LINEのAIアシスタント「Clova」搭載スマートスピーカー、“WAVE”を使ってみた | GameBusiness.jp

LINEのAIアシスタント「Clova」搭載スマートスピーカー、“WAVE”を使ってみた

LINEが独自に開発するAIアシスタント「Clova(クローバ)」を乗せたスマートスピーカー「WAVE」を10月5日に正式発売した。筆者もさっそく手に入れて、わが家でWAVEによるエンターテインメントを体験してみた。

ゲーム開発 人工知能(AI)
LINEのAIアシスタント・Clovaを搭載するスマートスピーカー「WAVE」を自宅で使ってみた
  • LINEのAIアシスタント・Clovaを搭載するスマートスピーカー「WAVE」を自宅で使ってみた
  • 音声コマンド入力のスタンバイ状態になると天面のLEDが緑に点灯する。ウェイクワードの入力や音楽再生などタッチセンサー式のボタン操作で代用できる。
  • 背面に電源プラグの差し込み口と主電源ボタン、マイクミュートを搭載
  • バッテリー内蔵なので電源プラグを抜いて家の中の色んな場所で使える
  • 「LINE Clova」アプリで設定やステータス確認が行える
  • 音声入力の操作方法もアプリで紹介
  • ネットワーク設定はアプリの説明に従って簡単にできた
  • テレビの操作もWAVEからできる
 LINEが独自に開発するAIアシスタント「Clova(クローバ)」を乗せたスマートスピーカー「WAVE」を10月5日に正式発売した。筆者もさっそく手に入れて、わが家でWAVEによるエンターテインメントを体験してみた。

■日本語対応のAIアシスタント「Clova」

 ClovaはLINEのコミュニケーションアプリ「LINE」や音楽配信「LINE MUSIC」との高い親和性を特徴とする、独自開発のAI(人工知能)アシスタントだ。韓国の検索ポータルであるNAVER社の開発技術やコンテンツサービスのノウハウも取り込みながら、同じく10月6日から国内で発売されたグーグルのスマートスピーカー「Google Home」が搭載するGoogle Assistantの良きライバルとして注目されている。特に日本語による音声コマンドへの対応力で差が付くAIなのか、注目したいところだ。

背面に電源プラグの差し込み口と主電源ボタン、マイクミュートを搭載

 なおWAVEの販売はClova公式サイトのほか、アマゾン、楽天などオンライン中心で展開されている。価格は14,000円(税込)。Google Homeの15,120円(税込)より少し安い。ビックカメラ、ヤマダ電機やauショップなどリアル店舗でも売られているGoogle Homeと、ここがひとつの違いになるかもしれない。LINEでは今後、家電量販店などリアルショップへの展開も順次すすめていくとしている。

■セットアップは簡単。音声コマンドの認識精度は?

 WAVEをホームネットワークにつなぐためのセットアップ操作はとても簡単だった。iOS/Android対応の「LINE Clova」アプリをスマホにいれて、WAVEに電源を入れておくとアプリがスピーカーを自動的に認識する。あとはアプリの指示に従ってネットワーク設定を行うだけ。設定にはLINEアカウントが必要になる。

「LINE Clova」アプリで設定やステータス確認が行える

ネットワーク設定はアプリの説明に従って簡単にできた

 LINE MUSICを使うかどうかは任意だが、WAVEの本分はスピーカーなのでどうせなら音楽サービスは一緒に使いたい。スピーカー単体でストリーミングが受けられるサービスは今のところLINE MUSICのほかにない。通常は月額960円(税込)のLINE MUSICを12ヵ月間無料で楽しめて、スピーカーとのセット価格が12,800円(税込)となる正式発売キャンペーンがとてもお得なので、購入を考えている方はキャンペーンが続く2018年1月31日までに決めよう。

 セットアップが終わったので、基本的な機能を順番に使ってみよう。まずは今日の天気を聞いてみた。天気予報はスピーカーに登録した現在位置情報を元に教えてくれる。スタンバイ状態からスピーカーを起動するための“ウェイクワード”は「クローバー」。筆者は自宅のリビングにWAVEを設置して、3mぐらい離れたところから音声コマンド入力を試してみたが、ウェイクワードはハッキリめに発音してあげないと認識されないこともあった。「OK Google」のウェイクワードで起動するGoogle Homeの方が音声コマンドの認識精度・スピードともにやや優秀だと思う。

