『League of Legends』学生コミュニティを支援―GameBank北山氏・寺島氏インタビュー・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第40回 | GameBusiness.jp

『League of Legends』学生コミュニティを支援―GameBank北山氏・寺島氏インタビュー・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第40回

GameBank株式会社事業開発部部長の北山俊輔氏と、同コミュニティデベロップメントチームの寺島壽久氏に、日本でMOBAを展開することの醍醐味や学生コミュニティとコラボレーションすることの意味について伺ってみました。

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『League of Legends』学生コミュニティを支援―GameBank北山氏・寺島氏インタビュー・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第40回
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今年の2月、驚きの情報が舞い込んできました。世界で最も人気のあるMultiplayer Online Battle Arena(以下、MOBA)、『League of Legends』(以下、『LoL』)が日本で正式に展開されることとなり、そのクローズドβが始まったというのです。その後、程なくした4月、学生e-Sportsを支援する「e-Sports×U」プログラムが発表されました。その支援を受け、立命館大学映像学部、ゲーム研究会の有志が立ち上がり、関西地区で国内プロリーグ決勝戦「LJL 2016 Spring Split Final」のパブリック・ビューイングを行うことになりました。そしてそれに合わせて、e-Sports×Uの仕掛け人、GameBankの皆さんも来ることに!そこで今後の動向も含めて、パブリック・ビューイングの当日にインタビューを敢行いたしました。

GameBank株式会社の寺島壽久氏(左)、北山俊輔氏(右)

答えてくれたのは、GameBank株式会社事業開発部部長の北山俊輔氏と、同コミュニティデベロップメントチームの寺島壽久氏。実は北山氏とは、同氏がセガのモバイルゲーム事業部時代に、中国展開についてイベントで発表してもらうなど以前から何かと縁がありました。現在は『LoL』の日本での展開をお手伝いしているとのこと。そこで早速お二人に日本でMOBAを展開することの醍醐味や学生コミュニティとコラボレーションすることの意味について伺ってみました。

自ら口説き落として日本での『LoL』火付け役に就任!



―――まず、どのような経緯で御社として『LoL』の学生プログラムを展開することになったのか教えてください。

北山俊輔氏(以下、北山):実は、『LoL』については以前から研究していました。と言うのも、ずっと日本で新しいコミュニティマネジメントの手法を確立する方法を考えていたからです。ゲームを熱心に遊んでくださっている方、弊社ではロイヤル・カスタマーと言っていますが、こういったお客様にどう接したらいいかは我々にとっての大きな課題でした。L-CRM(Loyal Customer Relation Management)という言葉を社内で作っていたくらいです。

長年、中国や韓国のマーケットを見てきましたが、中国や韓国などでは重課金プレイヤーなどに対し厚遇をすることが多く、ゲームイベントが開催された際はVIP窓口を準備し、最新バージョンを、お酒を飲みながらプレイさせる特別な空間を準備したりしています。これがアジア的なL-CRMといえるVIPサービスです。しかし、そのような方法では、熱心に遊んでくれている純粋なゲームファンや、お金のない学生は置き去りになってしまいます。それは平等を重んじる日本には合わないと思っていました。

一方で欧米に目を向けると、また異なるコミュニティマネジメントのスタイルがある。加えて、PCゲームをプレイする際、PCを持ち寄って一緒にゲームをプレイするLANパーティーのような文化がある。そういったものを支援する仕組みがあり、日本でいう「オフ会」を通じてプレイヤー全体を盛り上げる仕組みがあったんですね。そして、欧米の動向を調べると必ずライアットゲームズに行き着いていたんです。そのようなとき、同社が日本で『LoL』を展開すると聞き、「是非一緒に」というお話をさせていただき、学生のコミュニティを盛り上げるお手伝いをすることになりました。

―――アメリカにおけるコミュニティ・マネジメントとはどういったものがあるのでしょうか?

立命館大学衣笠キャンパスでのパブリック・ビュー


寺島壽久氏(以下、寺島):自分の知る範囲では、日本よりも、より密接にプレイヤーとコミュニケーションをとっているように思えます。多くのロイヤル・カスタマーと企業が連絡を取りやすい状態にあるんです。また、制作者が顔と名前を出してお客さんと関係性をつくる機会も多い。プレイヤーと運営側が近づきすぎるとリスクもあるので、距離感が難しい側面もあると思いますが、日本は開発側がプレイヤーから見えづらい上に触れられない、神様のような立ち位置になりすぎていることが多いと感じます。

北山:結局、日本式のロイヤル・カスタマー関係を考えたときに、オフラインは重要だと考えたんです。特に直接対話を持つということですね。なので、今回のようにe-Sportsを盛り上げる場合も、大学を訪問して、やる気のある学生たちとのパートナーをつくるe-Sports Student Partner(以下、ESP。e-Sports×Uに支援を受けるパートナーとして、一緒にe-Sportsを盛り上げていく学生)プログラムを考えたのです。

技術の進化に伴って、スポーツの概念も進化します。例えば、ドライバーのテクニックと、車の技術で勝負するレースは既にモータースポーツとして認知されています。それと同じように、オンラインで平等に競えるゲームの出現で、頭脳スポーツというのが広く認知されるようになってもいいと思っています。

