ゲームと漫画が地方を盛り上げる!課題先進地”高知県”が取り組む地域振興 | GameBusiness.jp

ゲームと漫画が地方を盛り上げる!課題先進地”高知県”が取り組む地域振興

どの地域よりも早く「漫画」というコンテンツに目を向け全国の高校生を対象とした「まんが甲子園」を開催した高知県。

産業政策 地方
どの地域よりも早く「漫画」というコンテンツに目を向け全国の高校生を対象とした「まんが甲子園」を開催した高知県。

地域振興を目的としたこの取組は今年で27回目を迎え、「全国漫画家大会議」といった、漫画家とファンの交流ができるイベントも展開。ここから更に派生する形で、現在は各都市のIT・コンテンツ企業の誘致や、クリエイター育成の支援なども行っています。

人口減少、高齢化が進む同県にゲーム・IT企業が14社立地するなど事例も増加。課題が詰まった地域に企業が進出するメリットとは?本稿ではそんな高知県が行ってきたコンテンツに対しての取組と、同県で働く魅力を、高知県商工労働部産業創造課の武市氏、高知県文化生活スポーツ部まんが王国土佐推進課の高橋氏へのインタビューを通じてご紹介します。

左:高知県文化生活スポーツ部まんが王国土佐推進課 高橋 潤氏
右:高知県商工労働部産業創造課 武市 正人氏

───本日はよろしくお願いします。最初に自己紹介をお願いします。

武市氏:高知県商工労働部産業創造課の武市正人です。前職は神奈川県の川崎市でシステムエンジニアをやっており、その後にUターンし高知県庁に入りました。最初は情報政策課というところに入りまして、次にまんが・コンテンツ課、その後産業創造課、という流れです。

高橋氏:高知県文化生活スポーツ部まんが王国土佐推進課の高橋潤です。僕はこの3月まで教育委員会にいましたので、入りたてホヤホヤです。

───まずは産業創造課の成り立ちから教えていただけますでしょうか?

武市氏:もともとは「まんが甲子園」がきっかけで設立されています。都会から離れていても地理的なハンデキャップがない「IT」や「コンテンツ」を産業として推進していこうということで、平成22年にまんが・コンテンツ課ができました。そこでは、まんが・コンテンツの取り組みとして、前者では「まんが甲子園」を、後者ではソーシャルゲームの企画コンテストを行いました。

コンテストでは6作品を実際に開発し、県内での雇用が生まれたり、首都圏のゲーム開発会社と県内企業との関係が生まれてビジネスが始まるなど、一定の成果が出ました。さらに、この取組で生まれたゲーム企業人脈を活かし、高知で事業を行える企業を誘致することが出来るんじゃないかということで、課が誘致活動を行っていくことになりました。ゲーム以外の企業を併せて、平成28年度末までで9社の企業に立地いただいています。

まんが・コンテンツ課は文化生活部の中の一部署だったのですが、企業誘致となると商工労働部の所管になるので、企業誘致の活動が大きくなっていく中でまんがとコンテンツを分けまして、まんがの方は「まんが王国土佐推進課」、コンテンツのほうは「産業創造課」という新しい部署になった、という経緯があります。

誘致活動といった県外へのアプローチだけでなく、県内企業が県外へ打って出るという活動のサポートもしていますので、外商や県内企業同士のマッチングの支援も行っています。県内企業が出会う中で自然と生まれたコラボもあります。

───県内企業のコラボ、とありましたが具体的な実績はありますか?

武市氏:2015年4月に立地したネクストリーマー(*1)とシフトプラス(*2)は高知県主催の「ものづくり総合技術展」で出会い、AICOというカスタマーサポートのチャットシステムを共同で開発しています。
(*1)AIを活用した対話システムの研究開発・サービスを提供。東京本社。
(*2) ゲーム運営における品質保証、カスタマーサポートを提供。東京本社。


自動解決チャットサービス「AICO」。チャット感覚でユーザーの質問に回答。

───ありがとうございます。続いて、まんが王国土佐推進課で取り組まれている「まんが甲子園」についてお聞かせください。

高橋氏:1992年に始まった、全国の高校生が日本一を競う学校対抗のまんがの大会で、毎年、日本全国から約300校の応募があります。文化系の甲子園の中では全国で一番長い歴史を持っています。歴史が長い分、大手の出版社さんともネットワークがあるのでそこが強みであり財産ですね。

───まんが甲子園から実際に商業デビューされた方も?

