無意識のうちに生まれる思考の枠を外せば、人の可能性は無限大―島根県クリエイター鼎談 2ページ目 | GameBusiness.jp

無意識のうちに生まれる思考の枠を外せば、人の可能性は無限大―島根県クリエイター鼎談

島根県出雲市出身で日本だけにとどまらず世界で活躍する企業の代表にお集まりいただきざっくばらんな鼎談を実施。故郷と世界の関わり、モノづくりで「ダークサイド」に落ちないための取組、人間の秘めたる無限の可能性まで幅広いお話を伺いました。

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モノづくりで「ダークサイド」に落ちないために


直良僕らみたいな現場のクリエイターと違って、お二人とも経営という視点から入られているじゃないですか。普段そういった方々とお話しする機会が無いので、どういうふうに考えてるんだろうって。

――アカツキさんのように、ゲーム業界でそうした理念をちゃんと表に出されているところって、ほとんどないですよね。

鮄川僕もすごい印象に残ってます。はじめてウェブサイト見たときに、かなり理念が打ち出されてたんで。

塩田ゲーム業界って難しいことも多いんですけど、僕らはピュアでいたいと思っているんですね。人間のモチベーションって、そういうところに起因すると思うんですよ。実際、起業って大変だから、何かやめない理由が必要だと思うんですよね。それがビジョンだったりするわけで。


鮄川会社の規模が大きくなっていくと、いろんな人が入ってくるじゃないですか。その時にビジョンを浸透させるみたいなことは、やられていますか?

塩田めちゃくちゃやっています。例えばですけど、毎週、社員の前で「ゲンちゃんズトーク」をしています。というのも、自分の名前が元規だから。そこで、いつも「われわれはなぜ仕事をしてるのか」っていう話をしています。

鮄川全社ミーティングですか?

塩田全社です。毎回全員の前で会社の理念、エンターテイメントの本質みたいなことを話すんです。新入社員や中途社員に対しては、僕が毎回3時間使って、会社の理念と社史を包み隠さず話していますし。3カ月に1回ぐらい、合宿みたいなのもしていますね。

鮄川すごいですね。今は何人ですか?

塩田正社員だとグループ会社も含めて250人くらい。アルバイトや契約社員を全部入れると、海外も含めて900人くらい。

鮄川その人数になってもそれをやってるのは、すごいですね。

塩田一昨日まで台湾オフィスにいたんですよ。そこでもゲンちゃんズトークをしてきたんですけど、向こうもすごく文化が熱いですね。

鮄川かなり時間を費やしていますね。

塩田それで最近、思うんですが、モノづくりをしていると、対象物に深く入りこんでいくじゃないですか。その時に、ダークサイドに転落するフェーズがありそうな気がして。実際、モノを生みだすって、苦しいじゃないですか。

深く入り込むのはいいと思うんですけど、完全にダークサイドには落ちないって、僕は決めたんです。ダークサイドに落ちて、つながりとかわくわくとか心にとって大事なものを失ってしまうのは絶対にやめようと。実際、ゲーム業界には多分ダークサイドに落ちて、すごくつらそうになってる人もいるんじゃないかなと思うんです。直良さん、長くゲーム業界にいらっしゃって、どうなんでしょうか?

直良自分の場合は、絵描きが基礎なんで、頭に絵が浮かんじゃったら、形に出さないと駄目だと思っているんです。じゃあ、いわゆる「神様が降りてくる仕組み」って、どういう感じなのかについて解明しようとしていて、スタッフと共有をはじめています。

塩田アイディアがわいてくる仕組みを可視化してるってことですか。

直良そうです。これまでは自分一人で何となくやってたんですが・・・。

塩田そのマニュアルを見たい。

直良そんなに難しいことはしていないです。「ひらめき型」と「積み上げ型」があるんですが、同じアプローチでゴールに到達する方がみんな幸せになるだろうと思って。それは「闇落ち」をしないためでもあります。そんなふうに方法論が確立していると、コンセプトがしっかりするし、迷ったときもコンセプトに戻れば良いから、闇に落ちなくてすむ。