音声入力のスタンバイ状態になると天面のLEDが緑に点灯する。ウェイクワードの入力や音楽再生などはタッチセンサー式のボタン操作で代用できる

 ただしWAVEの方が優秀なところもある。毎度ウェイクワードを発話しなくても音声コマンドの連続入力ができるのだ。例えばこんな具合だ。「筆者:今日の献立は何がいいと思いますか」>「WAVE:あなたが食べたいものでいいと思いますよ」>「筆者:スパゲティを昨日食べたんですけど」>「WAVE:美味しいですよね」>「筆者:今日は何がいいですかね」>「WAVE:そうですね、まだ決めていないですね」>「筆者:一緒に考えて下さい」>「WAVE:私にはご質問の内容を正しく理解できませんでした(沈黙…)」。

 WAVEが発話した後に、スピーカーの底面に緑色のランプが再度点灯すれば質問を続けて入力できる。向こうがあきらめてしまうまで会話のラリーを楽しめた。なおGoogle Homeのように家族のメンバーそれぞれの声紋を記憶することは今のところWAVEにはできないが、話者認識の機能については近く実装が予定されているそうだ。WAVEの合成音声による発話は日本語として耳馴染みが良くてスムーズに感じられた。

■LINE MUSICによる音楽再生

 LINE MUSICで音楽を聞いてみた。本体には2.5インチのウーファーを1基、1インチのトゥイーターを2基搭載している。つまり、受け持つ音域の違うスピーカーユニットを搭載しているので、それぞれの帯域の音がよりクリアに聞こえるように工夫されているというわけだ。

 音楽を再生してみると、ワイヤレススピーカーとしての音質はまずまずといったところ。低域の量感がやや物足りなく感じるが、ボーカルやメロディ楽器の音域はクリアで力強さも伝わってくる。フルレンジスピーカー1基構成のGoogle Homeスピーカーに比べると音質は勝っていると言える。

 LINE MUSICのアーティスト・楽曲・プレイリストなどからの音声コマンドによる再生は、ざっくりとしたフレーズのコマンドでもある程度柔軟に対応してくれる手応えがある。例えば「クローバー、松田聖子を再生して」とアーティスト名で伝えてもよし。「ジャズを再生して」「雨の日にあう曲を再生して」「人気の曲を再生して」とお願いすると、それらしいタイトルを見つけて鳴らしてくれた。

 特定のアーティスト名に曲名をつなげてコマンドを発声する場合は、フレーズ全体の長さや語彙の複雑さが結果に影響してくる。たとえば「岡村靖幸のだいすきを再生して」といった感じに、短くてシンプルなフレーズに収まれば比較的正しく認識してくれたが、「ダリル・ホール&ジョン・オーツのI Can't Go For That」は何回チャレンジしても上手くいかなかった。洋楽系は途中で舌を噛まないように気をつけながら発声する必要があることも踏まえると、なかなか音声操作が便利だとは言い切れない。LINE MUSICのアプリに移動して、画面から好きな曲を探して再生したくなってくるが、あいにくWi-Fi経由でキャストすることはできないようだ。

 WAVEにスマホをつなぐ際にはBluetoothがメインになるようだ。スマホやPCに保存した曲なども再生可能になる。音声コマンドで、またはアプリからWAVEをペアリングモードに切り替えてからスマホとワイヤレス接続ができる。ただし、この場合はスマホでアプリを終了すると再生も止まってしまうし、ストリーミングの負荷がかかるぶんスマホのバッテリーも早く減る。WAVEでインターネットラジオをだらだらと聴きたい場合は今のところスマホやPCにつながなければならないが、近くradiko.jpのストリーミングをWAVEで直接受けられるようにもなるそうなので期待したい。

■テレビを音声操作でオンにする

テレビの操作もWAVEからできる

 ほかにもWAVEはテレビを声で起動できるリモコンにもなる。「LINE Clova」アプリから「音声リモコン」のメニューを開いて、並んでいるテレビ連携を選択するとメーカー名がリストに並ぶ。わが家で使っているのはソニーのテレビだったので、メーカーを選択してWAVEをテレビの近くに置いて設定を済ませると、WAVEに「クローバー、テレビをつけて」と話しかければ電源がオンになった。テレビのリモコン操作は赤外線通信で行うので機器連携の幅が広く取れる。

