【ありブラ vol.18】ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合う(その1) | GameBusiness.jp

【ありブラ vol.18】ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合う(その1)

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【ありブラ vol.18】ツールやミドルウェアの「導入障壁」と向き合う(その1)
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GameBusiness.jp、インサイドをご覧のみなさま、こんにちは!

学生の方におかれましては夏休み真っ盛り、社会人の方におかれましては盆休明けの忙しい日々かと存じます。うちの会社も恐縮ながら1週間のお休みを頂いていましたが、家族と休暇の時期が合わなかったため、やりたかったゲーム(積みゲー)を遊んだり友人と映画を観たりと、都市型(?)の休暇を楽しみました。

そうそう、以前当連載でも取り上げた映画『ジュラシック~』シリーズの最新作『ジュラシック・ワールド』も、IMAX 3Dで観賞しました(ご参考:【ありブラ vol.16】恐竜がムーンウォークする!?)。未観賞の方は、ぜひ「音」にも注目(注耳?)してご覧頂ければと思います。上映館は限られますが、今流行りの「4D系」で体験するのもアトラクション的で良いかもしれません。

さて今回は、開発プロジェクトにおいて、新たなツールやミドルウェアを導入する際に遭遇する「導入障壁」について、あえて触れてみたいと思います。

ツールやミドルウェアというのは、ある意味で画一的/汎用的なものですが、使って頂く企業や開発チームはまさに千差万別。企業やチームによって、開発方針や予算の考え方、決裁プロセス、開発体制、開発期間、アウトソーシングの活用度合いなどが異なります。そのため、同じツール&ミドルウェア製品であっても、導入する企業やチーム(プロジェクト)によって、活用手法や評価基準、導入可否の判断材料が異なることは珍しくありません。

ツールやミドルウェアの製品自体の良し悪しを評価することはもちろん重要ですが、実は、もっと重要なのが「いかにして使いこなすか?」という視点です。「使える or 使えない」という二元論というよりは、「とりあえず使ってみる → 使いこなす → しゃぶりつくす」という感じで、ROIを向上させるためのツールやミドルウェアの使い方について、CRIWAREを例にご紹介してみたいと思います。



なお今回はテクニカルな内容というよりも、現在のプロジェクトの制作体制(チーム構成)に注目した内容でお届けしたいと思います。併せて、企業規模に応じたミドルウェアの利活用の方法や、将来の理想的なチームビルドについても、参考になれば幸いです。

それでは「ありがとう、ブラックボックス」略して「ありブラ」、今週もスタートです!ぜひリラックスしてお楽しみ頂ければと思います。

3つの判断基準



CRIWAREに限らず、UnityやUnreal、Cocos2d-xなどのゲームエンジンやミドルウェアを「新規」に導入したり導入検討する場合、必ずといってよいほど耳にする、企業さま共通の「悩み」があります。

「導入したいけど、使いこなせるか心配」
「使いこなせるエンジニアが今はいない」
「活用するための教育や初期研修が大変」


どれも、社内のエンジニアのスキルと密接に関連しています。

今でこそ、UnityやCocos2d-xはスマホアプリの世界でもデファクト・スタンダードとしての地位を確立するに至りましたが、ボクがUnityを注目するようになった約6年前は、まだまだ日本国内での認知は低く、実際に導入しているアプリの数もそれほど多くありませんでした。

ミドルウェアやツール、ゲームエンジンというのは、一般的に企業が提供するものである以上、供給停止や技術やサポートの品質が維持されるか?という、リスクを考慮に入れる必要があります。だからこそ、導入実績や導入アプリ数の多さ、企業や事業としてのサステナビリティなども、導入時に評価する必要があります。

新たな技術やシステムを導入するということは、それに合わせて、社内の体制をフィッティングしていく必要があります。

ミドルウェアの導入判断の際に重要となるファクターは、おもに、

1.費用(対効果)
2.信頼性と実績
3.自社開発体制とのマッチング(フィッティング)


の3つです。

それぞれについて、詳しくご紹介していきます。

費用(対効果)



