「ホロライブ」運営のカバー社初の海外拠点「COVER USA」が7月より始動―谷郷社長がめざす“徹底したローカライズ”とは【発表会レポート】 | GameBusiness.jp

「ホロライブ」運営のカバー社初の海外拠点「COVER USA」が7月より始動―谷郷社長がめざす“徹底したローカライズ”とは【発表会レポート】

これまでも海外展開に力を入れてきたカバーが自社初となる海外拠点を設立。これまでと何が違い、どのような展開が期待できるのか? 谷郷元昭CEOがファンへ向けてメッセージを発信しました。

企業動向 発表
(C) 2016 COVER Corp.
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2024年3月12日、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバーが自社初となる海外拠点の設立を発表しました。その第一歩となるのはアメリカ・カリフォルニアに誕生する「COVER USA, Inc.」。代表取締役はYAGOOの愛称でファンにもタレントにも人気の谷郷元昭氏です。

海外にも拠点を作ることで徹底したローカライズを目指すとのことですが、はたして設立の経緯、その目的、なによりファンやタレントのメリットとはどのようなものがあるのでしょうか?

マスコミ向け発表会の質疑応答のコーナーで谷郷氏が語ったファンへのメッセージとともにお伝えします。

カバー株式会社 代表取締役社長CEO 谷郷元昭(たにごう もとあき)氏。「COVER USA」でも代表取締役を務めます

徹底したローカライズを

カバー所属のVTuberといえば、女性VTuberグループ「ホロライブ」、男性VTuberグループ「ホロスターズ」あわせて約90名。

そのうちおもに国内を拠点とする、いわゆる「JP組」と呼ばれるタレントに加え、英語圏で活躍する「EN組」、インドネシア圏で活躍する「ID組」など、もともとグローバルに展開していました。

海外組の中には、日本に拠点を構えたり、日本語で配信することもあるタレントも。「森カリオペ」さんと「がうる・ぐら」さんは、国内タレントの「さくらみこ」さんとともに2023年2月に東京観光大使に任命されました

しかし従来の運営体制は日本国内から海外市場に直接アプローチしており、現地の市場に合ったきめ細かな運営や、小回りの利く運営には課題がある状態でした。

そのことに関し、谷郷氏はこのように説明します。

「例えば国内では、コラボ先のメーカーへ直接お伺いすることができていますが、海外ではなかなか難しい状況です。

しかし海外にオフィスを構えれば、VTuberを起用することで何ができるのかという説明もでき、現地での理解も深まります。そういった直接コミュニケーションをとる環境づくりが必要だと感じています」

そこでカバーは以下の3つのテーマを設定。

それらのチャレンジを遂行するために海外拠点を設置し、徹底したローカライズをめざすことにしました。

1.コンテンツの現地化

 現地に根差したコンテンツ開発(コラボ企画・イベント展開・現地での強固なパートナーシップ)を推進することで、より受け入れられるサービスを展開する。

2.UGC(ユーザー生成コンテンツ)の現地化

 現地のネット文化にさらに寄り添うことで、ファンによるゲーム開発や二度創作など、ファンコミュニティや環境整備を推進する。

3.ビジネスの現地化

 海外拠点を通じて営業ネットワークを拡大し、グッズの独自販売や現地販売網の確立を推進する。

「COVER USA」は上記3つのミッションを達成すべく設立され、その海外拠点を足がかりに小回りのきく運営、現地に根差したサービス開発・営業などをおこなう予定です。

なお設立初期は国内社員による少数精鋭で会社運営をしますが、将来的には積極的に現地採用をおこない、コンテンツ供給の質を落とすことなく現地での営業を拡大する予定です。

従来の運営体制では、国内運営チームが直接現地とやり取りをしていました
「COVER USA」は国内運営チームと連携を取りつつ、現地でのきめ細かな営業やサポートを担います

