なぜ親子でeスポーツカフェを作ったのか?「e-sports place MAKUHARI ACE」代表&店長インタビュー | GameBusiness.jp

なぜ親子でeスポーツカフェを作ったのか?「e-sports place MAKUHARI ACE」代表&店長インタビュー

雇用や人材育成など、eスポーツ業界全体の発展を見据えた意気込みが語られました。

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海浜幕張駅から徒歩1分という好立地に、類を見ないほど個性的なeスポーツカフェがオープンしました。

代表の駒澤信一氏と店長の駒澤奨生氏は親子とのこと。息子はeスポーツ専門学校でプロゲーマーを志していた現役eスポーツ世代、父親は運送会社 カインズ・ロジの創業者であり、飲食業の実績もある実業家です。

今回は、その2人に施設の魅力だけではなく「なぜeスポーツカフェを作ったのか」「失敗するeスポーツカフェの条件とは」など、ビジネス観点でのインタビューをしました。

25年の運送業経営、実業家の父親

──本日はよろしくお願いします。今月は立て続けに主要駅の近くにeスポーツカフェがオープンしています。「e-sports place MAKUHARI ACE」ついても海浜幕張駅から徒歩1分の好立地。なぜこのタイミングでeスポーツカフェを作ることになったのでしょうか。

駒澤信一氏(以下、信一代表)タイミング的には少し遅くなってしまったと考えています。本当は2023年の夏にはオープンしようと動いていたのですが、物件探しがスムーズにいかず、今日に至りました。

現在、私は運送会社 カインズ・ロジの代表であり、25年間、運送業を営んできました。近いうちに代表を退いて会長になることを見据えているので、そのための種まきとして、これからの未来を担う分野である、eスポーツに関連した施設を作ることとしました。

──運送業の会社を経営されているとのことですが、ここでeスポーツ事業に参入されたのはどういった経緯があったのでしょうか。

信一代表eスポーツ人口が増えていく中、千葉県にはeスポーツカフェがほとんどありませんでした。私には飲食業の実績があり、当店の店長を担当する息子がeスポーツ関連の知見があるので、それらを合わせて「千葉県にないものを作る」という方針でオープンしました。

息子がeスポーツの専門学校に通っていた頃、最初は私も「eスポーツは(仕事面で)潰しが効かないんじゃないか」「お金にならないんじゃないかな」といろいろと悩んでいました。

正直、(息子には)大学に行って、就職してくれた方がありがたいと思っていたし、最終的にはうちの事業を手伝ってもらうことも考えていました。

ところが、息子からいろいろ話を聞いたり、専門学校にてプロゲーマーの方々や学校の方々とお話をさせていただいて、eスポーツに関する情報を得ていくにつれて、私の中でのeスポーツに対するイメージが変わってきたんです。

プロゲーマーを目指していた息子

──店長さん(息子)にもお伺いしたいのですが、その時のことは覚えていますか。

駒澤奨生氏(以下、奨生店長)私はプロゲーマーを志望して、専門学校でeスポーツを学んでいたのですが、卒業する時期が近づくに連れて「自分がeスポーツにどう関わっていくか」というのが大きな悩みでした。

信一代表現状、eスポーツに関わる仕事は少ないく、私も探してみましたがeスポーツカフェで募集をかけているところも少ないのが現状です。

最近は大手企業さんがeスポーツカフェをオープンしていますが、どこも若手の人材では運営ができておらず、中途採用された社員さんで運営されているのが実情なので、(若手の)就職先がまだまだ少ないと感じました。

そこで「逆に我々が(雇用先を)作っちゃえばいいんじゃないか」と考えて、2年ほどの構想を経て「商売になるかならないかはさておいて、夢がある事業である」と考えて、施設作りに踏み切りました。

他のeスポーツ施設には負けたくないので、しっかりとした大きな箱を構築して、設備も準備してきました。

──雇用の創出や人材育成の側面も想定されているのですね。

信一代表そうですね。アルバイトの従業員たちも仕事中に配信機材の使い方などを学べます。大学生のうちに配信のやり方やイベントの運営方法を学んでおけば、卒業後の就職先の選択肢が広がるでしょう。