高橋:実際に10数名居ますね。プロになって、今は審査員としてまんが甲子園に参加してくださっている先生もいらっしゃいます。

───最近は海外からのエントリーも多いと伺っています。

高橋:高橋:韓国・台湾・シンガポールから参加しており、去年は韓国の高校が優勝されているくらい、フラットな審査をしています。

まんが甲子園、選手宣誓の様子。日本国内だけでなく世界から高校生が集う。

───両課の活動によって具体的な数値にあらわれているものはありますか?

武市氏:これまで長い期間活動してきた中で、14社の企業立地がありました。新規雇用者数は162名もあり、我々がやってきた活動の成果であると思っています。今後37年度末までに900名の雇用を創出することを目標に掲げています。

───例えばシフトプラス社は立地して3年目ですが、既に100名以上の雇用を生み出しています。高知ならではの秘訣、というものがあるのでしょうか?

武市氏:シフトプラスさんをはじめ企業さんの努力ですね。あとは、高知でゲーム関係の雇用というのは当時としては珍しく、「高知でもゲームの仕事に携われるんだ!」と若い方が興味を持ってくれたというところもあろうかと思います。

───まんが甲子園の方ではいかがでしょう?

高橋氏:去年で言うと、予選を勝ち上がった日本国内30校、海外3校の約150名の生徒が選手として参加し、のべ約2200人の来場がありました。まんが甲子園とは別に、3月には「全国漫画家大会議」というイベントもおこなっていますが約4000人の来場者がありました。

まんが甲子園会場内の様子。

───全国漫画家大会議とはどのようなイベントなのでしょう?

高橋氏:著名な漫画家の先生や編集者が参加し、トークショーや漫画教室を通じてファンと交流するイベントです。前回は、キャプテン翼の高橋陽一先生をはじめ21名もの先生に参加していただきました。漫画家ではないですが、第一回目には、中川翔子さんもいらっしゃいました。

───今年のまんが甲子園のテーマが「フェイクニュース」、「仮想○○」。 世の中を捉えているといいますか。

高橋氏:漫画はただ絵を描くだけでなく、いかにアンテナを張って時流を勉強しているかも大切だと考えています。 毎年、その時々のホットなネタがテーマになりますね。

───まんが甲子園内の「就活!まんがでつかむ未来!」には坂口博信(*)さんもいらっしゃるのですね。

高橋氏:絵を描くということは、漫画家という道だけでなくイラストレーターやゲームのクリエイターに進むという道もあります。坂口さんには、まんがを学んだことが将来どのように活かされるのか、どのような進路につながるかと言ったことなどについて、お話をして頂く予定です。
(*)『ファイナルファンタジーシリーズ』の産みの親であるゲームクリエイター。ミストウォーカーのCEO。

───産業創造課では企業誘致やUIターンの促進を行っていますが、近年各都道府県でも人材の奪い合いになっています。高知県ならではの明確な強みというのはありますか?

武市氏:企業立地に関しては県が力を入れて支援をしていますがまだ突出した企業が少ないので、早めに入っていただけると高知内で目立つんじゃないかなと。例えば「高知にゲーム企業がやってきたぞ!」となると一挙に注目を集める、といった具合ですね。

UIターンする人がおっしゃっていたのは、「都会とは違ってオンとオフの違いがはっきり出来るのが良い」と。高知県内は自然が多く、市内からでも30分あれば海でも山でも川でもいくらでもある。「ちょっと疲れたな」と思えばすぐに行けるというのはメリットです。

それだけだと他県にもいっぱいあるのですが「よさこい祭り」や「ひろめ市場」、高知の文化的な面を気に入ってくださる方もたくさんいまして、そこに合う人が来てくださっているのかな、というのはあります。

高知市の観光地。県内外より「呑兵衛」が集う。

───では県のお仕事とは少しはなれて、お二人が思う高知の魅力はなんですか?

武市氏:都市部がコンパクトにギュッとまとまっているというのと、東西に長いのでいろんな面白いポイントが有るというのがあります。サーフポイントやジオパークなど知らなかった場所を徐々に発見する、というゲーム的な楽しみがありますね。

高橋:食文化や飲みニケーションもそうですが、人間として裏表がないというところでしょうか。飲んで色々議論しても翌日に引きずらない、根に持たないといいいますか。県民性を表す小話で、「1000円持っていたらどうする?」というのがあるのですが、愛媛の人は商売を始める、徳島の人は貯金する、高知の人は飲みに行くと。宵越しの金は持たない、という感じですね(笑)。

───飲みニケーションですね(笑)。それでは、立地企業に対しての県の支援内容を教えてください。

武市氏:立地支援の補助金をはじめ、人材確保支援をハローワークや高等教育機関と連携して取り組んでいます。「高知家IT・コンテンツネットワーク」というイベントを東京で開催しITやゲームの職に就きたいけど仕事がないから県外に出てしまった、という方にもこのネットワークで交流していただく活動です。立地するときの支援としては、補助金を3年間で最大2.5億円支援する、ということを行っています。