いずれの企業様であっても、料金体系やライセンス料は、最大の関心事であることは間違いありません。自社やプロジェクトの事業計画やサクセスロードマップと照らして、受け容れられるものかどうか判断されます。

もちろん、その製品が提供してくれる機能やソリューションが、自社で「困っていること」をどれだけつぶさに解決してくれるか?という視点も、費用対効果の大切な視点です。実際によくあるケースなのですが、社内でミドルウェア導入の必要性をアピールする(≒稟議を通す)ために、同じ技術を自前で(自社内で)開発した場合、どれだけ工数や費用が発生するかという資料を作成される企業もあります。この場合、初期開発だけではなく、バグFIXや各プロジェクトへのチューニングサポート、頻繁に行われるOSアップデートへのタイムリーな対応など、メンテナンス費用についても考慮するのを忘れてはいけません。



企業規模にもよりますが、自社内に全社共通の技術部門を有し、自前のエンジンやミドルウェアなどを「競争力」として独自開発し、活用しているケースもあります。家庭用ゲーム機(CS機)の場合、比較的規模の大きな企業では一般的に行われることの多い取り組みですが、スマホに関しては、商用エンジンやミドルウェアを使うケースが圧倒的に多くなっています。OSと機種の組み合わせという意味で、ユーザのプレイ環境のフラグメント化がより深刻化しており、コストシミュレーションの結果、自前主義を貫くことは非常に厳しくなってきていることも大きな理由だと思います。

そうした背景もあり、近年、こうした全社共通の技術部門は自前技術の研究開発だけではなく、オープンソースか商用かを問わず、世の中のエンジンやミドルウェア技術を「調査・評価・検証(場合によっては「提案・導入交渉」も含む)」するという、“テクニカルリサーチ”も大事なミッションとなっています。

共通の技術部門やテクニカルリサーチ部門を持たない企業の場合、プロジェクトやチームごとに導入評価が行われます(むしろ、スマホに関してはこちらがマジョリティ)。また、そうした部門がある場合も、実際に「使いたい!」というご要望を頂くのは、プロジェクトからの場合が多いです。

いずれの場合も、実は、判断基準は同じです。その企業にとって、ROIがどれだけ高いかどうか。ROIの判断基準そのものは、もちろん企業や製品の種類などによって、異なります。

ちなみにCRIの場合、このROIの判断をより行いやすくするため、先日思い切った料金改定を行っています。“成功支援”という観点から「2,700万円以下の月商のアプリからは使用料を頂かない」というプランをご提案しています。さらに、どれだけビジネスが成功しても定額料金!という、青天井ではない料金体系を採用しているので、導入にあたっての社内調整はずいぶんしやすいミドルウェアではないかと自負しております(笑。

詳しくは『【ありブラ vol.11】「CRIWARE」を正しく発音できますか?』をご参考ください。

信頼性と実績



ミドルウェアやゲームエンジンは、一般的に「ブラックボックス」として提供されます(これは、当ブログの語源のひとつにもなっています)。

一部の製品は、別料金や別契約によってソースコードの提供を受けられる場合もありますが、ほとんどの場合はブラックボックスとしてのランタイム、データエディットのためのツールという形で提供され、「API」と呼ばれるインタフェースを介して、必要な機能をアプリ上に実装する仕組みです。

ブラックボックスであるがゆえに、その導入実績や信頼性は、とても重要な判断材料になります。

数が全てではありませんが、やはりたくさんのアプリに使われている技術は「バグが枯れている」ので、安心して使うことができます。CRIの場合、だいたい年間300タイトルのアプリに使って頂いているので、毎日どこかの会社のマスターアップにお付き合いしている計算になります。そうしたサポート実績が日々、製品にフィードバックされ積み重なっていくというわけです。

「信頼性」という言葉は少し抽象的なので、もう少し具体的に挙げてみると、

・導入実績(累積数、最近の事例、導入技術の種類、等)
・導入タイトルの傾向(ジャンルや導入企業、同時利用しているゲームエンジンの種類、等)
・提供企業の規模、経営状態
・サポート体制(レスポンス速度、海外の技術の場合はとくにドメスティックな技術サポートの有無)
・ドキュメントの充実度、言語、チュートリアルやサンプルコードの有無
・OSアップデート等への対応スピード


etc...