海外展開に見出すIPビジネスの勝機

ホロライブプロダクションにおける各タレントのYouTubeチャンネル登録数は増加の一途をたどっており、特に海外比率は全体の35.3%と大きな比率を占めています。

世界のIPビジネスに目を向けると、キャラクターIPの総収入トップ10のうち、日本のIPは「ポケモン」「ハローキティ」「アンパンマン」「マリオ」「少年ジャンプ」の5つ、アメリカのIPは「くまのプーさん」「ミッキーマウス」「スター・ウォーズ」「ディズニープリンセス」の4つで、日本とアメリカがけん引していることがうかがえます(TitleMax社「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」より)。

カバーではVTuberを「日本発の新たなIPビジネスとして、世界で勝負できるコンテンツに昇華する」というテーマを掲げていますが、世界でIPを展開するにはマーチャンダイジングが不可欠であり、そのためにはアニメ文化が根付いており、かつコマース領域で収益を得られる環境が必要となります。

アニメ文化が根付いたアメリカで、アニメルックの海外タレントの人気をさらに拡大させる。決して無謀な挑戦ではなく、勝機のある戦いだからこそ今回の海外拠点の設立に至ったのでしょう。

ホロライブプロダクションのタレントによるYouTubeのチャンネル登録者数をグラフ化したもの
世界のIPビジネスのトップ10(「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」をもとにカバー社が加工した図)
トップ10にランクインした各IPの収益の内訳

ファンやタレントにはどんなメリットが?

海外拠点の設立において、やはり気になるのはファンやタレントにとってどのようなメリットがあるかでしょう。

海外拠点設立の意図はあくまで運営の話。営業を潤滑におこない、販路を開拓し、コラボ相手となり得る企業への理解を得つつコラボの機会を増やすものです。

その点の具体的な展望について谷郷氏は、まず「タレントへのメリットは、おもに英語圏で活躍するENやIDの皆さんが大きい」と話しました。

「国内のタレントはコラボやソロライブなど、露出・活躍の場ともに多くのチャンスに恵まれています。

しかし海外展開についてはホロライブENが全体ライブを1度おこなっただけで、日本における2020年1月くらいの感覚(※)だととらえています。

今後は現地での交渉がやりやすくなると思いますから、例えばENメンバーのソロライブなども実現していきたいと思っています」

※2019年までのホロライブは地道な活動を積み重ねていましたが、2020年1月に全体ライブを開催したことで大きく飛躍しました。

また谷郷氏は、海外での3Dスタジオの設立に関しても「いずれ検討したい」と発言。営業・サポート体制の両面で力を入れていく決意を示しました。

▲海外展開のこれまでの歩みと今後の展開。

しかしイベントやグッズ展開などは、当たり前ではあるものの「やるぞ!」と思っても実現するまでの道のりは遠く、それなりの時間を要します。

「COVER USA」の営業開始日は2024年7月(予定)。もちろん現在も国内運営チームが営業やサポートに尽力しているので、相変わらずENメンバーやIDメンバーは忙しいかと思いますが、今後さらなるチャンスに恵まれるでしょう。

まずは3月16日・17日に幕張メッセで開催されるホロライブプロダクション最大のイベント「hololive SUPER EXPO 2024」にて、海外組の活躍や各種ブースに注目が集まります。

最後に、谷郷氏より海外ファンへ向けて発せられたメッセージを紹介します。

「ホロライブを好きでいてくれている海外ファンの皆さんは、普段、SNSなどで日本のファンに対して羨ましさを感じている部分があるかと思います。

しかし海外拠点を構えることでそういった部分がカバーできるかと思いますし、拠点を構えなくても、ホロライブIDのように、昨年からセールス強化に積極的に取り組んで大型コラボなども実現し、可能な限り努力をしています。

『配信で楽しむコンテンツ』にとどまらず、それ以外のコラボカフェだったり企業さんとのコラボ商品だったり、多様なコンテンツを皆さまに楽しんでいただけるよう尽力します。

ぜひお楽しみに!」

マスコミを前に終始真剣な表情だった谷郷氏ですが、ファンへのメッセージを語りはじめた瞬間、柔らかな笑顔を見せていたのが印象的でした。

(C) 2016 COVER Corp.

《気賀沢 昌志》

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