマートフォンでは1ヶ月でこの数値に達しています。ユーザーのボリュームは市場も大きくなり、アクションRPG『BLADE』は1年で1000億ウォン(約100億円)、Netmarbleの『RAVEN』は3ヶ月で同額の売上となりました。


ここで重要な点は、アクションRPGが複数リリースされたことでお互いにユーザーを奪い合っているのではなく、ユーザー数が拡大していることに意味があると考えているとのこと。ネクソンではアクションRPG『HIT』の後、このジャンルのボリュームは大きくならないと予想していましたが、『リネージュM』や『リネージュ2 レボリューション』などアップグレードされたゲームがリリースされました。このようにスマートフォンゲーム市場でMMORPGがメインジャンルとなったのは、フィーチャーフォンとは異なる進化でした。2016年までは収集型のアクションRPGがヒットし、『セブンナイツ』や『真・三國無双』などがありましたが、2017年以降は成長が低くなり、MMORPGがヒットするようになりました。

次に、今後の韓国モバイルゲーム市場のトレンドや流れについての予想が語られました。大きな変動要因がない限り、韓国のモバイルゲーム市場はMMORPGと収集型RPGが売上を牽引していくと思われます。この2つのジャンルにもそれぞれ特徴があると予想されます。MMORPGはPCからモバイルへの流れが急速に進められると思われ、代表的な例としては『リネージュM』や『リネージュ2 レボリューション』、最近韓国でローンチして良い成績を上げている『黒い砂漠』があります。収集型RPGの場合は、サブカルチャーという新しいトレンドが追加されていくでしょう。サブカルチャーを収集型RPGに融合したことで成功したのが『少女前線』や『崩壊3rd』で、今もたくさんの開発会社がパブリッシャーに色々な収集型RPGを提案されています。そのようなゲームを見ると、原作IPを強化してブランディングしたり、オリジナルはIP化しようという動きを見せています。

フィーチャーフォン時代と比べて異なるのがインディゲームです。以前はGoogle PlayやAppStoreといったオープンマーケットがなかったため、小規模の開発者はなかなか成立できませんでした。しかし、韓国でオープンマーケットが加速したことで、中学生が作った会社も出てくるなど多様性が豊富になっています。売上はメジャータイトルに比べると小さいものですが、たくさんの開発者が加わったことによる競争力や効率性は負けないと思います。続いて質疑応答が行われました。


――日本ではサービス開始から1年程度で継続判断が行われますが、韓国ではどのタイミングで判断されますか?

ヨンソク氏::我々も6ヶ月から1年後というライフサイクルを持って設計はしますが、サービス開始から1日目、3日目、7日目、15日目、30日目というデータに基づいてこのゲームが長寿するのかという判断をします。ボリュームが大きいゲームかインディゲームかよって戦略の違いがありますが、大きなゲームは3ヶ月まで推移を見ますね。

――韓国モバイルゲーム市場におけるe-Sportの今後について教えてください。

ヨンソク氏::コンソールやPCオンラインのゲームでe-Sportsが活発になっていますが、モバイルタイトルのe-Sportはあまり活性化されていません。しかし、引き続き我々はモバイルゲームのe-Sport化にトライしていきたいと考えています。それは、オープンマーケットにより様々な人がデベロッパーとして登録しやすくなり、プロゲーマーだけでなく一般のユーザーもアプローチしやすくなると思っているからです。弊社のモバイルタイトルもイベント制で大会を開催してきましたが、ネクソンアリーナという専用のスポーツ競技場を持っているので、チャレンジはこれからも続いていきます。個人的な意見としては、ユーザーとしても楽しんでいる『PUBG』のモバイル版が韓国に出資されれば、韓国でモバイルゲームのe-Sportが活性化されるかの判断指標になると思っているので楽しみにしています。

――日本はコンソールタイトルのリメイクがたくさん出ていますが、韓国の状況はいかがですか?

ヨンソク氏::日本はコンソールで優秀なタイトルを持っていますが、韓国でのコンソールタイトルのモバイル化は多くないのが実情です。韓国はPCやオンラインゲームをがんばって開発してきたので、それらのタイトルをモバイル化する動きが加速しています。他社の事例としては『リネージュM』や『リネージュ2 レボリューション』、『黒い砂漠』などが挙げられます。自社のタイトルでは、『メイプルストリー』や『アラド戦記』、『カートライダー』や『テイルズウィーバー』などがPCオンラインIPをモバイル化している事例です。

――日本のゲーム市場に韓国の開発者が進出していくと思いますか?

