「高知県で働くデメリットはない」―日本の地方活性化を目指すアボカドに訊くクリエイターの働き方 | GameBusiness.jp

「高知県で働くデメリットはない」―日本の地方活性化を目指すアボカドに訊くクリエイターの働き方

アボカド ゼネラルマネージャー 高橋健太氏

産業政策 地方
アボカド ゼネラルマネージャー 高橋健太氏


エンジニアやイラストレーター、デザイナーなど、「手に職をつける」クリエイター的な職種は今やパソコンとネット環境があれば場所を選ばずに働ける時代に。こういった背景もあり、各地方自治体はITやゲーム企業の誘致、クリエイターの移住促進に力を入れています。

高知県、山口県、宮崎県の3県に拠点を構えるアボカドは「日本の地方活性化」をコンセプトにゲーム・AR/VRのプログラム開発、アニメーション制作を行う企業。『オーディナルストラータ』や『グリモア』といったスマートフォン向けゲームの一部開発も手掛けています。高知本社にてゼレラルマネージャーを務める高橋健太氏(以下:高橋氏)は、もともとは東京で映像制作に携わっていましたが後に奥様と一緒に高知県に移住。クリエイターが地方で働くメリット、首都圏で働くことの違い、地方で仕事をしたいと思っている方へのアドバイスを同氏にお聞きしました。

───本日はよろしくお願いします。高橋さんのご出身は高知県なのでしょうか?

高橋氏:いえ、東京です。妻が高知県の須崎市の出身で、子供を育てるのにも環境が良いよ、ということで移住を決めました。

───奥様Uターン、というやつですね。高知県へ移住されてきていかがですか?

高橋氏:とても住みやすくて本当に気に入ってます。業務自体は東京レベルのことをやっているので忙しいのですけれども一歩外に出ると空気が良くって。朝なんかも鳥のさえずりで起きたりするので、精神的にすごくいい影響が出ています。

───それでは、アボカドの事業内容をお聞かせください。

高橋氏:大きく分けて2つ。一つはゲーム開発で、VR・ARプログラム開発事業。もう一つはアニメーション制作事業です。ゲーム開発はクライアントからサーバーまで一貫して社内で開発しています。Unity、Unreal Engine、Cocos2d-xなどを使用したスマホ、ブラウザ、PC、ゲーム機向けのクライアントプログラム開発。ゲームサーバーはLinux、PHP、MySQLなどを活用してリアルタイム通信サーバーやゲームサーバーの設計開発構築を行っています。

VR・AR開発や、ゲームAIなどのテクノロジーを活用した開発も得意としていて、主に親会社のモノビットと共同開発していますので、地方に居ながら首都圏レベルの仕事ができるのが特徴です。

アニメーション制作事業ではSpineやLive2Dを使用したアニメーション制作がメイン。設立当初からSpine、Live2D等を利用したアニメーション制作専属のチームを立ち上げました。もともと3Dモデラーだったり、イラストレーター、アニメーターの方を集めてチームを作っています。現在はAppstoreやPlayストアのランキング上位のタイトルのLive2Dアニメーション制作や有名IPのSpine案件のアニメーション制作を行っています。

余談ではありますが、先月VRスペース「VR Avocaland Kochi」をオープンしました。

───開発だけではなくリアル店舗も。VRスペースということですが、誰でも入れるのでしょうか?

高橋氏:はい、VRを開発しながらVR環境で遊べるという試みです。一般公開していますので皆さん来ていただきたいなと思います。

───利用料はどのくらいなのでしょうか?

高橋氏:30分1000円、90分2000円でゲーム自体は遊び放題です。遊べるタイトルは親会社が出している『Trip Trap Travelers』というゲームなどを出展しています。このほか9種類のタイトルが遊べます。

───高知県でVRが遊べるのはここだけになるのでしょうか?

高橋氏:そうですね。ゲームタイトルですとここだけになると思います。シアタールームなどの体験はあると思うのですが、ゲームコンテンツが遊べるというのは高知県初です。

───オープンから一ヶ月経ちましたが、反響はいかがですか?

高橋氏:オープン当初から比べここ最近は収束気味ではありましたが、また増えだしまして。テレビの取材を見てお越しいただいているというお客さんが多いようです。

───きっとVR初体験という方もいらっしゃいますよね。

高橋氏:初体験の方ばかりですね。ほぼ100%「すごいですね、おもしろかったです」という感想をいただけています。もう4~5回くらいお越しになっているリピーターの方もいらっしゃいます。

「VR Avocaland Kochi」店内の様子。10~50代と様々な年齢層の方が遊びに。

───高知に拠点を設立した理由を教えていただけますか?

高橋氏:高知県自体がゲームや漫画と言ったコンテンツ産業にすごく力を入れていたというのがあります。行政からの熱心な誘致活動が決め手となって、高知に進出することを決めました。弊社アボカドの取締役のお母様が高知出身であったという縁もありますね。

───アボカド社のホームページには「日本の地方活性化をコンセプトにしたゲーム制作会社」とありますが、ここに込められた思いをお聞かせください。

高橋氏:親会社のモノビット代表の本城が数多くのエンジニアと接してきたところ、「一度地元に帰りたいな」という声が多くあったと。そんな夢を叶えるべく地方での事業を考え始めた、というのがきっかけです。

───従業員の働きやすさなどを考えて試した結果、うまく行ったということなんですね。こういった取り組みの中で、従業員からの反響はいかがですか?