ご存知の通り、今、屋内型電子競技をオリンピックのような競技大会に持っていこうという考えもあります。ライアットゲームズさんからは『League of Legends Japan League』がe-Sportsと定義される公式のものと聞いています。まあ、プロ野球に近いですね。ですが、本来は『LoL』版の甲子園や草野球のようなものがもっといっぱいあってもいいのです。

寺島:ただ、野球はプレイしないファンが存在します。これが『LoL』ではまだ難しい。野球は学校で学ぶことが多いので、誰でも見ていてわかる。歴史があるので、家庭でもお父さんが応援するチームを一緒に応援するような流れもあります。野球を観て楽しむように、日本で観て楽しむ人を増やすのも、我々の目的です。

ユーザーコミュニティ醸成と、実況など周辺領域の育成



北山:ですから今回の施策は、まずプレイヤーコミュニティをつくることを目的にしています。ただ、もしプレイヤーの中で実況をしたいという人が出てきた場合は、そういう人もサポートしていきたいと思っています。

学生に語り掛ける北山氏


現在、日本にもe-Sports関連の団体が幾つか立ちあがり、盛り上がりつつあります。正にe-Sports元年だと考えています。そこでは私たちは、ESPをネットワークとしてつなげていきたいです。ESPを通じて『LoL』サークルを作るサポートをし、サークル同士をつなげて大学対抗戦などをする支援、イベントなどのプロモーション支援、そして皆で遊ぶための場をつくりあげる支援などが出来ればと思っています。アメリカのようなLANパーティや、学生たちがやりたいと思っていることを実現するべくサポートしたいと思っています。今回もパブリック・ビューイングをやりたいと学生が手を挙げてくれたので、それをサポートすることにしたんです。

寺島:先ほど話にあがった、「実況」の話ですが、もはやe-Sportsと切り離せませんよね。我々のチームには、元々は実況者をしていたメンバーもいて、そういったノウハウもサポートしていきたいと思っています。

北山:最終的には、お金をかけずにイベントをやるノウハウもサポートしていきたいと思っています。イベントを企画、運営するというのは大変ですが、学生が自分でやるという経験が大切なんです。イベントを通じて人と繋がり、企業と話す経験は、将来大きな宝になると思います。草の根のムーブメントでもガイドラインを設けていたりとか、ロゴの使い方ひとつをとっても勉強になると思います。そうした経験を重ねていった結果、いつか振り返ってみた時に、大学でゲームをやっていてよかったなって思ってもらいたいんです。

寺島:実は、我々のチームの元実況者も学生時代の実況活動の実績で入社したメンバーです。言ってみれば、e-Sports就職です。これは夢の話ですが、e-Sportsを真剣に盛り上げた結果、就職につながるような道を整えられたら最高だと思っています。体育会系のサークルで頑張って、その実績で商社などに入社するように、e-Sportsが一般に認知されれば「ゲームをやってきました」で就活が有利になるという道を作れるといいな、と思っています。

まずが学生コミュニティのサポートからはじめ、ゆくゆくは大学対抗イベントへ!


奥深い『LoL 』にゲームとしての可能性を見出す



―――『LoL 』を実際にプレイしたときの印象はいかがでしたか?

北山:最初はその難易度に本当に驚きました。ゲームのルールから始まって、キャラクターごとの特性や対戦プレイのいわゆる定石を理解するのに相当な時間がかかる。相当な時間をかけて練習したはずなのに強いプレイヤーには全く歯がたたない。さすが世界最高峰と言われるe-Sportsタイトル、奥が深いぞ、と。

また、業界人としては、「ガチャ」とはまったく違うマネタイズモデルでここまで大きな収益化に成功していることにも強い関心を持ちました。プレイヤーは自分のキャラクターをかっこよく見せるようなスキンなどに課金しています。ゲームで有利になるわけでもないのに、納得して課金している。能力値のバランスを崩さない課金方法になっているんです。そのマネタイズ手法だと、収益化には限界がある、と思っていたのですがこのタイトルはグローバルで大きな収益を上げています。

寺島:『LoL』は、e-Sportsゲームの中でも日本人向けのゲームだと感じましたね。世界的にはFPSも人気ですが、主観視点は慣れが必要で、日本では人を選ぶと思っています。でも、『LoL』は視点が俯瞰なので分かりやすい。これなら多くの人が平等な立場でプレイできると感じました。あと、日本企業では「ガチャ」を入れないとゲームが作りづらい現状があります。「ガチャ」を否定するわけではありませんが、「ガチャ」というマネタイズにゲーム内容が縛られ、特にオンラインゲームがどれも似通ってしまっています。『LoL』が流行って、その状況に一石投じてくれたら嬉しいと思いました。

―――では、これからの『LoL』そしてe-Sportsについて一言お願いします。

北山:いま、日本のゲームマーケットはマネタイズ指向が強い傾向がありますが、『LoL』という世界最高のゲームがようやく日本に来た事は、日本のマーケットにとって大きな転換の機会になりえると思っています。e-Sportsやコミュニティマネジメントという考え方を日本に導入することを含めて、『LoL』は日本のマーケットにとって非常に重要なゲームになるでしょう。なので、これをしっかりと盛り上げると同時にe-Sportsという遊びの文化も拡げていければと思います。

寺島:スマホのゲームでもそうですが、今、ゲームの流行りは学生が作る側面が強くなっていると思います。今回、まさにその学生による『LoL』コミュニティをサポートし、e-Sportsを盛り上げていきますので、ご期待ください!

4月に行われた立命館大学でのパブリック・ビューイングにて
《中村彰憲》

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