ゲームの民主化の功罪も 2013年新春「次世代型ゲーム開発論」・・・黒川塾(伍)レポート | GameBusiness.jp

ゲームの民主化の功罪も 2013年新春「次世代型ゲーム開発論」・・・黒川塾(伍)レポート

1月11日、エンタテインメントの未来を考える会の「黒川塾(伍)」が開催されました。「黒川塾」は、セガ、デジキューブ、ブシロード、NHNJapanなどを遍歴してきた黒川文雄氏がナビゲートするエンターテイメントの未来を考えるイベント。会を重ねることにより、確実に認

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1月11日、エンタテインメントの未来を考える会の「黒川塾(伍)」が開催されました。「黒川塾」は、セガ、デジキューブ、ブシロード、NHNJapanなどを遍歴してきた黒川文雄氏がナビゲートするエンターテイメントの未来を考えるイベント。会を重ねることにより、確実に認
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1月11日、エンタテインメントの未来を考える会の「黒川塾(伍)」が開催されました。「黒川塾」は、セガ、デジキューブ、ブシロード、NHNJapanなどを遍歴してきた黒川文雄氏がナビゲートするエンターテイメントの未来を考えるイベント。会を重ねることにより、確実に認知度が高まっており、会場には早い時間から参加者が集いました。

新年一発目のテーマは「次世代型ゲーム開発論」。2012年はソーシャルゲームを中心にスマートフォンでのゲームが大きく成長した年でしたが、マルチプラットフォーム化するゲーム業界の世界で次世代的なゲーム開発の在り方について著名な業界人たちが話し合いました。

5回目となったイベント主宰の黒川氏


登壇者は黒川氏を入れて5名。イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役のやまもといちろう氏は、数多くのゲーム開発・運営にたずさわりながらもブロガーとしても有名な論客。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの日本担当ディレクターの大前広樹氏は急成長するゲームエンジン、Unityのエヴァンジェリスト。NHN Japanスマートフォンゲーム制作室長の馬場一明氏は現在、そのUnityでLINE向けのゲームを開発中。そして、黒川塾では常連となったゲームクリエイターの飯田和敏氏は、近日、LINE向けゲーム『イージーダイバー』がリリースされる予定です。

イベントのテーマは「次世代型ゲーム開発論」というものでしたが、「新春放談」と題されたとおり、サプライズ発言やゲストが盛りだくさん。未公開ゲームの発表などもあり、予定外の展開が数多く、これまで以上にダイナミックかつ熱い展開のイベントになりました。特に辛口なコメントで知られるやまもといちろう氏は、序盤から飛ばしに飛ばした発言を連発。大いに会場をわかせました。

■序盤からテンションの高い登壇者たち

さて、「あけましておめでとうございます」という黒川氏の元気な挨拶で幕を開けた第5回。まずは登壇者の自己紹介が行われました。先陣を切ったやまもといちろう氏はいきなり、「ゲーム開発の炎上案件の火消しを専門でやっております」と飛ばした発言。さらにUnityの大前氏を前にしながら、「Unityを採用したから大丈夫だという案件が危なくて危なくて」と大胆な発言で一気に会場の雰囲気をヒートアップさせました。

次にUnityのエヴァンジェリスト大前広樹氏は、これまであまり語られて来なかったUnityとの出会いを説明しました。元フロム・ソフトウェアの大前氏はPC3やXbox360などのマルチプラットフォーム向けのゲームエンジンの制作を手がけていました。その後、2009年に独立してiOS向けのゲーム開発に取り組みます。その時に使っていたゲームエンジンがUnityです。

しかしながら、独立してのゲーム開発は上手くいかず、一時は「自殺しようか(笑)」と考えたそうです。そんな折に、Unityの社長David Helgason氏が来日することになり、またUnityのユーザーが少なかった日本で大前氏に「良い通訳者を教えてくれ」とアプローチしたそうです。大前氏は友人を紹介するも、「お前の方がいい」と言われ、結局そこからUnityエヴァンジェリストのキャリアがスタートしたといいます。

