『マリオ』がスマホへ…任天堂のプラットフォーム再定義とは【Re:エンタメ創世記】 | GameBusiness.jp

『マリオ』がスマホへ…任天堂のプラットフォーム再定義とは【Re:エンタメ創世記】

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『マリオ』がスマホへ…任天堂のプラットフォーム再定義とは【Re:エンタメ創世記】
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9月7日(日本時間9月8日)に、アップルがiPhoneの新製品発表会を開催しました。

噂が先行した「7」と「7Plus」が一般公開されましたが、本来であれば今回新たに採用されたジャパンカスタムな進化機能である、防水、FeliCa対応などが注目されるべきところですが、それ以上に話題をさらったのが任天堂のマリオキャラクターが使用された『SUPER MARIO RUN(以下:マリオ・ラン)』でした。

サプライズ続きのマリオワールド

先日閉幕したリオ・オリンピックの閉会式での安倍首相のマリオ姿にも驚かされましたが、今回のアップル×マリオの仕掛けにも驚かされてしまいました。

また、ステージでは任天堂の宮本茂取締役が登壇し、ゲームプレイをしながら解説を行うというダブル・サプライズの発表でした。『マリオ・ラン』は、ランゲームの定石的なヨコ持ちではなく、タテ持ちを維持し、ワンフィンガーのタップによる操作性というもので、幅広いユーザーの使用形態を意識したゲーム設計になっている点も優れていると思います。


既にAppStoreには『マリオ・ラン』(配信)予約登録のボタンがあり、任天堂は他のパブリッシャーと異なる別格の熱い扱いを感じさせるものがあります。実際の配信開始は12月と言われていますが、サイト上では「間もなく配信開始となります。配信開始となった時点で通知を希望されますか?」となっており、実際には12月よりも早く始まるのかも…?と熱い期待を感じずにはいられません。

岩田ビジョンの任天堂的一子相伝

ちなみにその後、任天堂の公式ツイッターでは『ファイアーエムブレム』『どうぶつの森』も2017年の3月までに連続的にリリースされる情報も公開されています。任天堂が構築してきたスマホ向けの戦略と戦術がここに結集したと言っても過言ではないでしょう。

ここで思い出されるのが、昨年7月に急逝した任天堂の岩田聡元社長のビジョンと発言です。

今回の発表を受けて、様々な意見が上がっているように思いますが、未来を見つめるエンタメ企業としてあるべき姿を選択したというのが正しい見方ではないでしょうか。

もちろん、後に控える任天堂の新型家庭用ゲームマシン「NX」(開発コードネーム)への位置付けやコンテンツ的な懸念があることは否定できませんが、岩田氏も専用機、スマートデバイスそれぞれのスタイルに併せて別のゲームをつくることになると発言していました。

つまり、「NX」ならではのコンテンツ開発や適正化が行われていると思っていいでしょう。「NX」に象徴される家庭用ゲーム機とスマホとの遊び方の差別化も近いうちに明らかになるのと思います。

岩田氏の発言を紐解く


今回の『マリオ・ラン』の発表は、2015年3月17日の任天堂とDeNA社の業務・資本提携共同記者発表の席で岩田氏が発表した内容が具現化したもので、当時の発言のなかでも注目すべきものを任天堂の公式サイトの記録(質疑応答)から抜粋すると下記のように内容になります。

「任天堂IPの映像コンテンツ化や、さまざまなキャラクター商品化など、様々な伝達手段を柔軟に活用して、任天堂IPの価値を最大化させていく取り組みが進行中です」

「IPが同じであるからといって、ゲーム専用機向けのタイトルをそのままスマートデバイスに移植することはしません。(中略)…最高のプレイ体験をお届けできないのであれば、任天堂IPの価値に傷が付くだけにしかならないと考えているためです」

(すべて岩田氏の発言より)

おそらく、岩田氏の発言通り、元のIPを活用しつつも、スマホをポータルとしたそれぞれに適切なアレンジが施されたコンテンツとして開発されたものが今回の「マリオ・ラン」です。

また、直接的な任天堂プロジェクトでは無いものの、導入済のグーグル傘下のナイアンティック社とポケモンカンパニーの共同企画である『ポケモンGO』が導入されたことは記憶に新しい。すでにリリースからわずか60日で売り上げは5億ドルに達しました。

任天堂のプラットフォームの再定義

特筆すべきは、DeNA社との共同発表から一年ちょっとで、グーグルとアップルという2つの巨大ポータルへの参入を実現しました。今回のアップルとの取組みに依り任天堂のスマホ対応も含めた全方位体制は盤石なものになると思います。

スマホでの展開がここまで徹底した展開を行うことを鑑みると、岩田氏は任天堂のプラットフォームの再定義として、こう発言しています。

「最後に、両社の協業を始める上での、私の抱負をお話ししておきます。ひとつは、スマートデバイスで成功されているコンテンツ供給者さんは、単一のヒットタイトルに依存している構造になっていることがほとんどですが、我々が任天堂IPを活用して取り組む以上は、スマートデバイスで早期に複数のヒットタイトルを生み出せるようにしたいということがあります。もうひとつは、従来のゲーム専用機のプラットフォームの定義がデバイス単位だったことに対し、世の中に広く普及しているスマートデバイスやPCを取り込み、ゲーム専用機とスマートデバイスという複数のデバイスを統合して、より多くのお客様に私たちのつくるソフトをより的確にお届けしたいということです。これは、いわば、任天堂のプラットフォームの再定義への取り組みです。DeNAさんという、任天堂とは異なる強みを持つパートナーとの協業で、これをより早期に実現することを私は目指しています」

『マリオ・ラン』に関して言えば、任天堂がコンテンツの企画開発を行い、DeNAが運営を行うという報道があります。こちらに関しても岩田氏の発言を踏襲したものになっており、意志が引き継がれたものになっています。

グーグルとアップルへの定義とコンテンツのリセッション


そして、先に述べたナイアンティック(グーグル)とのプロジェクトは任天堂直轄のプロジェクトでは無いにしても、任天堂のスマホ戦略の一環として大きな一手と評価できます。

そして今回はアップルとの取組みを、これ以上ない展開で発表を行いました。世界を二分するスマートフォンのポータルそれぞれに適切かつ合理的な棲み分けを行ったことは恐るべきIPの力と、それを押し通す任天堂のエンタテインメントのポテンシャルを感じます。

ゲームやコンテンツというエンタテインメント世界の面白さと怖さを同じ瞬間に感じることのできる今回の発表ですが、ここまでの展開を任天堂、アップル、グーグルが行うということは、それ以外にとっては大きな脅威であり、別の意味では新しいコンテンツの在り方を模索する良い機会になるかも知れません。これに依ってまたスマホコンテンツの世界のリセッションすることになるでしょう。

それはまさに岩田氏が望んだ「任天堂のプラットフォームの再定義」の取り組みであるとともに「ゲーム業界全体にとっての再定義」になるのではないでしょうか。

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著者: 黒川文雄(くろかわふみお)
プロフィール: 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。

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《黒川文雄》

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