勝者なき中の消耗戦?―第5次ゲーム産業革命へ【Re:エンタメ創世記】 | GameBusiness.jp

勝者なき中の消耗戦?―第5次ゲーム産業革命へ【Re:エンタメ創世記】

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勝者なき中の消耗戦?―第5次ゲーム産業革命へ【Re:エンタメ創世記】
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ゲームの遺産

埼玉県川口市、SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザで開催中の「あそぶ!ゲーム展 ステージ2:ゲームセンターVSファミコン」を見学した。(~2017年3月12日まで開催)

今回の展示は1983年から1990年までのデジタルゲームを網羅したもので、私の年齢で言えば新社会人(23歳)になったばかりで、大学生という緩い縛りの時代から徐々に社会や会社という生きていくことの現実感を味わった時期だ。そんな時間を供に過ごしたエンタテインメントとして心に残るものが多く展示されていたことがとても印象深い。今回も開催期間中にマシンやソフトの入れ替えもあるとのことで、一人でも多くのゲームファン、ゲームと青春を供にした仲間たちに見て、触って、感じてほしい展示会だ。

あそぶ!ゲーム展 ステージ2:ゲームセンターVSファミコン 公式サイト
http://www.skipcity.jp/vm/game2/

東京ゲームショウ2016の活況が意味するもの

そして、9月15日(-18日)からは国内外の最新ゲーム・エンタテインメントが展示される東京ゲームショウ 2016が始まり、総来場者数が過去最多の27万1,224人を記録した。おそらく発売間近のPlayStation VR(10月13日発売)や各社のVR対応コンテンツ、年末年始に向けての話題作品が重なった結果、来場者自身がゲームの歴史の証人になっておきたかったということかもしれない。

いうなれば「VR元年」、悪く言えば「VRバブル元年」つまり、急速な盛り上がりは、急速な盛り下がりを招く恐れもあることを認識しておかなければならないだろう。

VRエンタテインメントは次世代を担うコンテンツやエクスペリエンス(体験)になることは間違いないが、成長し、昇華し、成熟するまでには時間を要するだろう。その間にはドロップアウトするコンテンツや会社もあるだろう。要は自然にそれを使いこなすというコンテンツと環境が伴ったときに単なるブームを越えた定着に至るのではないだろうか。


東京ゲームショウ SIEブース

デジタルゲームの誕生

先の「あそぶ!ゲーム展 ステージ2:ゲームセンターVSファミコン」で注目すべきポイントはゲームエンタテインメントが家庭に導入されたというタイミングだ。それまでのライフスタイルのなかでデジタルゲームは外で遊ぶエンタテインメントだったということだ。それにはいくつか理由はあるが、アミューズメント施設(いわばゲームセンター)は、遊園地的な遊びの簡易的な体験スペースであり、マシン(機材)やテクノロジー(演出装置)の関係で大きな場所を必要とした、さらにはそれには大きな資本力が必要だった関係である程度の規模の会社が展開することが定石だったことが挙げられる。

諸説あるが、デジタルゲームに誕生は、1962年、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生だった、スティーブ・ラッセルがDEC社の大型コンピュータPDP-1を用いて開発した「スペースウォー!」と言われている。しかしながら、このテクノロジーは大学の大きな汎用コンピュータをフル稼働処理していたもので商用には程遠かった

ゲームの産業革命を経て

しかし、その後、アタリの共同創業者であるノーラン・ブシュネル氏が商業用のゲームマシンを開発したことが、デジタルゲームというジャンルにおける第1次産業革命が始まったと私は位置づけている。ブッシュネル氏は、ラッセルの「スペースウォー!」をヒントに世界初の業務用(ゲームセンター用)ゲーム「コンピュータースペース」を開発した。その後、他社が開発したテニスゲームをモチーフにした「PONG(ポン)」を開発。

この「PONG」はテニスゲームやピンポンなどのテーブルスポーツをアイディアベースにしたもので、様々な点で改良が施され、多くのプレイヤーを魅了し、同時に創業したばかりのアタリを躍進させる大きな燃料となった。その後、アタリは家庭用ゲーム機も開発し、業務用、ともに大きなビジネスの柱になったはずだったが、粗製乱造と家庭用ゲーム機の寿命を読み違えて北米のデジタルゲーム市場は崩壊したと言われている。通称「アタリ ショック」は1983年だった。