ヨンソク氏::これはネクソンだけでなく、韓国のパブリッシャーは海外進出を積極的に展開しようとしています。ネクソンではローカライズなどの努力を経てリリースされた『HIT』の日本サービスを通じて、ユーザーのプレイスタイルや好みの差を感じ、成果もあげられました。日本の市場は世界のトップ3に入るモバイルゲーム市場なので、韓国の開発会社は日本への進出を積極的に試みると思われます。

――韓国で現在人気のジャンルやトレンドはありますか?

ヨンソク氏::韓国ではMMORPGやMOBA、FPSが人気のジャンルです。MMORPGは今後3年間の韓国ゲーム市場のメインジャンルになると確信を持っています。サブカルチャーを融合させてた収集型RPGがも、これから2年間は韓国で脚光を浴びるジャンルになります。しかし、MOBAやFPSといったジャンルのゲームが多くリリースされるかについては疑問があります。自社のFPS『スペシャルソルジャー』はジャンルとしてはいい成果をあげていますが、その他のタイトルでは目に見える堅調な結果は出せていません。MOBAに至っては失敗事例がたくさん出ています。『PUBG』のモバイル版をFPSの延長線上として見るならば、FPSはMOBAよりは可能性が高いと思います。

――日本で開発されたタイトルの中で、韓国で人気のタイトルはありますか?

ヨンソク氏::『乖離性ミリオンアーサー』のようなCCGジャンルのゲームは、日本のゲームやこのジャンルが韓国に定着することに大きく貢献したタイトルです。2017年、2018年のモバイルゲーム市場で成功しているのは、バンダイナムコエンターテイメントの有名なアニメーションIPを使ったタイトルがあります。文化の違いがあるため、ヒットするにはローカライズが大きく作用しており、日本でビッグヒットをした『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』は韓国では成功を収めませんでした。『Fate/Grand Order』もそこそこのヒットにとどまってしまったと理解しています。しかし、このようにクオリティの高いゲームが韓国市場に定着できないということはなく、世界観が魅力的だったり、独特なゲームシステムを持っていれば韓国でも人気が出ると思います。個人的には『SINoALICE ーシノアリスー』は韓国でもヒットできると考えているので、いいパブリッシャーを見つけて韓国でローカライズをされれば、もっと色々なジャンルのゲームが愛されるでしょう。

――韓国のインディゲームの状況について教えてください。

ヨンソク氏::韓国でもインディゲームのディベロッパーはお互いアイディアを交換し合ったり、外注を出し合うなど交流が盛んだと思います。Google Playが主幹となったインディゲーム開発者のフェスティバルも開発していますし、賞がある大会なども開催されています。インディゲーム協会も作られ、韓国でも定着するようにたくさんの方々が努力されています。

――ルートボックスやガチャなどが話題になっていますが、韓国では問題になっているのでしょうか?

ヨンソク氏::韓国でも問題がなかったとは言えません。韓国のゲーム会社もルートボックスの問題を根本的に解決しようとしています。最初の段階として日本のようにユーザーに確率を表記しており、ネクソンでは小数点以下の確率まで公開することで問題の解決を試みています。また、確定型イベントやグッズも提供し、確率問題で喪失感を味わっているユーザーに対する対策を一部施行しています。売上の100%をガチャに依存することよりも、他に楽しいことをたくさん提供することでゲームに集中してプレイできるシステムを工夫している所ですね。

――韓国のモバイルゲームユーザーの特徴はどのようなものでしょうか?

ヨンソク氏::私が感じているのは、日本よりも韓国の方が年齢の幅が広いという点です。小学生が自分のゲームプレイをYouTubeにアップしていますし、50代、60代の方がギルドマスターをやっているなどユーザー層は広いですね。韓国では日常生活を送りながらゲームを楽しでおり、例えばオート機能が多く導入されています。

――韓国の女性ゲームユーザーはどのようなゲームで遊ばれていますか?

ヨンソク氏::韓国の女性もMMORPGをプレイされている方が多いですね。中国などの他の国では女性向けゲームが存在していますが、韓国では男女一緒に楽しむゲームか男性コアユーザー中心のゲームに分けられます。『フレンチポップコーン』といったカジュアルタイトルは他のゲームに比べて女性のユーザーが多く、『みんなでチャチャチャ』は韓国では誰もがプレイしているボードゲームです。また、中国のゲームで女性向けゲームをリリースして成果をあげていることに注目しており、『ミラクルニキ』は服の着せ替えをするRPGで女性ユーザーが多くプレイしています。

――『Durango』は、男女か男性コア向けかどちらをターゲットとされていますか?

ヨンソク氏::『Durango』は独特なゲームで、サービス開始初月の推移を見てみると、残存するユーザーは女性の割合が少しずつ高くなる傾向を示しました。男性ユーザーの離脱が、女性ユーザーよりも急速だった結果です。

――ありがとうございました。

取材協力:Nexon
《編集部》

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