一方、馬場一明氏はNHN Japanスマートフォンゲーム制作室長として現在、Unityを使用してゲームを開発中。国内の登録ユーザー数が4000万人を突破した無料通話・メッセンジャーアプリLINEのコンテンツも手がけています。

同じくUnityを使いながら、LINE向けゲームを開発している飯田和敏氏は、『イージーダイバー」のテーマ曲を初公開しました。飯田氏自身がギターを弾いた楽曲は歌謡曲風の独特なもので、タイトルである『イージーダイバー』を連呼するもの。近日、LINE GAMEとしてサービスインする予定です。

また飯田氏は「黒川塾(参)」で「イージーダイバーは初日、1000万ダウンロードする」と宣言。その根拠として「海」をテーマとした本作は日本の「寿司ユーザー」の心を捕らえることを主張し、パズル&ドラゴンズを大ヒットさせたガンホーの山本大介氏のお墨付きだと述べました。

イレギュラーズアンドパートナーズのやまもと氏Unityエヴァンジェリストの大前氏
NHN Japanの馬場氏ゲームクリエイターの飯田氏


■「ゲーム開発の民主化」を目指すUnity
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異常なテンションで幕を開けた自己紹介ですが、黒川氏は今回の趣旨を確認しました。黒川氏によれば、多くのゲーム開発や運営の案件に携わってきたやまもと氏を呼びたくて今回の「次世代型ゲーム開発論」というテーマを設定したといいます。そこでUnityの大前氏に実際に新しいゲーム制作の形を提示してもらい、さらに実際にUnityを使用した事例を馬場氏や飯田氏に説明してもらいたかったとそうです。

それに対して、やまもと氏は「どこまで話していいの?例えば、某社が潰れそうだとか?」とまたもや爆弾発言。会場のテンションが再び跳ね上がったところで、大前氏が「立て直しのため(笑)」とゲームエンジンであるUnityを紹介するプレゼンテーションを始めました。

Unityの制作画面も紹介Unityの生い立ちから語られた


既にかなり浸透しているUnityについて、改めて説明する必要はないかもしれませんが、大前氏はニコニコ生放送を見ている一般の方々向けにも、分かりやすい説明を行いました。Unityはゲームの開発環境と実行環境を合わせたゲームの統合開発環境であり、ゲームを実際に動かしながら開発を行えることが特徴です。マルチプラットフォームに対応しているため、ビルドを行えば、iOSやAndroidなどのスマートフォンからXbox360やPS3やWiiUなどのコンソール機でゲームが動かせます。

また大前氏は実際のUnityの編集画面を実演しながら説明しました。デモであるカーレースゲームを実行し、途中で止めて、車のカラーリングやテクスチャーを変更しようとすると、自動的にPhotoshopが立ち上がります。さらに編集を「コントロールZ」でアンドゥして取り消すことも可能。

これまでのゲーム開発では、扱うデータが多様であるため、クオリティを高めるゲームプレイのトライ・アンド・エラーを十分に行えなかったといいます。それに対して、Unityは開発段階でもプレイアブルなゲームのトライ・アンド・エラーを行なうことがメリットだと大前氏は説明しました。また開発のためのワークフローがプロジェクトごとにカスタムメイドであったため、ゲーム作りのノウハウが集積できなかったことを、Unityは解消したと大前氏は説明します。

そのようなUnityを開発するユニティ・テクノロジーズの社是は「ゲーム開発を民主化する」というものです。もともと、デンマークでゲームを開発していたOver The Edge Entertainmentという会社が元になり、創業されました。彼らはゲーム開発に取り組むも成功に至らず、代わりに開発していたゲームエンジンを普及させる道を選びました。

ゲームエンジンの提供によって「ゲーム開発を民主化する」といいうユニティ・テクノロジーズは、当初はベンチャーキャピタルからも相手にされず、3名の創業者たちは貧乏生活の中で開発を行なってきたそうです。2007年にサンフランシスコで行われたUnityのイベント「Unite」では、社長David Helgason氏は参加者たちに用意したケータリングの支払いができず、3日間、現地の留置場に入れられたというエピソードを大前氏は紹介しました。

