【ありブラ vol.19】ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合う(その2) | GameBusiness.jp

【ありブラ vol.19】ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合う(その2)

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【ありブラ vol.19】ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合う(その2)
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先日、ベルサール秋葉原で行われた「OcuFes 2015夏」に行ってきました。Oculusを活用したさまざまなVR体験ができるイベント。VRというジャンルには実にさまざまなアプローチがあるんだなぁ、と感心してしまいました。


▲Oculusを活用したVRコンテンツの展示会、OcuFes(オキュフェス)


振動デバイスやエアコンプレッサーと連動させて臨場感を高めたり、LEAPモーションを使ってジェスチャーで操作やインタラクションができるようにしたりと、「合わせ技」の展示コンテンツが目立ちました。けっこう「手作り感」があふれる展示物が多いのも(笑)、VRの盛り上がりが法人/個人や規模の大小を問わず、確実に進んでいることの証なのかも、と思ったりもしました。

なかには、開場10分で一日分の体験枠が埋まってしまった展示もあったようで、その高い熱量を体感できただけでも、参加した甲斐がありました。ちなみに、当社ミドルウェア技術を活用したコンテンツを出展されている事例もありましたので、今後の「ありブラ」のなかでぜひ詳しくご紹介したいと思っております。

個人的には、Unityエバンジェリストの伊藤周さんが展示されていた、ドローンの操縦をVRで行うことができるシミュレータがとても楽しかったです。最初は操縦者視点で、いわゆる「ラジコン」のようにドローンを操作するチュートリアルが始まるのですが、その後、なんと、ドローン視点で操縦ができてしまうのです。ボクはまだドローンを買ったことがないのですが(確実に操縦を誤って破壊してしまいそうなので…汗)、このシミュレータなら何回でもドローンを壊し放題(笑)。実際のドローン操縦も「ドローン視点」でやれたらいいのに・・・、と思ったら、同じ会場には、ドローンにカメラを搭載して無線伝送し、VRで観ながら操縦できるソリューションの展示もありました。

いや~、未来感ハンパないっす。

昔、YES’89(横浜博覧会)というイベントで、ラジコンカーにCCDカメラを搭載し、その映像を表示しながらアーケードレースゲームの筐体でレースができるという展示があったことを思い出しました。当時はまだ中学生でしたが、5時間も並んでこのアトラクションを遊んだことを記憶しています。それが今や、空を自由に飛び回れるようになった(しかも360度全天球のVR!)ということで、隔世の感があります。

ちなみに、ニュースリリースでもお伝えしているとおり、パシフィコ横浜で本日(8月28日)まで開催中の「CEDEC 2015」の当社ブースでも、Sofdecを活用した「4K全天球VRムービー」を参考展示しています。この記事がUPされるのはお昼頃なので、まだ間に合うかもしれません!こちらの技術も後日、「ありブラ」でご紹介する予定ですが、待ちきれない方はぜひ、CEDECのCRIブースまでお越しください。

さて今週は、前回に引き続き、ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合い、いかにその「壁」を乗り越えるかについてご紹介します。

それでは「ありがとう、ブラックボックス」略して「ありブラ」、今週もスタートです!ぜひリラックスしてお楽しみ頂ければと思います。

前回のおさらい



前回は、ツールやミドルウェアを初めて導入する際の「3つの判断基準」をご紹介しました。

それは、

 1.費用(対効果)
 2.信頼性と実績
 3.自社開発体制とのマッチング(フィッティング)


です。

費用対効果の検証にあたっては、「その技術を自社で賄う(開発しメンテナンスする)にはどれくらいの工数が必要か」という視点で行うケースが多いということをご紹介しました。

また、ミドルウェアはブラックボックスであるがゆえに、導入実績や信頼性が重要である、ということをお伝えしました。サポート体制や提供企業の経営状態、日本語対応の有無、OSアップデートへの対応スピードなどを、併せてチェックすることも大切です。

そして、今回の主題となるのが、上記の3番目。いかにして、導入するツールやミドルウェアに自社の開発体制をマッチングないしフィッティングさせていくのか、という課題です。

「導入したいけど、使いこなせるか心配」
「使いこなせるエンジニアが今はいない」
「活用するための教育や初期研修が大変」


こうした声は、実はよく耳にするものです。でも、いつかは乗り越えなければならない壁でもあります。

とくに、近年のスマホアプリの「リッチ化」と「ネイティブ化」の大きな流れは、プロジェクトの大規模化、チームの大人数化へとつながっています。ツールやミドルウェアの選定、導入、活用も、より慎重にかつ効果的に、そして、段階的に行っていく必要があります。

今回は、この自社に合った「段階的なミドルウェア導入」をどうやって実現すれば良いのか?その具体的な内容を、サウンド系ミドルウェアである『ADX2』を例に、ご紹介したいと思います。

前回の記事も併せてご参照ください。
【ありブラ vol.18】ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合う(その1)
http://www.gamebusiness.jp/article/2015/08/21/11313.html


急浮上するサウンドの「優先度」



ゲーム開発者の方であればすでにご存知の方も多いかもしれませんが、『CRI ADX2(以下『ADX2』)』は、サウンド系のミドルウェアです。

その特長をあえて3つに絞ってお伝えすると、

(1)圧縮音声を手軽に使える(高圧縮/低負荷/高音質の独自コーデック搭載)
(2)ゲームエンジンと一緒に使える(Unity/Cocos2d-x等に対応)
(3)プログラマの作業負担が大幅に軽減する(サウンド制作のワークフローを効率化)