高知県への立地前後の支援内容。

補助金を受ける条件として、「操業1年以内に正規職員の県内新規雇用3名以上」となっています。他県ですと5名以上10名以上という場所が多く、かなりハードルを下げた形になっていて、立地のしやすさはメリットかと。立地後は人材育成支援や事業化を支援するという仕組みもあり、企業間の連携支援で2ヶ月に一回勉強会の開催、外商支援で東京の展示会に高知県のブースを出展、といった取組も行っています。

───ゲーム企業がすでにいくつか立地していますが、そういった企業と連携しての取り組みはありますか?

武市氏:企業と一緒になってやっているところでは人材育成の講座をやっています。県内企業で実際に物を作られている方に来ていただいて、そこで4~5名のチームを作り、4ヶ月間かけてものを作るというものです。この取組から人材マッチングに繋がっています。

あとは東京のイベントで高知を宣伝していただいたり、いろんなところで協力頂いています。また、企業の方にゲームプログラマー育成講座を担当して頂く、という取組も6月からスタートする予定です。特に今年は、人材育成をかなり強化していまして、去年に比べると規模が3倍くらいに膨らんでいますね。

───この育成講座は学生に対して企業の方が行う、という形なのでしょうか?

武市氏:学生だけではなく、色々な方に学んでいただける場になっています。基礎講座のアドバンスコースという中にもゲームの科目がありまして、大学生や高等教育機関の方向けにiPhoneアプリとUnityとウェブデザインの3つのコースがあります。まずは大学生たちに作り方を教えて、次にその大学生たちが中高生に教える、という2段構えの仕組みになっており、ここでゲームづくりが体験できるという講座です。

高知県の人材育成・確保の取組。

───北九州市なども「国際漫画大会」といった取組を行っていますが、今後高知県としてなにか新たな取組は予定していますか?

高橋氏:今年度、新たに「世界まんがセンバツ」を開催します。会場である高知県で一番を決めるチーム対抗の「まんが甲子園」に対し、「まんがセンバツ」は、インターネットで広く作品を募集して集まった作品をインターネットで公開審査し、3月の漫画家大会議で一番を決めるという個人戦です二つのイベントの相乗効果によって世界に、「まんが王国・土佐」をアピールしていきたいと考えています。

それと、今まで高知は、漫画やコンテンツと言ったソフト面に力を入れていてたのですが、旧県立図書館の建物を活用し、まんが文化やまんが甲子園の情報を発信していく拠点の場、また、デジタル機器を使った作画体験、まんが教室の講習会など人材育成の場となる拠点施設を平成32年度に開設する計画が進行中です。

高知県立図書館。漫画の描き方を学べるコンテンツを用意。

───これまで「漫画」「コンテンツ」という切り口で地域振興を行ってきた高知の方々から見て、漫画村など海賊サイトの騒動はどう思われますか?

高橋:けしからんの一言ですね。漫画、ゲーム、映画、全てに著作権が絡んでいます。そこをきちっと守ることでクリエイターの収入に繋がり、業界が発展し盛んになっていきますので、そのベースを揺るがす事態だと思っています。そういったこともあり、高知県では著作権セミナーを文化庁と共催で開催しています。

───最後に高知に進出を検討している企業に対して、まんが甲子園に出場を考えている学生へアピールなどあればお願いします。

武市氏:やはり「食」ですね。高知にUターンしてきて、実質食事にかけるお金はそんなに変わっていないのに、おいしさや満足度が上がっています。お金の使い方が都会と違い、生活が充実し非常に暮らしやすい。都会から高知に来ると想像力が刺激されるとおっしゃられる方も多く、クリエイティブな活動に繋がると思います。まずは見に来ていただいて、気に入っていただければ嬉しいですね。

高橋氏:まんが甲子園の予選を突破して高知に来ていただくと、本人のみならず引率の先生もかなり刺激があるようで、そういったところも本選で楽しんでもらえればなと。人材育成の視点で言うと、高知在住のプロやセミプロの漫画家の先生が学校を訪問してマンガ教室を開いて、絵の技術だけではなく、知識や表現力を学ぶ、ということもやっています。この他、まんが甲子園に、大手出版社のスカウトが来場し、出場選手のスカウトや、一般の方を対象に、作品の持ち込みを受け付けています。プロデビューに一歩近づける機会なので、ぜひチャレンジしていただきたいですね。

───本日はありがとうございました。
《山﨑浩司@インサイド》

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