ただ単に飲食店のスタッフとして、厨房でご飯作って、お客さんに提供するだけではない、様々な学びをこのeスポーツカフェでは得てもらいます。

──人材育成やマネジメントにかなり力を入れている印象を受けました。ご自身の会社では延べ何名ほどの人材を育成されてきたのでしょうか。

信一代表1,000人は超えていると思います。

参考にしたeスポーツカフェはあるか

──何か他に参考にしたeスポーツカフェがあるのか、それともオリジナルで構想を持って作られたのかというどちらでしょうか。

信一代表いくつか見に行きましたので、良いところは参考にさせていただいています。

しかし、ただ単に真似をしただけではダメなので、私たちが最も力を入れたのが「入り口の入りやすさ」です。多くのeスポーツカフェが「入りづらい」という問題を抱えていると感じました。

この「入りづらさ」がeスポーツ文化の進展に、歯止めをかけてしまっているようにも感じました。そこで私たちは、小さい子からお年寄りまで入れるような環境を作ることを意識しました。

よって当店は、入り口も間口を広くしていて、エレベーターを降りたら「ドン!」と目の前に出てくる配置を徹底しました。

──その他、施設を作るうえで意識されたポイントはどのようなものがありますか。

信一代表稼働率を維持することですね。例えば、eスポーツイベント開催向けの施設として特化させた場合、(主に平日などは)稼働率が高くなりません。

イベントがない時は、パブリックビューイングができるeスポーツバーにすることで稼働率を維持できます。私が飲食店経験があるので、そこでの知見を取り入れました。

様々な用途がある施設にすることで、スタッフも多く働けます。例えば、ゲームミングエリアだけだと、どうしても数名の人員で済んでしまうので、それだけでは私はこの施設を作らなかったでしょう。

やはり、これだけの大きな施設と立地、豊富な飲食メニューを用意して、様々なカテゴリーを合わせて、魅力的な施設として作り上げる必要があると考えました。

私はスポーツが大好きなので、野球、サッカー、格闘技、オリンピックといったスポーツと同様に、スポーツカフェ特有のパブリックビューイング的な要素を全面的に構築する。一方、息子はeスポーツ特有のイベント配信、チーム練習、ゲーミングエリアなどの要素を中心に構築して、上手くマッチングさせました。

将来的には、平日の時間を利用して、教室を開くことも検討しています。eスポーツのコーチングだけでなく、プログラミング教室を開くこともできるでしょう。そういったことも想定して、海浜幕張駅から徒歩1分のアクセスの良い立地にしています。

eスポーツの発展、人材育成、雇用創出

──お話を伺っていると、ただ単にeスポーツ施設を運営するだけではなく、eスポーツの発展、人材育成、教育、雇用の創出など、様々な社会的意義や高い目標があるように思えました。

信一代表「カインズ・ロジ」という社名の由来は「親切な運送会社」なんです。

私は運送業もサービス業の1つだと考えていて、「お客さんが何を考えているか」というのを先に考えないことには「良い商売ができない」ですし、eスポーツカフェにおいても「どれだけ親切に教えてあげられるか」がポイントだと考えています。

目の前の1人のお客さんを大事にしなかったら、大勢のお客さんを大事にできないので「ひとりひとりのお客さんに楽しんでもらう」を当店のコンセプトにしていきます。

──eスポーツカフェのような業態ですと、オペレーション上、細部まで気が回らないところが多くなりがちですが、貴社としては「あくまでサービス業として挑む」気持ちがあるということなんですね。

信一代表そうですね。例えば(eスポーツに詳しくない)お客さんが来店された際、アカウントにログインして、ゲームが起動されるまでは、必ずお客さんには付き添ってあげるというのが私たちの考え方です。

当店のスタッフには研修期間中にしっかりとゲームで遊んでもらっています。自分が体験した事でなければ、お客さんに伝えられないからですね。スタッフに親切に教えてもらえるのであれば、私のような親世代であっても「じゃあ、少しeスポーツをやってみようかな」と思ってくれると考えています。

その際、キーボードとマウスの操作が苦手であるようにお見受けしたら、気を回して「コントローラーを無料で貸し出せること」をお伝えすることもできるでしょう。お客さんに合わせたサービスを提供するべきだと考えています。

そういう世代たちにも「eスポーツの面白さを伝えていく」というスタンスで当店を運営していきます。

失敗するeスポーツカフェの条件とは

──最後にビジネス観点の話を伺いたく。恐らくこれからも、様々な企業がeスポーツカフェの業界に参入してくることが予想されますが「こういうeスポーツカフェをやったら失敗するだろう」というポイントは考えていますか。