となります。


▲ADX2の基本コンセプトは「プログラマとサウンドデザイナの分業」体制をつくること


スマホアプリのリッチ化のなかで、よく耳にするのが「サウンド(制作)の優先度(重要度)が上がった」ということ。フィーチャーフォン(ガラケー)時代からずっと、モバイルゲームというのはあまり「音」が重要視されてこなかったという背景があります(もちろん一部の例外はありますが…)。

映像表現がより豪華になることで、音の演出との「アンバランス」が目立つようになってきました。

ヘッドフォンをしてプレイするユーザが少ないから、という理由でサウンドの優先度が低くなるケースはありますが、最近では、あまりに低音質だったりサウンド演出が貧弱な場合、それが一部のユーザだったとしても、クレームという形でCS(顧客満足度)に響いてしまったりAppStoreやGooglePlay上のレビュー欄で炎上してしまったりと、大きなリスクにつながる可能性もあります。

こうした背景もあり、どのゲーム企業様も「サウンドをなんとかしなければいけない!」という問題意識を持たれつつあります。ここ最近、サウンドに関するお問い合わせが当社に急増しているのも、そのひとつの証です。

でも実際には、社内にサウンド専門の部門が無かったり、独自に自社で作ったシステムがあってそれが逆にボトルネックになってしまっていたりと、それぞれの企業やプロジェクトチームごとに、特有の課題が存在します。それを無視して、やみくもにツールやミドルウェアを導入しても、狙った効果やROIの向上が見込めない場合もあります。

そこで、次章からは、開発体制ごとにステップ分けして、サウンド制作のワークフローを段階的に効率化していく手法をご紹介していきます。ぜひ、ご自分の会社の状況にあわせて読み進めて頂ければと思います。

ステップ0:社内にサウンド部門がないケース



今回ご紹介するケーススタディは全部で4種類。ステップ「0~3」まで、4つのステップに分けてご紹介していきます。

まずは「ステップ0」、社内にサウンド部門が存在しないケースです。

CS系の企業はサウンド部門を有するケースが多いですが、ウェブ系の企業様やいわゆるSAP系と呼ばれる企業様は、サウンドを専門に扱う部門をまだ持っていない(設置していない)ことが多いです。

サウンドとひとくちに言っても、「楽曲制作」「SE制作」「セリフ収録」といったサウンドデータそのものの制作工程から、「データ圧縮」「音量調整(ダッキング等)」「アプリへの組み込み」「サウンド演出のためのコーディング」など、プログラミング(コーディング)サイドの知見が必要なものまで、幅広くあります。

この「ステップ0」では、サウンドの制作工程は外注、サウンドの組み込みや調整などのプログラミング工程は社内(但し、あまりサウンド系の経験や知見は豊富ではない)というケースを想定しています。そして、サウンド系ミドルウェアも未導入の段階です。


▲ステップ0のワークフロー:社内にサウンド部門を持たないケース(ミドルウェア未導入)


この場合、(自社の)プログラマは、以下のような作業を行うことになります。

・サウンド再生指示のためのコーディング
・音素材データのゲームエンジン(Unity等)への組み込み
・サウンドデータの圧縮設定、音量設定
・サウンドのバランス調整
・サウンド演出のためのコーディング
・音量や優先などの音まわりの調整


・・・パッと見ていただいても、プログラマの作業依存度やその作業負荷が非常に高いことがお判り頂けると思います。


▲ステップ0の問題点(ミドルウェアを導入するための理由)


ステップ1:プログラマによる組み込み



では、いよいよ『ADX2』を導入してみましょう。

初めは、社内のプログラマが主体的に『ADX2』を導入する、というとてもシンプルなケースです。


▲ステップ1のワークフロー:社内プログラマによるADX2の組み込み


ステップ0のワークフロー図と見比べて頂ければ一目瞭然だと思いますが、プログラマがサウンドに対して行わなければいけないタスクが非常に少なくなっています。また、場合によっては、プランナーとの分担作業(音量バランスなどの簡易な調整作業)も可能です。


▲ステップ1による改善点:アプリのトータルでの品質向上に貢献


『ADX2』の導入による効果のなかでも分かりやすい効果として挙げられるのが、なんといっても「音質が向上」することです。本来はトレードオフの関係にある「デコード負荷」や「データサイズ」「メモリサイズ」とも、上手に折り合いをつけることができます。

また、プログラマが従来書かなければならなかったサウンドのためのコードもほとんど不要になり、そのすべてをミドルウェアが肩代わりしてくれるので、工数は大幅に削減できます。

副次的な効果としては、『ADX2』搭載の「独自コーデック」と「暗号化機能」のおかげで、アプリ内の楽曲データや声優さんのナレーションデータなどを保護することが出来ます。残念ながら、スマホアプリのリバースエンジニアリングは比較的行われやすいとされており、ブラックボックスとしてのミドルウェアを導入することは、大切なデータをこうした行為から守ることにも役立ちます。

ただ、このステップでは、音の演出面に関する「各種調整作業」をプログラマー(ないしプランナー)が行うことを前提としているため、その工数は捻出する必要があります。プログラマーやプランナーは必ずしも「音」のプロフェッショナルではないため、作品のサウンドクオリティの担保が難しいという問題が残ります。

この問題を解決できるのが「ステップ3」「ステップ4」なのですが・・・、今回はここまで!この続きは次回、お届けいたします。


…さて、今週の「ありブラ」はここまで。
それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

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幅朝徳(はば とものり)

株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。ゲーム企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュース等も行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。最近は、ウェアラブルやIoTといった領域での新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当、業界の枠組みを超えた協業、世の中にとって全く新しい付加価値の実現のために日々奮闘中。

趣味は、クロースアップマジックと陶芸、映画鑑賞とドライブ、鳥類/フクロモモンガ/爬虫類の飼育、そしてもちろん、ゲーム。デジタルガジェット大好きなギーク。

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《幅朝徳》

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