スマートフォンの普及も手伝い、現在のUnityは爆発的に成長しています。特にアジア圏での成長が目覚ましいといいます。日本では2010年から2012年の間に4800%の成長という驚異的な成長を見せたといいます。これに対して、やまもと氏はUnityが普及している現状を皮肉り、「今、アジア圏ではUnity奴隷という人々がいる」と冗談を述べる場面もありました。

ビジネスモデルとしては無料版を提供すると共に、有料のプレミアム版を販売するというフリーミアムを採用しています。そのため、無料版の使用では大規模なユーザー・コミュニティによる助け合いによるサポートが特徴となっています。一方、有料版には公式の手厚いサポートがあるといいます。

また昨年、発売された任天堂のWiiUにも対応しています。任天堂は今後、小規模開発者を呼び込む意気込みが強く、大前氏としても今年はWiiUのサポートに力を入れるそうです。その他、既にスマートフォンではバンダイナムコゲームス、セガ、グリー、コナミなどの大手パブリッシャーから、アプリのレビューサイトからスタートしたベンチャー企業のAppBankなどがUnityを採用しています。

■未発表ゲームのデモも公開

大前氏のプレゼンテーションの後、黒川氏はUnityを実際に使用している馬場氏と飯田氏にコメントを求めました。馬場氏は3Dでゲームを開発するなら、Unityの利便性は高いと述べ、実際に開発している未発表のゲームを初披露しました。また飯田氏もLINE向けにリリース予定の『イージーダイバー』をUnityで開発しており、その場面をイラストレーターの納口龍司氏と共に会場だけに披露しました。予定外の未発表のゲームのデモンストレーションが立て続けに行われ、会場は熱気に包まれました。

未発表のゲームも紹介された


飯田氏は、Unityを採用する際に決め手になったポイントとして、さきほど大前氏が説明したユーザー・サポートを行なうコミュニティの存在を挙げています。そして、これからのゲームエンジンは、コミュニティの永続的な運営が重要ではないかと提起しました。さらに、Unityがきっかけとなって日本のゲーム業界の風通しの良さは促進していったと述べています。

それに対して、大前氏は日本のゲーム業界の風通し自体は、Unity以前から良くなっていると付け加えました。10年くらい前からCEDECなどのカンファレンスで積極的な技術発表が行われ、その潮流に現在のUnityが上手く乗れたと振り返っています。また、アメリカの高校生がUnityで開発したゲームを大ヒットさせた事例や海外のインディーゲームなどを紹介し、現在のゲーム業界はクリエイターが自由に創造性を発揮できる土壌になりつつあると説明しました。

その一例として、飯田氏は自身が講師を務めるデジタルハリウッドの学生を紹介しました。飯田氏によれば、彼はこれまでどのようなゲームを作りたいのかを上手く具体化することができなかったといいます。ところが、去年の夏くらいからUnityでゲーム開発を始め、現在、卒業制作のゲームを開発中です。彼はプログラマーやグラフィッカーの経験はなかったそうですが、会場で披露されたデモはプレアイブルな形で具体化されていました。

それを受けて大前氏は、実はゲームを作りたいという人間が何を作りたいかはっきりしないという状況は多々あると述べています。そして、そのような漠然とした構想をいち早くプレアイブルな形で具体化するために、Unityは効果を発揮すると主張しました。

実際に会場で披露されたデモに対して、やまもと氏や馬場氏は「もっとバイオレンス感があっても良いのでは」、「レベルデザインはまだできていない」などというコメントを入れました。このように、作り手側から見れば、未完成な状態でフィードバックが得られるのは非常に魅力的に映ります。

■ゲーム開発の民主化の負の影響
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ここまでは、Unityのもたらしたメリットについて多くの事例が紹介されました。しかしながら、イベントの最後には、それがもたらす負の影響について議論が移りました。大前氏によれば、WiiUなどの大手のコンソール機がUnityに対応し、多くのパブリッシャーがスマートフォンなどでUnityを採用していく現状を好ましく思う反面、『HALO』や『BAYONETTA』といった大型タイトルをリリースしていくためには、Unityは問題の解決にはなっていないと率直に述べています。