「ATARI GAME OVER」DVDよりノーラン・ブッシュネル氏

ゲームビジネスはお茶の間を目指す

アタリショックの後に、日本のゲーム会社の躍進が始まる。ゲームソフトのクオリティ管理を徹底し、選ばれたソフトを供給し成功した会社が任天堂であり、ファミリーコンピュータ(1983年7月15日発売)の時代が来る。ゲームをもっと身近に、お茶の間のエンタテインメントとして席巻した時代=任天堂が長期政権を維持した時代が第2次ゲーム産業革命である。しかし、1990年代の前半には、ハードウェアの進化を求められた家庭用ゲーム機に新しい産業革命が起こる。それが、アーケード(ゲームセンター)ゲームなどで最先端のハードウェアや最新の3DCGをゲームに取り入れたコンテンツの登場で、セガから「セガサターン」、ウォークマンなど先鋭的なプロダクトを数多くプロデュースしてきたソニーの(任天堂との共同開発ゲームハード開発プロジェクトが頓挫したために自社で発売導入までこぎつけた)「プレイステーション」が市場に投入された。

1994年・ゲーム機次世代戦争は第3次ゲーム産業革命だ

これが一般的に言われる1994年の「ゲーム機次世代戦争」。この2社の参入によって、ゲームが従来のドット絵から、リアルなコンピュータグラフィックスに変貌し3次元のキャラクターに進化を遂げ、流麗なグラフィックの世界観を提供できるようになり、従来よりも多くのユーザーを獲得することが実現した。また、この時期には、従来のゲームクリエイター以外の新しい才能がゲーム開発に参加するようになり、ゲームソフトのジャンルの拡大やプレイ人口の増大を促進したことは言うまでもない。これによって次世代ゲーム機登場と言う「第3次ゲーム産業革命」が実現した。

ネットワークが生んだ第4次ゲーム産業革命

その後、2000前半から中盤にかけては、高次元な家庭用ゲームに加えて、ドコモを中心としたガラケーでの着メロ、着ボイスなどの簡易なコンテンツ販売が促進された。これらは後に、ガラケーでのソーシャルゲームという展開を生み出し、短期間の重課金、親の携帯での子供による課金などの問題のトリガーになる。また同じ時期にはパソコンによるオンライン・ネットワーク・ゲームも活況を呈し、一般生活とは隔離されたゲームのなかで生活する「ゲーム廃人」なども生まれた。これらに共通するものはネットワーク・オンラインという仮想環境であり、従来は一人完結であったエンタテインメントがネットを介して、日本はおろか世界とつながるインタラクションを持ち得た、その時代こそが「第4次ゲーム産業革命」である。

そして、第5次ゲーム産業革命へ

東京ゲームショウ2016に参加された方は理解していただけると思うが、ひとつはスマホのゲームアプリの主権確立であり、もうひとつはVRエンタテインメントの到来だ。スマホの主権はすでに確立済みなのは間違いないがパブリッシャーの固定化がさらにそれらを促進させる。つまりクオリティを平準化させることにより開発費が高騰する、するとある程度の資本力の無い会社は振るい落とされるという流れになっている。また、「ポケモンGO」に象徴されるスマホを介した新しいコミュニケーション・エンタテインメントも誰もが創造出来るものではないが、ゲームが新しい時代のフェイズに入ったことを思わせる。

そしてもう一つが冒頭で紹介したVRエンタテインメントである。これに関しては、10月13日には、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントよりPlayStation VRが発売される。すでにPlayStation 4は全世界で4000万台を販売した家庭用ゲームハードウェアであり、そこで展開されるPS VRは発売前から4000万台を販売するポテンシャルを持っていると言っても過言ではない。

これら、ゲームの核とした新しいエンタテインメントの創造が「第5次ゲーム産業革命」にあたると思われる。


黒川文雄VR体験

勝者なき中の消耗戦に突入か?

さて、第5次ゲーム産業革命において重要なポイントはどちらもライフスタイルの変化を伴っているということだ。スマホは場所を選ばずにアクセスし、好きな時に始めて止められる。VRエンタテインメントはヘッドマウントディスプレイを被ることで、没入感や環境の変化を味わうことができる。どちらも従来型のエンタテインメントと異なる付加価値がそこにある。

ゲーム産業は大きな産業革命を経て、常に新しいエンタテインメントを創造してきた。それはおそらくこれからも変わらないだろう。しかし、産業構造の変革のタイミングとともに、そこで市場を奪い合うパブリッシャーたちは大きく入れ替わって来た。何が勝利で何が敗北なのかは不鮮明で不透明なのがコンテンツの世界の常である。しかし、大きなプロフィットを得る勝者としてよりも、常に時代とともに変わりながら時代のニーズを反映してユーザーに価値観を提供できる視点がある限り、ゲーム産業に新しい産業革命が起こり続けることだろう。できることならば「第6次ゲーム産業革命」を見届けてみたいと思う。


あそぶゲーム展 黒川文雄

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■著者紹介
著者:黒川文雄(くろかわふみお)
プロフィール: 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
《黒川文雄》

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