今年度のブースはリアルタイムグローバルイルミネーション向けミドルウェア『Enlighten』のデモを中心に、おなじみのポストエフェクトミドルウェア『YEBIS』、そして最先端の機械学習エンジン『YOKOZUNA data』という3つの展示で構成されていました。


UnrealEngine (UE)4やUnityにも統合され、全世界で高い評価を受けているEnlighten。本製品はもともと英ARM子会社のGeomerics社が開発とサポートを行っていましたが、2017年5月にシリコンスタジオによって権利が取得されました。同社テクノロジー事業本部の冨岡ジョンソン裕子さんによると、現在は東京で新しい開発チームが立ち上がり、開発とサポートが継続されているとのことです。
ブースではUE4ベースで開発されたインディゲーム『RiME』のニンテンドースイッチ版と、モバイルFPS『モダンコンバット Versus』のデモ展示が行われていました。Enlightenのように世界的に有名なミドルウェアが日本で開発され、サポートが受けられることは、日本のゲーム開発シーンにおいても大きな影響を与えそうです。またYEBISをはじめとした既存ミドルウェアとの統合や関係性強化なども期待できるでしょう。
「最近は自動運転技術の盛り上がりを受けて、自動車業界からの問い合わせが増えていますね」と語る冨岡さん。機械学習用の画像素材として、YEBISをはじめとした同社のCG向けミドルウェアをフル活用し、さまざまなシチュエーションのCGを作成するニーズが高まっているのだとか。ゲーム発のミドルウェアが業界外でも確かな貢献をしている点に改めて驚かされます。

また、同社の新たな事業分野として期待されているのがAIです。同社では2017年6月に個々のユーザー行動を予測する機械学習エンジン、YOKOZUNA dataの販売を開始しました。最先端のディープラーニング技術を用いて、ソーシャルゲームにおけるプレイヤー一人ひとりの離脱予測をはじめとした、高度なゲーム分析を提供するソリューション。会場でもサンプルデータを用いてデモが行われ、来場者の関心を惹いていました。

もともと同社の社内ベンチャー的な新規事業としてスタートしたYOKOZUNA data。今では世界中から最先端の研究者が集まり、部署内の共用語も英語になっているのだとか。そんな開発チームを率いるのが、チーフサイエンティストのアフリカ・ペリアニェス博士。「ゲームのデータは人間の振る舞いを学習するのに最適」と、業界外から転籍してきました。このように多彩な分野に展開する同社の技術。東京から世界に向けて、今後どのような発信が行われていくのか注目です。