2022年11月30日に新規上場したeスポーツの総合商社であるウェルプレイド・ライゼストが、早くも転換点を迎えています。
2023年、コロナ禍から日常を取り戻し、eスポーツはオンラインからオフラインへの移行が鮮明になりました。たとえば、人気タイトル『VALORANT』の公式大会やコミュニティイベントがオフラインで開催され、多くの観客を集め盛り上がりましたし、高校生eスポーツ大会「STAGE:0」の決勝戦もオフラインで開催されています。
オフラインの大型イベントは、設営や観客誘導、安全管理などに莫大な費用がかかります。ウェルプレイド・ライゼストにとっては大型イベントを獲得するチャンスが到来していますが、運営を円滑に行うだけの体力に欠けているという別の課題が見えてきました。
勢いがあった中で突然1割を切った売上成長率
ウェルプレイド・ライゼストの2023年10月期（2022年11月1日～2023年10月31日）の売上高は、前年同期比10.4%増の22億6,400万円、営業利益は同93.4%減の1,400万円でした。ただし、同社は2023年8月に子会社en-zinを設立し、連結決算を行っているため、2022年10月期との単純比較はできません。
しかしながら、en-zinを含まない個別決算で比較をしても、2023年10月期の売上高は前期比9.5%増の22億4,400万円、営業利益は同95.1%減の1,000万円となっており、連結決算の内容と大きく外れるものではありません。
2021年10月期の売上高は前期の2倍、2022年10月期は2割増でしたが、明らかにトーンダウンしているのです。
※決算短信より筆者作成
同社は2023年10月期の期首においては、売上高を前期比32.1%増の27億800万円と予想していました。結果は予想を16.4%も下回って着地しています。
eスポーツの市場が大幅に拡大する中で成長が鈍化した理由は？
その理由として会社側は、「新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、e スポーツを含むエンターテインメント全般のオフラインイベントが復活した結果、スポンサー企業のプロモーション戦略におけるeスポーツの占める割合が相対的に縮小傾向となりました」と説明しています。
その一方で同社は、eスポーツの国内の市場規模は2022年が89億円、2028年まで年平均17%で成長するとの見込みを出しています。市場規模の拡大については、日本eスポーツ連合も見解は同じ。2022年の市場規模が125億円、2023年は29.6%増の162億円に達すると推計しています。
eスポーツ関連産業をどこまで市場規模の範囲に含むかによって金額に差が生じているものの、力強く成長する見通しを出しているのは、両者とも変わりません。
※日本eスポーツ連合「2022年の国内eスポーツ市場規模が100億円を突破」より
すなわち、ウェルプレイド・ライゼストの売上高が予想と比べて後退した説明「スポンサー企業のプロモーション戦略におけるeスポーツの占める割合が相対的に縮小傾向となりました」というものは、eスポーツを取り巻く世の中の流れとは大きく乖離しているのです。仮に依存度の高いスポンサーがeスポーツから手を引いたとしても、別のスポンサーを見つけて開催する余地は十分にあったでしょう。