といったところが代表的な評価ポイントになります。

開発者向けセミナーやカンファレンス、展示会、勉強会などに、積極的に出展/参加しているベンダーは、それだけ情報提供や開発者への啓蒙活動に積極的な姿勢があるということなので、指標のひとつとなるでしょう。


▲CRIのウェブで公開中の「採用タイトル」リスト(8/19時点)

自社開発体制とのマッチング(フィッティング)



実は、今回のエントリの本題は、この3番目のポイント、「自社開発体制とのマッチング(フィッティング)」です。

冒頭でもご紹介したとおり、

「導入したいけど、使いこなせるか心配」
「使いこなせるエンジニアが今はいない」
「活用するための教育や初期研修が大変」


こうした不安を抱える企業は、実は少なくありません。

でも、いつかは乗り越えなければならない「壁(導入障壁)」でもあります。

デファクト・スタンダードになってからの導入では、市場競争のなかで後れをとることにもなりかねません。かといって、導入事例の少ないミドルウェアは「一緒にミドルウェア製品開発をしていく」ぐらいの覚悟が必要です。

CRIの場合、おかげさまで導入事例も急増しており、サポートのノウハウも長年の蓄積があるので一定の信頼を頂いております。それでも、現在の自社の開発体制にフィットするかどうかを心配されるケースがあります。それぞれの企業やプロジェクトに対して、どのようにCRIWAREが活用できるか?という個別のご提案を依頼されることもあります。

初めてミドルウェアを導入する場合、社内のエンジニアがそれを使いこなすための手法としては、

・評価版SDKの試用による評価、チュートリアルやサンプルコード
・テクニカルサポートの活用

・開発者コミュニティ(同じ製品を使っているエンジニア同士のSNSなど)
・セミナーやイベントへの参加(自社開催や共催のもの)
・一般販売されている参考書籍(無い製品もあります)

・自社内でのセミナー(研修)実施依頼


などがあります。

即戦力/即導入という意味では、そのミドルウェアをすでに使いこなせるエンジニアを中途採用してくる、という手もあったりします。実際、Unityの普及が急加速した際は、エンジニア系求人サイトが「Unityエンジニア急募」という告知でいっぱいになったことがあります。

ちなみに当社の場合、CS機時代にミドルウェアを愛用して頂いたエンジニアの方が、スマホアプリやソーシャルゲームの開発企業に転職されて(もしくはそうした部門に異動されて)、スマホでも使いたい!とお声掛け頂くケースも非常に多いです。

スマホアプリの開発も、ここ最近の競争激化と加速するリッチ化によって、より大規模開発化が進んでいます。その結果、チームの人員数も増え、分業化も進み、外注の積極活用も目立ってきています。

そういう意味では、ミドルウェアの初期導入から本格活用までの流れも、より計画的に、戦略的に、段階的に、行う必要があります。またその手法は、現在の開発体制によって異なってきます。


▲ROIを高めるための「段階的なミドルウェア導入」とは?

次号では、この自社に合った「段階的なミドルウェア導入」をどうやって実現すれば良いのか?、その具体的な内容を、サウンド系ミドルウェアである『ADX2』を例に、ご紹介したいと思います。ご期待ください。


…さて、今週の「ありブラ」はここまで。
それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

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幅朝徳(はば とものり)

株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。ゲーム企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュース等も行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。最近は、ウェアラブルやIoTといった領域での新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当、業界の枠組みを超えた協業、世の中にとって全く新しい付加価値の実現のために日々奮闘中。

趣味は、クロースアップマジックと陶芸、映画鑑賞とドライブ、鳥類/フクロモモンガ/爬虫類の飼育、そしてもちろん、ゲーム。デジタルガジェット大好きなギーク。

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《幅朝徳》

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