『Linked-Door Loves Space Channel 5』開発者らに訊くVRコンテンツのリッチ化―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第43回 | GameBusiness.jp

『Linked-Door Loves Space Channel 5』開発者らに訊くVRコンテンツのリッチ化―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第43回

ゲーム開発 バーチャルリアリティ

『Linked-Door Loves Space Channel 5』開発者らに訊くVRコンテンツのリッチ化―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第43回
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通信会社とゲーム開発スタジオとの連携で取り組むVR時代ならではのコミュニケーション・エンターテインメントサービスの展望

PlayStationVRも無事発売され、一般の家庭にもVR用HMDが届き始めていますが、実際、VRの活用用途はゲーム以外にも広がりそうな勢いです。その代表的例として挙げられるのが今回とりあげる、『Linked-Door Loves Space Channel 5』。同作はビーチ、夕暮れのパーティ会場、そして題名にあるように「スペースチャンネル5」のリポートショーをその場で楽しみながら他のプレイヤーと音声チャットなどを通してコミュニケーションを果たすことが出来ます。子犬や、ダーツなどインタラクションのあるギミックがあり、これらのインタラクションを楽しみつつ、他のユーザーとコミュニケーションが出来ることが重要で、それを実現したのが、これまでモノビットが多数のMMORPGなどの開発で培ってきたノウハウを結集してつくりあげたリアルタイム通信ミドルウェア、モノビットエンジン。

開発元は、通信会社大手のKDDIです。同社はゲーム開発及びインタラクティブエンターテインメントでの用途を意識してつくられたリアルタイム通信エンジンの開発で知られている株式会社モノビットとのコラボレーションのものと開発されました。今回は同プロジェクトに関しKDDI株式会社商品・CS統括本部商品企画部 商品戦略3グループリーダーの上月勝博氏と同コンテンツの開発を担ったモノビット代表取締役社長の本城嘉太郎氏ならびに、モノビット第二運営開発事業部部長佐藤大輔氏からお話を伺いました。


株式会社モノビット代表取締役 本城嘉太郎氏


モノビットの佐藤大輔氏(左)と、KDDIの上月勝博氏(右)

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ゲーム開発関連技術の蓄積が次世代コミュニケーション技術の基盤に



――まず、今回、モノビットがゲーム以外のサービスの展開を進め始めた経緯を教えてください。

本城嘉太郎氏(以下、本城):もともと弊社は、2013年位からゲーム用通信エンジンの開発を進めてきたのですが、2015年からVR対応のための開発も同時に進めてきたのです。その成果のひとつは、アイドルグループのVRミニドラマを展開するというもの、VRゲームとしてはリアルタイム戦略ゲーム的なものを開発し、もう一方がKDDIさんと共同開発した『Linked-Door Loves Space Channel 5』になります。複数名でVR 空間内を行ったり来たりして、コミュニケーションを楽しむというものです。これで威力を発揮したのが弊社で開発してきた通信ミドルウェア「モノビットエンジン」です。会社全体の方向としては現在VR市場の成長が拡大しているので、今後はVRMMORPGに特化したパブリッシャーとなれるように資金調達の開始を始めました。更にこの技術を基盤に、VR空間でのコンサートや展示会など人がいないと成り立たないコンテンツの開発へと発展させることを考えています。つまり、VRソリューションビジネスですね。

――KDDIとしてモノビットにアプローチをしたのはどういった経緯があるのでしょうか?

上月勝博氏(以下、上月):モノビット様が秋葉原で「モノビットVRカフェ」を開いていたときに、弊社のVRチームが訪問したのがはじまりです。今年の5月でしたね。弊社では2015年から、「VRで何が出来るか」をテーマにチャレンジしてきたのですが、今年からはVRを使って離れた空間にいる人が同一VR空間でどうインタラクション出来るかをテーマに考えてきました。そこで、モノビットさんがネットワーク用エンジンを持たれていたことを知りました。まあ、これまでは、ゲームでの活用が主流だったとのことですが。そこでこのエンジンを是非活用して試してみようとなったわけです。当社のモノビット様への依頼は、「ユーザーは物理的に別の空間に居ながらボイスチャットやゲームが出来たりするための解決法を示してください」というものでした。

――KDDIからのそのような話を受けて、モノビットさんとしてどのような提案をされたのでしょうか?