テレビリモコンの赤外線信号を読み込ませる

 電源オン・オフのほかにも音量の上下、チャンネル変更などシンプルな操作が可能だ。将来は番組録画など少し複雑な操作まで音声でできるようになるとうれしいが、その場合は赤外線通信以外での対応も必要になってくるだろう。なおLINEでは今後、テレビのほかに照明器具やエアコンも赤外線リモコン機能で動かせるように開発を進めているそうだ。

【動画】WAVEでテレビの電源をオンにする


 LINEアプリの周辺機能については、残念ながら筆者がふだんあまり積極的にLINEを使っていないので詳しい検証を行わなかったが、「LINE Clova」アプリから家族アカウントを作成して音声入力によるトークのやり取りが楽しめるようになるらしい。LINEオーディオによる無料通話機能については今のところ実装されていないが、今後Clovaが進化していく方向性のひとつとしては模索しているという。

■何気ない会話にClovaらしさは現れるのか

 WAVEとの雑談力をGoogle Homeと比較してみたところ、WAVEの方が会話の節々に日本的な“こころづかい”が感じられた。例えばそれぞれのスピーカーに「悩みごとがあるんだよ」と打ち明けてみると、「辛いことがあったのであれば、私にグチを言ってください/大丈夫でしょうか?私でよろしければいつでもお話を聞きますよ」といった具合に、WAVEはいくつかの気の利いたパターンを返してくる。一方のGoogle Homeに同じ質問をぶつけると、正しく答えを返してきた場合は「私で答えられることであれば、ぜひお力になりたいと思っています。」というフレーズだ。ちょっと距離感がある。比べてしまうとWAVEの方が日本的なコミュニケーションの勘所を心得ていると言えないだろうか。

 互いに相手の印象を聞いてみた。WAVEに「グーグルのことは好き?」とたずねてみると、「はい、とても尊敬していますよ」というリスペクトを込めた回答が返ってきた。かたやGoogle Homeは「すみません、お役に立てそうもありません。」という返事を繰り返すばかり。知っていてはぐらかしているのか、あるいは…。

【動画】WAVEと何気ない会話を楽しんでみる


■バッテリー内蔵でポータビリティが高い

 ほかにもWAVEの魅力は本体に5,000mAhのバッテリーを内蔵しているところだ。連続音楽再生可能時間という単位でスペックは示されていないが、おそらく1~2時間はプラグから外して使っても問題はなさそうだ。ホームネットワークのつながる場所であれば、WAVEを1台持っていればリビングだけでなく、キッチンやプライベートルーム、ベランダなどに移動させながら使える。わが家で一番「声による操作」がフィットするロケーションを見つけるのにもポータビリティが確保されていることは大きくプラスに働くだろう。

バッテリー内蔵なので電源プラグを抜いて家の中の色んな場所で使える

 反対にもし家に2台以上のWAVEを揃えても、今はまだグループ化をして管理ができない。Clovaのプラットフォームに合流できているスマート家電やIoTデバイスがまだないため、現時点ではそれほど気にならないことかもしれない。だがもし、今後連携できる家電機器が増えてきたら、例えば親子がそれぞれの部屋にWAVEを置いて、朝起きた時にリビングのエアコンや照明をどちらの部屋からでもオンにできれば便利に感じられることもあるだろう。このへんはGoogle Homeが得意とするところなので、WAVEにもぜひキャッチアップしてもらいたい。

■既存のLINE関連サービスがClovaにつながってくれば大逆転の可能性も

 年内にはアマゾンのAIアシスタント「Alexa」を搭載するスマートデバイスも国内に上陸すると言われている。アマゾンやグーグルは海外ではひと足先にスマートスピーカーと、これに対応するサービス、連携できる機器を広げてきたので、ずいぶんと先行しているイメージもあったが、実際にGoogle Homeを使ってみると、できることはまだ限られていると感じざるを得ない。そうなると、日本国内で圧倒的に普及するコミュニケーションプラットフォームであるLINEをベースにしながら、今後スマートサービスを開拓できるClovaやWAVEが有利なポジションに立てるシナリオも十分に考えられるだろう。人々が便利に感じられるキラーサービスやコンテンツを既に多くの生活シーンで実現しているアドバンテージをLINEがどのように活かせるのか、これからが要注目だと思う。

「辛いときは私に愚痴を言ってください」……LINEのスマートスピーカー“WAVE”を自宅で使ってみた

《山本 敦》

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