カギは莫大な広告費のコントロール…ハイパーカジュアルがカヤックの屋台骨に【ゲーム企業の決算を読む】 | GameBusiness.jp

カギは莫大な広告費のコントロール…ハイパーカジュアルがカヤックの屋台骨に【ゲーム企業の決算を読む】

ソーシャルゲームの不調で一時業績不振に陥っていたカヤックが、目覚ましい回復を見せています。

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ソーシャルゲームの不調で一時業績不振に陥っていたカヤックが、目覚ましい回復を見せています。

2023年12月期第3四半期連結業績(2023年1月1日~2023年9月30日)の売上高は前年同期間比9.1%増の125億9,400万円、営業利益は同20.3%減の7億3,600万円でした。

営業減益となっているものの、これは2Qにゲーム事業における広告配信システムでトラブルに見舞われた一時的な不調が大きな要因。3Q単体(2023年7月1日~2023年9月30日)で見ると、営業利益率は前年同期間の6.6%から7.4%に上がっています。

カヤックは2023年12月期通期は増収増益を予想しています。ハイカジへのピボットが奏功しました。

『クロス×ロゴス』の失敗で大型タイトルから手を引く

カヤックは2014年12月に上場した会社で、ソーシャルゲームが会社の業績をけん引していました。ヒット作の一つが『ぼくらの甲子園!』シリーズ。2014年9月に『ぼくらの甲子園!ポケット』をリリースし、2週間で50万ダウンロードを突破。シリーズ累計で1,000万ダウンロードを超えています。

2015年3月に配信を開始した『キン肉マン マッスルショット』も根強い人気があり、2019年に700万ダウンロードを記録しています。

しかし、2018年以降は不調が目立ちました。2018年2月にリリースした『機動戦士ガンダム 即応戦線』は翌年1月10日にサービス終了。2018年7月リリースの『東京プリズン』も半年ほどでサービスの提供を打ち切っています。

カヤックは2018年12月期(2018年1月1日~2018年12月31日)の売上高が、前年同期比4.4%減の58億1,600万円となり、3億9,100万円の営業損失(前年同期は6億7,500万円の営業利益)を計上しました。上場以来初の減収、営業赤字でした。

決算短信より筆者作成

翌期も営業損失を計上し、業績不振が鮮明になりました。

カヤックは2019年9月に『クロス×ロゴス』をリリースしています。このタイトルは、シナリオをライトノベル『ゼロから始める魔法の書』作者の虎走かける氏、キャラクターデザインを『Fate/Grand Order』でも一部キャラクターデザインを務めるタイキ氏、プロデューサーは元スクウェア・エニックスで人気ゲームに携わった安藤武博氏が務めました。

※「新作ゲームアプリ『クロス×ロゴス』正式サービス開始!」より

アニプレックスとカヤックが共同で開発・運営する強力なタイトルで一定の評価を受けていたものの、配信開始から半年たたずにサービスを終了しました。

カヤックは2019年12月期に大型自社タイトルの開発は行わず、2016年2月に子会社化したガルチ(現:カヤックアキバスタジオ)での受託開発にゲーム事業を集約。大型自社タイトルから手を引く、白旗宣言を行います。

莫大な広告費のコントロールが収益化のカギを握る

この時に細々と開発を進めていたのがハイパーカジュアルゲーム(ハイカジ)でした。ハイカジは年齢や国籍、性別を問わずに楽しめるもので、ユーザーの間口が広いというメリットがあります。制作時間も少なく、小人数でプロジェクトを推進できるため、制作費を抑えることもできます。

ただし、X(旧:Twitter)やFacebookなどに莫大な広告費をかける必要があり、ヒットゲームが誕生したとしても利益が得られにくいというデメリットがありました。

カヤックはわずか5人で開発した『Park Master』が全米ランキングで1位を獲得。ゲーム事業の風向きが一気に変わりました。なお、このゲームの開発チームは、解散寸前の状態だったと語られています。当時、ハイカジが会社の業績を支えるサービスに育つとは誰も予想していませんでした。


《不破聡》

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