佐藤大輔氏(以下、佐藤):まず、話を伺ったときは、「マルチ・コミュニケーション」と「VR空間」ということで、これを出来る開発スタジオがなかなか存在しないとのことでした。弊社はすでにモノビットエンジンというのがありました。これはオンラインゲームなどで必要となる大規模ユーザーネットワークで遊ぶという技術なのでこの技術を応用すれば出来ると思いました。常駐チームとしては4人を編成しました。エンジニアとしてはUnityを使ったソフトエンジニアとして3名、あとはプログラマー、そして必要に応じてデザイナーを入れるという感じでした。これに企画なども入るのと総勢10名程度になります。この体制で、3か月位かけて開発したのです。KDDI様から言われたのはタイトルにもある「Linked Door」というコンセプト。複数の違う場所にいるユーザーと繋がってコミュニケーションできるというものです。そこから最終的にはソリューションビジネス的な展開もあるとのことで、弊社としてもそれを意識して開発を続けました。

通信会社のコミュニケーションサービスに対する発想とゲーム会社のコンテンツ開発の発想を統合してVR時代における「体験価値の共有」型サービスを生み出す


――Linked Doorとは?

上月:弊社オリジナルのコンセプトになりますが、いままで通信と言えば音声とか、写真、動画などだったわけですが、どうしても次の時代でそれらを超えたいという思いがあり、そこで重要なのが「空間」。これまでは情報の共有止まりだったものを「体験価値の共有」をしたいということで考えたコンセプトでした。

Q このコンセプトを受け、如何なる世界観を提供することに至ったのでしょう?

佐藤:体験が一番重要ということだったので、「どこからでも様々な空間に行ける」というコンセプトを「体験のAmazon化」と捉え、夕陽が見える場所の再現や、皆で簡単に楽しめるゲームの開発などを提案させていただきました。開発をはじめてから、TGSでの一般展示までちょうど3か月でしたが、砂浜でのオーシャン・ビューとプールサイドでのパーティ会場という2つのワールドを開発出来ました。これらはもともとKDDI様のほうでイメージされていたものですが、それを当方の技術側でバージョンアップさせていただいたという形になります。コミュニケーションを考えたときに何かを同時にやるということをKDDI様は希望されていました。とりわけ、乾杯シーンは入れたいというのがありました。

上月:これは以前のプロジェクトでもあったフィーチャーです。ただ、これまではあらかじめプログラムされたものを体験するだけだったのですが、今回は、ユーザー同士が乾杯できるようにしました。システム上限としてはまだ多くのユーザーが参加出来るのですが、現行のものでは3名で同時に乾杯することに対応しています。HTC VIVEなので設置スペースが必要だというのもあってTGS会場でのデモでは制限しています。展示では2名分のスペースをつかいました。この他に浜辺では、犬が足元でなついてくるようにし、なでたりすることが出来ます。もちろん犬はプログラムで動いているのですが、かわいがると、なついて歩いてきます。これはリアルな世界とバーチャルな世界が融合したときどうなるかというインタラクションを実験的に取り込みたかったからです。

――ゲームとは具体的にはどういったものでしょうか?

上月:ダーツなどですね。こちらはモノビットさんが開発したものです。その他には、セガさんがドリームキャスト向けに開発した『スぺ―スチャンネル5』とコラボレーションしたコンテンツ、『スペースチャンネル5 ウキウキビューイングショー』を実装しています。同サービスは、プレイヤーがウララの番組の観客となって主観視点でショーをみることが出来るというものです。

――どのような経緯でサービスに取り込むことになったのでしょうか?

上月:たまたま『スぺ―スチャンネル5』の開発に関わって方にお会いする機会があり私や、KDDIのメンバーもこの作品のファンだったということもあり、とんとん拍子で話が進みまして、一緒にやることになりました。コンテンツは当時セガさんにて『スぺースチャンネル5』を担当されていた方々がいらっしゃるゲーム会社のグランディング様がVR向けに開発しているものなので、これをモノビット様に統合いただいています。

――統合するうえでの苦労などは?