また、やまもと氏は「Unityを採用したからといって、プロジェクトが安泰かといえばそうではない」と主張し、そもそもクリエイター側がUnityというツールに頼っていくことに対して批判的なコメントを寄せました。Unityが普及することに対するやまもと氏の批判点は、大きくまとめると、これまでゲーム産業が行なってきた基礎研究が停滞すること、Unityというツールを超えたクリエイティビティの発揮場所が減ることなどです。さらに、これまでのゲーム開発者が持っていたスキルがUnityによって陳腐化し、Unityだけを使用するような「Unity使い」のような人材で溢れてしまうという点も指摘しました。

それに対して、大前氏はプログラマーの立場から、Unityを使用する際も、技術的なスキルはまだまだ有用であると応答しました。そして、Unityを使えるというだけでは、決して面白いゲームが完成することはないと述べています。

やまもと氏はさらに、「失敗するUnityを採用したプロジェクト」には典型例があると指摘しています。それはパブリッシャー側がUnityを使用することによって期待するゲームのクオリティを高く見積もり、Unityを使える人員を集めプロジェクトを発注するも、現場での作業が予定通りに運ばず、失敗するという事例です。

そのような失敗例に対して、大前氏はそのようなUnityを使用することを前提とした受注開発の方法それ自体がモデルとして間違っていると指摘します。これまでの受注開発は、1つのプロジェクトを請け負った会社が自らのクリエイティビティを発揮して、ゲームのクオリティを向上させるという面もありました。しかしながら、Unityを採用するということが開発のプロジェクトにおける「上げ底」として機能してしまっては、本末転倒であるため、やめたほうがいいと主張します。

このようなトップダウン型のUnityの採用を批判しつつも、大前氏はUnityの基本的な思想を「使う人のクリエイティビティを信用している」と説明します。つまり、トップダウンではなく、ボトムアップな形で現場の人間がUnityを採用することを決め、クリエイティビティを発揮するのがUnityの基本思想というわけです。

さらに議論はゲーム作りのクリエイティビティという本質的な部分にも踏み込みました。やまもと氏は、たとえゲームエンジンなどのツールによってゲーム開発の敷居が下がっても、結局、面白いゲームを作れる人はほとんどいないと主張しました。そして、ツールの普及によってリリースされるゲームが大量になっても、その中で成功するゲームは少数であり、ビジネスとして成立させるには、プラットフォームを握るか、多額のプロモーションをかけてコンテンツを売るかの二択になると述べています。

それに対して、大前氏は「ランチェスター戦略」のようにニッチ市場を獲得していく方向性もありうると主張しましたが、やまもと氏はそれでは企業としてはスケールしないと応答しました。そして、実際にiOSやAndroidなどの市場でもどんどん次のプロジェクトを成立させるためのセールスボーダーが上がっていることを指摘しました。その一方で、ゲーム開発に参入する人が増え、市場にクオリティが低いゲームが蔓延することにもなります。

いよいよ議論がゲーム産業の本質的な部分に入りましたが、残念ながら時間のため、トークイベントは終了となりました。個人的には、Unityが目指す「ゲーム開発の民主化」は単なるモットーではなく、コンテンツ産業の必然的な発展だと考えています。音楽産業において、コンテンツ制作レイヤーが小規模化していき、今や誰でも音楽制作が可能になったのと同様、ゲーム産業の制作レイヤーが小規模化していくのは必然的な流れだと思います。その結果、コンテンツの数が爆発的に増え、市場にクオリティの低いコンテンツがあふれるのは過渡期であり、その後は有望なコンテンツにいかに投資を行なっていくかが課題だと思われます。

イベントは話半ばで終わってしまいましたが、やまもと氏の爆弾発言の数々、馬場氏や飯田氏の開発するゲームの初披露など見どころが多く、黒川塾史上もっとも盛り上がった会であったと思います。参加者数もほぼ満員で、懇親会では登壇者たちに質問者の列ができるほどの盛り上がりを見せました。

《今井晋》

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