高橋氏:例えば、子供がいるエンジニアからは「首都圏では子育てが大変なのでサポートも多い地元ではすごく働きやすい」といった声が出ています。

───他には山口と宮崎にも拠点があるということなのですが、業務内容は異なるのでしょうか。

高橋氏:基本的には同じです。そこで差別化はしていません。

───なぜ高知の他に宮崎と山口に拠点をおいているのでしょうか?

高橋氏:もともと事業の譲渡という形でスタートしており、譲渡元が宮崎と山口にオフィスを構えていたのでそのままやってみようか、と。正直3拠点は大変かな、と思ったのですが一緒に働いていくうちにスタッフのスキルや人柄や地方の環境の良さから今でも業務を続けている、という形になっています。

───この3拠点で一つのプロジェクトをやっているのですか?

プロジェクトによって異なります。基本的にはエンジニアの仕事は親会社との共同開発が多いのでプロジェクトごとにアサインされていくためバラバラになってしまうことがあります。2Dアニメーションのほうは一緒になって密に連携を取りつつやっています。

───3拠点での連携はかなり大変かなと思うのですが、どのようなコミュニケーションを行っているのでしょうか?

高橋氏:ChatWorkやSkypeを使っています。文章では伝わりにくいことなどは、各拠点に設置した大型モニター越しに対話しています。毎朝の朝礼も大型モニターでやっていますので顔を突き合わせてのコミュニケーションができています。昨年は試験的に忘年会もリモートで行いまして、ビンゴ大会などもモニター越しにやったりして意外と盛り上がりました。

3拠点をつなぐ大型モニター。コミュニケーションはリモートワークにおいて最も重要。

───リモート忘年会、楽しそうです。3拠点ゆえに、意識的に行っているコミュニケーションはありますか?弊社も島根県に拠点があるのですが、現在の作業や悩みなどの「独り言」を書き込むチャットスペースがあったりします。

高橋氏:プロジェクトごとの定例MTGや朝会などを実施しています。また、プロジェクトで壁にぶつかった時などは、個人間でも積極的にビデオチャットやPCの画面共有をすることにより、ソリューションを見出したりしています。

「独り言」を書き込む部屋。良いですね。悩み事って、誰かに聞いてもらいたいですよね。
弊社でも真似させていただきたいです。

───高知に拠点があってよかったな、というエピソードはありますか?

高橋氏:月並みになってしまうのですが本当にご飯が美味しくて。あとはやはり、県庁のほうでIT・ゲーム産業を推進されていますので事業がやりやすくありがたいです。

───高橋さんの感じる、高知で働くメリット・デメリットをお聞かせください。

高橋氏:やはり環境が良いのは第一ですよね。ストレスフリーなのでクリエイティブに直結すると思っています。あとは個人的な意見なのですが、ゲーム業界においては人材の部分でブルーオーシャンかなと。県内に奪い合いが生まれていないというのもありますし、埋もれている才能がまだまだいっぱいあると見ています。

デメリットは……特にないですね。もともと東京で働いていたんですが同じように出来ています。


───お答えにくいかもしれませんが賃金の面ではいかがですか?

高橋氏:正直、東京に比べると少し低いです。給与面でも首都圏に匹敵する魅力を出していければと思います。そのためには雇用拡大ですね。積極的に県内の人材を中途新卒問わず登用していきたいと思っています。

───高橋さんは東京で就業した後に高知県で働かれていますが、「ここが違う、ギャップがあった」というものがあれば教えてください。

高橋氏:高知県庁の方の熱心さ、手厚いサポートには驚かされました。県内の学校をご紹介していただくだけでなく、学校訪問時には同行いただいたりと、採用活動も一緒になって行ってくれています。

VRスペースの県内メディア向けの内覧会の際にも、様々なお願いを聞き言れていただくなど、とても親身になってサポートしていただいていますね。あとは通勤ラッシュがありません。通勤がとても快適です!

───通勤ってかなりストレスですよね……県内の他企業との連携などはありますか?

高橋氏:残念ながらそういったお取引は今はありません。始動したばかりなので今は親会社との共同開発、2Dアニメーションの事業拡大に力を入れています。なにかチャンスが有れば一緒にできたらな、と思います。

───ゲーム・IT企業も増えているようですから連携などできればいいですよね。高知県に対する要望などはありますか?

高橋氏:UターンやIターンの方が見る情報サイトなどが欲しいですね。ここさえ見れば情報が一発わかるというようなポータルサイトがあればUターンやIターンに繋がりやすいのではないでしょうか。

あと、移動に対する費用の助成などがあれば嬉しいです。お客さまが実際に現地を見に来てくれるとスムーズに契約できると行った場合が多いのですが、実際にはなかなかきっかけがないんですよね。そのあたりに助成がればまた違った営業の展開も出来ると思うので。

───地方で仕事がしたいと思っている方へのアドバイスはありますか?

高橋氏:僕の場合は、思ったよりハードルは高くなかったかなという印象があります。やっぱり住んでみればそこが都なので、思い切って来てみれば難しいことではないと思います。

───最後に、今後の展望などをお聞かせください。

高橋氏:まずは雇用拡大です。高知県だけではなく宮崎、山口に雇用を創出して誘致していただいた恩返しをしたいなと思っています。2つ目は人材育成ですね。プロフェッショナルなゲーム開発制作集団として、新しく入社してきたスタッフにも先輩エンジニア・デザイナーがしっかりサポートできる体制を作りたいなと。スキル面でも給与面でも首都圏企業に引けを取らないレベルの魅力的な企業にしていきたいです。また、みんなが気兼ねなく意見が言い合えるような楽しい職場、そして適切な業務量で健全な企業であることを心がけていきたいと思っています。

───ありがとうございました。
《山﨑浩司@インサイド》

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