塩田なるほど。

直良ただ、こういうノウハウって属人的になりやすいし、共有されにくいんですよね。その辺をできるだけ可視化していくと、チームとしての力が増していくんじゃないかと今朝も午前2時半くらいまでプロデューサーと飲みながら話し込んでいて。もっと可視化して、何社かで共有して、仲良くしていこうみたいなことを話していました。

塩田それ、僕も混ぜてください!アカツキでも是非やりたい。アートの領域って、ロジックで落としきれないある種の天才性みたいなものがあるような気がしていて。

直良もちろん人それぞれの強みは当然あると思います。ただ、もうAIが絵を描く時代になってきちゃったから。人間の強みって、最終的にはアイディアや、魂の部分になると思っていて。逆にそれ以外のところは共有できると思うんです。実際、自分たちの仕事が奪われそうな感じもしますよね。

地方都市ならではの人的ネットワーク



塩田そういう危機感があるんですね。

直良何年か前から、絵描きは不要になるんじゃないかって恐怖感があって。AIがそのうち絵を描くようになるだろう、アイディアも出すようになるだろう、と。

鮄川最後まで残りそうな気もしますけどね。

塩田そうですね、それが結局、ロジックから遠そうだから。

直良そんな時代になっても残るものって、結局は感情や衝動、何かエモーショナルなものだと思っていて。実際、今年のマイテーマは「衝動」なんです。

塩田衝動か~。直良さんのアートスタイルは、どの辺で確立されたんですか?

直良わりと早いうちですね。もともと絵がそんなに得意じゃなかったんです。

塩田出雲高校、普通高校ですからね。どういう経緯で絵の道に進まれたのか、気になって。

直良ルーツは授業中の落書きなんです。教科書の隅でパラパラ漫画を描いたり、偉人の絵にラクガキしてみたり。

塩田かなりのキャリアチェンジですよね。

直良ゲームも遊んでいたし、絵を描くのも好きだったんで、両方できるのはゲーム開発の仕事くらいかなと・・・。けっこう安直だったんですよ。ただ、他にも山高出身がスクウェア・エニックスにもいましたよ。

鮄川僕も同級生で漫画家になっている友達がいますよ。ドラマにもなった『クロコーチ』を手がけたコウノコウジくんで、この店で再会しました。けっこう締切がつらそうでしたね。

塩田やっぱり、そうなんすね。お二人とも出雲高校卒業生としては、かなりレアですよね。

直良そういう奴らって、やっぱりすぐ出雲から出ちゃうんですよね。

鮄川就職先がないんですよね。直良さんのお父さんはどういうことされていたんですか?

直良うちのおやじ、市議会議員をやったこともあって、わりと政治家系の一族なんです。だから自分がこういった仕事をしているのも多分、そうした堅い仕事からの反動でしょうね。

塩田仕事をつげと言われなかったんですか?

直良長男だから、いまだに田舎に帰ると「選挙に出るの?」とからかわれます。そのたびに「ファイナルなファンタジーな政治をしていいなら」って。そう言うと周りからも「やめて」って感じです。


塩田やってほしいけどな。僕はそれを、まじで。

直良政治には向かないですね。そこは鮄川さんがすごいなと思っていて。行政から助成金を受けて開発拠点を立ち上げたり、市町村ともコラボしてプロジェクトを回されたりしているじゃないですか。ああいうのって、どうやって切り開いていってるんですか。

鮄川単純に人と人との繋がりですよ。県庁所在地の市役所と県庁って、あんまり仲良くないことも多いですけど、松江市と島根県ってがっつりと連携しているんで、やりやすいんです。

直良情報を教えてもらったりとか、人を紹介してもらったりとか?

鮄川そうですね。ちなみに山陰合同銀行(*)からも出資してもらいました。実際に島根県出身で、地元でも事業を興す人って、そんなに多くはないので。だから、気にかけてもらっているところはあります。
(*)島根県松江市に本店を置く、山陰地方で最大規模の地方銀行。

直良確かに。俺も田舎に帰ったら、合銀に勤めてる同級生が来てくれたり。

鮄川実際、個人保証なしでお金貸してくれたのは、合銀が初めてだったんですよ。けっこう嬉しいもんじゃないですか。

塩田それは確かに。起業するときって、法人口座の開設が最初のハードルになりますしね。

次ページ:田舎で育ったことの良さとは
《小野憲史@インサイド》

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