信一代表企業としてeスポーツカフェを運営する場合「中途半端な規模感で始める」と失敗のリスクが高くなるといえるでしょう。

私は「2年おきに時代が変化する」と考えているので、それに伴うニーズの変化に対応できる施設として、このeスポーツカフェを設計しました。

勿論、個人店であれば、ワンオペで回せるぐらいの小規模でも良いでしょう。ただ我々のような企業であれば、中途半端な規模感や設備の施設を作ってしまうと、お金を掛けたのにも関わらず、時代やニーズの変化に対応できず、集客もマネタイズも上手くいかず頓挫してしまうでしょう。

例えばゲーミングエリアのみの施設にするのではなく、同施設内にカフェも設営して、お酒も提供できて、個室も作ってチームの練習用にも使ってもらえるようにしておく。さらにはイベントスペースを作って大規模なイベントも開催できるようにする。

あらゆる角度から集客をして、ニーズに応えていかないと、恐らく採算が取れないと思います。

ゲーミングPCの耐久年数は10年も持たないでしょうし、数年経てば良いスペックのPCに更新していく必要があります。定期的に新しい機材に交換するコストが掛かるので、(生半可な収益では)お店が成り立たないんですよ。

スペックの低いゲーミングPCをずっと置いておくと、客足も遠のくでしょう。お金は掛かりますが、そこを妥協するのはダメです。

その辺りは、お客さんの視点を取り込むためにも、(現役世代である)息子にも意見を聞きました。お互いの視点や知識を共有して、一緒に作り上げたお店ですね。

──店長である奨生さんからは、どういった視点を共有されましたか。

奨生店長シニアの方だったり、普段ゲームをしない方にもeスポーツが広がっていってほしいと考えています。

私から強く提案したのは、パブリックビューイング用のモニターの大きさと数ですね。他のeスポーツカフェでは、遠くからだとモニターが見えないことがあるんです。

当店では、どの角度からでもモニターが見える状態になっており、これは他のeスポーツカフェでは珍しいことです。eスポーツに限らず、通常のスポーツ観戦も楽しめるようにする予定です。

シニアの方々や親御さんについては、必ずしも「eスポーツをやる」だけはなく「eスポーツを観戦する」という形でも楽しんでいただきたいんです。

信一代表それこそゲーマーの子供を持ってる親御さん達って、「夜遅くまでずっとゲームしててうるさい」ということもやはりあると思うんです。私も息子が夜中にeスポーツを練習していて「うるせえな」と思いました(笑)。

──貴重なお話ありがとうございました。1つの施設内に多種多様なエリアを作り、時代の変換に臨機応変に対応するという戦略が大変、勉強になりました。ちなみに「2年おきに時代が変わる」と仰っていましたが、今は特にどのセクションが流行っている時代だとお考えでしょうか。

信一代表いま最もニーズがあるのはゲーミングフロアです。今後はカフェや配信の需要も増えてくる可能性があります。eスポーツカフェの中でも、カフェに力を入れてるところは少ないです。

奨生店長ゲーマーの中にはご飯も食べないで長時間プレイする方が結構いらっしゃるので、どうしても不健康というイメージがあるんですよね、そういった否定的なイメージを払拭する意図もあって、当店では食べ物には力を入れています。

信一代表悪いイメージを払拭するのも、これからeスポーツを広めるという観点でも大事な部分ですね。

子どもたちがゲームをやっている間に、お父さんとお母さんはカフェスペースでお茶やビールを飲んで待っているというスタイルでも良いと思います。そしてたまにお父さんが子どものゲームやっているところを見に行って、ゲームについて教えてもらうなど、家族内のコミュニケーションのきっかけにもなってほしいですね。

ちなみにこの辺りは千葉ロッテマリーンズの本拠地なのですが、スポーツバーが1軒しかなくて、イベントがあるときはいつも混んでいます。スポーツを観戦するときは小さい画面で見るより、うちにあるような大迫力の大きな画面で見た方が面白いので、それも当店のウリだと思います。

取材後記

今回の取材を通じて、単にeスポーツカフェを運営するのではなく「eスポーツ業界の雇用の創出」「eスポーツ人材の育成」「eスポーツ業界の発展」など、多くの使命を掲げているように見受けられました。

また施設内の「ビジネスとして成立させるための様々な仕掛け」についても目から鱗でした。

40席のゲーミングエリア、チーム練習ができる個室、配信設備の整ったステージ、平日には野球やサッカーも見られるパブリックビューイング、飲食を楽しめるカフェエリア。時代の変化にも対応するべく、網羅的に設けられた5つのセクションは、必ずどこかの客層に刺さることでしょう。


《Ogawa Shota》

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