佐藤:Unity上で統合したので難しいことはありませんでした。弊社はモーションなどを含めたデータ一式をいただき、『Linked Door』へ統合しました。

ラピッド・プロトタイピングは次世代コミュニケーションツール開発でも威力を発揮


――異業種による開発とはどういったものなのでしょうか?

上月:開発後半では連日、通いつめて話し合いました。やはり机上で考えるのと実際に体験するのではまったく違うので。ただ、実際に体験して思うのは、ひとことで言うと「面白い!」これに尽きます。コミュニケーションという点でも限られていた機能を飛躍的に向上させることが出来たと思っております。やはり、すぐ隣にいるといった感覚を再現出来ますし、文字や写真ではなく、オブジェクトを手渡しできる、これも従来のツールでは出来ないことです。

――ゲームスタジオとして通信会社との共同作業に何を感じましたか?

佐藤:最終的に弊社はゲーム・デベロッパーなのでゲームへの落とし込みを常に考えるのですが、KDDI様は同社の回線使用者を増やすのが目的なのでそれぞれ向いている方向性はちがうと思います。ただコンテンツを開発するうえでの意識は同じだと思うので特に難しい事もなく開発が出来ました。KDDIさんとしては将来的にモバイルのほうでこのような展開を望んでいるのでと感じているのですが、システムをモバイル向けにコンパクトにするのが大変なので、そこは思案していますが。データ量がとっても多いので…

――これについてはどう感じますか?

上月:我々のビジネスの大部分はモバイルビジネスから来ているので、意識しています。ゲームもスマートフォンでのビジネスが拡大しており、VRもゆくゆくはモバイルが受け入れられ普及するものと期待しています。

Q 本プロジェクトのこれまでを振り返って率直にどう感じましたか?

上月:とにかく「楽しかった」、コレにつきます。苦しかったよりも楽しかったという意識が先にきます。あと、素早く対応いただけるという点も驚きました。ゲームの世界は大変厳しい世界ので、そこで相当鍛えられてこられたのだなと感じました。IT業界では仕様が変更するためにじゃあそのための見積もりをとなるケースが多くなりがちですが、モノビットさんではラピット・プロトタイプイングを採用しているので、言っているよりも一緒に取り組みながらという姿勢に驚きました。これは我々にとって新鮮でした。本作自体もトータル3か月ほどで出来ているのです。これは我々では普段あまり出来ないことです。こういったタイプのサービスの場合、以前のケータイ電話向けの場合はここまでいくのに2年はかかりました。スマートフォンでこなれてきても1年はかかりました。まあ、これはケータイやスマートフォン側のハード開発も込みですが。アプリケーション単位でもやはり6か月はかかります。それが、VRという新しい分野にも関わらず、ここまでのサービスを3か月で出来たのは驚きました。

――ユーザーにプレイしてもらっての印象はいかがでしたか?

上月:笑顔で楽しんでいただいて、みな満足して帰っていただいたという印象を持ちました。
佐藤:まだまだ出来ることはあると思いました。今後も更に開発を進めていきたいと思っています。

――経営者として今回のプロジェクトから如何なる可能性を感じましたか?

本城:実際、Unityと弊社のエンジンはノン・ゲームに向いていると感じました。まず、簡単に作れるということ。あと、品質を高くするうえでも、ゲーム程、調整は必要がないと感じました。つまり迅速にマーケットに出せるということです。ただ同時に、弊社がこれまでネットワーク通信エンジンの開発など、ゲームづくりの周辺技術に対する取組を地道に進めてきたことがいま活きているとも感じました。一般的なゲームスタジオはゲームをつくることに特化しすぎてしまい、ソルーション的なサービス開発に対して受注しにくい状況があると思います。弊社の場合、そういった視点における企画のバランスを持つことが出来たなと実感しています。

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以上、本城社長のコメントにもあるとおり、ゲーム開発のノウハウはここに来て、コンテンツのリッチ化と没入感が必要となる次世代コミュニケーションサービスにおける中核的技術を担う可能性が見えるようになってきました。ゲーミフィケーションといった概念が提示されて久しいが、ゲームで培われてきた基礎的な技術基盤が正にこれからのソーシャル・ネットワークサービスの質を左右するという可能性があるようです。そのような意味でもKDDIとモノビットの取組は今後も注目していく必要がありそうです。
《中村彰憲》

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