バーチャルリアリティ2.0/VR2.0・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第51回 | GameBusiness.jp

バーチャルリアリティ2.0/VR2.0・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第51回

連載 その他

バーチャルリアリティ2.0/VR2.0・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第51回
  • バーチャルリアリティ2.0/VR2.0・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第51回
皆さんは覚えていると思いますが、2005年頃、Webの新しい利用法やその形態を総称してWeb 2.0と呼んだことがありました。従来は一方的な供給型のサービスだったWebの利用法が、需要と供給の両方が伴うかたちに変化を遂げたものでした。これにより供給側のサービス品質が向上し、ユーザーからの発信も促進されるフェイズを迎え、これらを総称してWeb 2.0と呼んだものです。

私が現在バーチャルリアリティ(以下VR)のビジネスとサービスで感じている気持ちを表すとバーチャルリアリティ2.0(VR2.0)というフェイズに入っていると思います。

これにはいくつか理由があります。

ひとつはVRが、今までの研究対象から現実的なビジネスのフェイズに入ってきたということです。

昨年11月オキュラス・リフトの予約が開始され、(本体価格588ドルが高いという声もありますが、最新のデバイスがこのような価格になるのはロンチ時には致し方がないと思います)日本へのデリバリーコストを含めると約10万円近くなることが明らかになりました。おそらく、実際のVR開発者か開発会社でないアマチュア研究者には高値の花かもしれません。

さらには2月28日(日本時間3月1日0時)にはHTCViveの予約が開始されました。こちらの価格は799ドル、日本へのデリバリーコストを含めると11万円ちょっと・・・。これもやはりアマチュアには厳しいプライスなのかもしれません。デリバリー開始は4月5日の予定です。

さらにマイクロソフトのホロレンズ、こちらはVRというよりもARデバイスと位置づけた方がよいかもしれません。価格は前述の2デバイスよりもさらに高めの3000ドル、ソフトウェア開発者限定の予約受付のみで、3月30日に出荷を始めるとのことです。

つまり、これだけを見ても現実的なVRソフトウェアをどれだけ多く準備できるかどいうフェイズに入ってきています。デバイスがあってもコンテンツがなければただの被り物に終わってしまうからです。そして、現実的に日本のパブリッシャーで、それらのデバイスに対応ができるコンテンツを提供できるパブリッシャーの姿はなかなか見えてきません。

VRを取り巻く環境は追い風ですが、そのコンテンツや展開方法や販促認知に関してはややビハインド(向かい風)状態になっていると思います。

ここからは、2月26日に開催された黒川塾33での所感も引用しますが、株式会社ハコスコの藤井直敬氏の言葉を借りれば「VRは出始めは関心も高く、宣伝販促用などにお金が投下されていましたが、すでに1周回ってしまった感がある。つまり新鮮さにかけるようになってきて、効果とコストの兼ね合いが重要視されるようになってきた」という発言をいただきました。これは私も感じていたことですが、昨年の前半から、大手広告代理店や制作会社がVR系コンテンツの制作に注力をしているという話を良く聞きました。実際に身近な会社でもVR映像を請け負って海外の名所旧跡の映像を収録して加工しているという話も聞きました。しかし、このところ、そのVR映像の使い道や使われ方にやや陰りが見えるように思います。つまり1周回ってクオリティや演出、もしくはVRならではのギミックやテクニックが必要とされているのではないでしょうか。さらにその実際にVRを販促映像や告知に使ったけど、実際の効果測定には至らなかったということではないでしょうか。つまりVRのあり方を再度検証するタイミングではないかということです。

そしてもうひとつの2.0要素は、株式会社ソニーコンピュータエンタテインメントの吉田修平氏が唱える「良いVR体験の演出」です。これはVRという言葉が一人歩きし始めた今こそ考えなければいけないことだと思います。

世の中の新しいトレンドやカルチャーが生まれるとそれに対するアンチも生まれます。VRコンテンツのビジネスとは観点が異なりますが、海外で次々に生まれるシェアリング・エコノミーを代表するタクシーに替わる自家用車利用サービスのUber、自宅をホテル代わりに使用してもらうAIRBNBなど、特に保守的な日本ではなかなか浸透しづらいものがあります。そして、そのアンチもあります。

VRビジネスにはクオリティの高いコンテンツを初動段階のユーザーに多く体験してもらう場所や時間が必要です。最初に体験したものが、その後の感性を左右すると言っても過言ではないでしょう。「VR食わず嫌い」を生み出してはいけません。

そのためには、現段階では、スマートフォンが身近で便利なデバイスです。しかし、まだスマホでVRの魅力を十分に感じてもらうレベルに行ってないのかもしれません。もちろんハコスコやGoogleのカードボードにはVRを身近なものにするという意味では役目や存在価値はとても大きなものがあります。

今こそ、インディーズ・コンテンツの発想力と現実的なVRコンテンツへのパッケージング力を求められるVR2.0の時代の始まりです。そこには既存の家庭用ゲームパブリッシャーではなく、ガラケー、スマホで新しい時代を切り開いたコンテンツパブリッシャーたちのナレッジの見せ所かもしれません。

新しいコンテンツの未来を担うVR、そのVR市場が盛り上がるための努力を惜しんではいけません。ユーザーの気持ちを代弁するならば、「どうせ、騙されるならば気持ちよく騙されたい」ということに尽きると思います。

了)

最後は次回、黒川塾のご案内です。

【今回のテーマ】
ゲーム・エンタメ系メディア 有識者による 「2015年 エンタテインメントの未来を考える大賞」選定

今回の「黒川塾 三十四」のテーマは、2015年度を振り返りまして、ゲーム・エンタメ系メディア系有識者一堂にお招きし、登壇ゲストの印象に残る今年のコンテンツなどを語り合っていただきます。今回は、「週刊ファミ通」林編集長、「CNET」佐藤氏、黒川塾へ初参加は「電ファミニコゲーマー」平編集長と、「Game Deets」辻編集長です。

2015年を振り返り、登壇者が考えるトピックなどをご披露いただきます。また、未来のエンタメの方向性などを語り合う会にしたいと思います。それらの結果としての「エンタテインメントの未来を考える会 大賞」を選定したいと思います。「2015年 エンタテインメントの未来を考える大賞」選定を皆様も目撃してみてはいかがでしょうか。

黒川塾34

■PeaTIX(ネットからのお申込みはこちらから)
http://ptix.co/1TQiXCG


■著者紹介

黒川文雄
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapan(現LINE・NHN Playartにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。「ANA747 FOREVER」「ATARI GAME OVER」(映像作品)「アルテイル」「円環のパンデミカ」他コンテンツプロデュース作多数。
《黒川 文雄》

関連ニュース

特集

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら