【Autodesk University Japan 2017】「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(前編)」で語られたプリプロの重要性とCGのこれから | GameBusiness.jp

【Autodesk University Japan 2017】「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(前編)」で語られたプリプロの重要性とCGのこれから

スクウェア・エニックス 野末 武志氏とポリゴン・ピクチュアズ 瀬下 寛之監督は、Autodesk University Japan 2017で「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(前編)」と題し、互いのワークフローや思想の共通点について講演を行いました。

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スクウェア・エニックス 野末 武志氏とポリゴン・ピクチュアズ 瀬下 寛之監督は、Autodesk University Japan 2017で「フォトリアルとセルルック、3DCG表現の現在と未来(前編)」と題し、互いのワークフローや思想の共通点について講演を行いました。

野末氏は1999年スクウェア入社後FINAL FANYASYシリーズやKingdom Heartsシリーズを担当し、近年では 『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』のディレクターも勤めています。瀬下氏はセルルックのアニメーションを得意とするアニメーション監督で、『BLAME!』や『GOZZILA 怪獣惑星』などを手掛けています。両名は普段から良く情報交換をされているとのことで、講演もお二人の親しい関係性を思わせる和やかな雰囲気で進行して行きました。前編ではワークフローにおける各工程にフォーカスを当て、それぞれの違いや共通点についての説明が行われました。

◆レイアウト以外は共通項の多いワークフロー



ワークフローの中で最も大きな違いはレイアウトで、ポリゴン・ピクチュアズの場合はプロダクションのアニメーショングループがレイアウトをやっているとのことです。3DCGであってもキャラクターの配置や構図は、2Dアニメーションで言うところの作画の工程に相当するという意識がポリゴン・ピクチュアズの仕組みの源流にあったらしい…と瀬下氏は語ります。レイアウト部分の差異の他は基本的には同様ですが、ファイナルルックではかなりの差が出ています。講演内では最終的な制作物の違いとして『FINAL FANTASY XV』の重要人物「レギス国王」と『BLAME!』のヒロイン「づる」の絵の比較が行われましたが、画像を出すまでもなく大きな違いがあり、会場からは笑い声も上がっていました。

◆ライティング・コンポジット‐『BLAME!』自社開発のシェーダーについて



続いてはライティング及びコンポジットについて説明されました。『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』では、シミュレーションベース+映画的なオーソドックスな演出ライティングを行っており、プリプロ段階としてリグの入っていない簡易モデルを用いてテストライティングを行なっていく手法が取られています。簡易モデルとは言うものの、実際にはかなり精密なテストモデル(リグは入っていない状態)が用いられており、このことについて野末氏は「コスト負荷よりも、後の工程での修正の少なさを重点に置いている」と説明します。

これに対し、瀬下氏は「最終的にはアメコミやグラフィック・ノベルのようなルックを動かしたい」というコンセプトに基づき、3DCGの利点を活かせるよう多彩なライティングを実現する自社開発のシェーダーについての説明を行いました。マルチライトやそれによるグラデーションそのものを調整できる仕組みで、フィジカルなライティングでありながら絵としての魅力を最大限活かせるよう技術的な検証も時間を掛けて行なっているそうです。「豊かな空間を作りたいし、手描きの絵としての魅力も入れたい」となると、結果的に作業量も増えていき、20以上のプロジェクションマップ用カメラを使用しているカットもあるとの説明もありました。

◆VFXー雷魔法、巨大なビーム…非現実なモノの演出


次にVFXについての説明がありました。『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』では、現実には存在しない「魔法」の表現に苦労したとのことです。現実に存在するものはオーソドックスなVFXで事足りますが、曖昧な概念の「魔法」についてはイメージの共有が難しいと野末氏は語ります。実に50社にも及ぶ協力会社とイメージを統一するため、「Thunder Reference」「Glauca Liquid Armor Referene」など、社内で精密なデモムービーを作っておき、コミュニケーションに活用したとのことです。一方『BLAME!』ではフォトリアル感とのバランスを重視してVFXを活用したそうですが、「フォトリアルなVFXは手描き風の絵になじませるのが大変だと思っていたが、実験してみたら案外合った」そうです。また、主人公が巨大なビームを撃つシーンなどは派手に火花が上がるような演出となっていました。「とにかく火花を見せたくて、場面を構成しました(笑)」とのこと。

また、アニメーションにおいては、『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』時代から長年を費やして開発したフェイシャルシステムやパフォーマンスキャプチャ(モーションキャプチャを用いて顔の表情を作成する仕組み)によるリアルな演技を採用していることに対し、『BLAME!』ではシミュレーションをほとんど使わずに、アニメーションディレクターがアクションから髪の毛の表現に到るまでほぼ手付けで行なっているとのことです。ただ、KINGSGLAVEもアクションについては「アニメーターのプライドと意地」という説明もあり、いずれの場合もアニメーターの作業領域が大きい印象を受けました。

◆フォトリアル、セルルック問わず共通となるプリプロの思想


その後のモデリングに関する説明では、両者ともに「これまでの作品の集大成」という言葉を用いています。野末氏のプロジェクトでは元キャラクターモデルスーパーバイザーがアートディレクターに職種変更し、CGパートは中堅どころが責任を持って遂行したと説明がありました。キャラクターは3Dスキャンベースで、髪型や服飾品などは実際に現物を作って検証を行なっていたとのことです。また、この項目で瀬下氏が強調したのは「キャラクターの目」の作り込みについてです。キャラクター全体としては、3DCGの豊かなライティングを活用できる事を前提条件に、必要十分なデフォルメをしています。中でも、特に目においては眼球の屈折や虹彩のディテールなど、クローズアップで感情を「語れる」ようにしているとのことです。


これまで、それぞれプリプロ段階で心掛けるべき点の比較が行われてきましたが、講演の最中お互いの作業を確認しながら、瀬下氏、野末氏共に「そこは同じですね!」「やっぱりそう考えるよね!」と繰り返すなど、最終的なルックは違っても制作における意識は近い部分があることが分かりました。前編では、早期にファイナルルックを想定すること、イメージの共有を重要視することなど、「プリプロの思想はリアル、セルルックの違いは無く共通」と結論付けました。
《神山大輝》

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