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イラストがそのまま動く「Live2D」―その誕生のきっかけや話題の「FaceRig」に迫る

2Dのイラストが自由自在に動く。それは、まさに魔法のような言葉です。イラストや漫画を描いた経験がある方ならば、自分のキャラクターがイキイキと動く様を見てみたいと思ったことがあっても何ら不思議ではありません。

ゲーム開発 ビジュアル

◆「Live2D」のライバルは3Dにあらず。ライバルは「静止画」


一番右が中城哲也氏

──様々なゲームやアプリにも導入されている「Live2D」ですが、意外と気付かれていないものなどはありますか?

中城哲也氏(代表取締役 / 最高技術責任者):むしろ、我々が知らないものもたまにあるんですよね(笑)。

──なんと!(笑) それだけ幅広く、言い換えるなら徐々に“当たり前の技術”になりつつあるんですね。

中城氏:ゲームの場合は、ライセンスの関係などでウチとやりとりしないといけないんですが、アニメ制作だと申告の必要がないんですよ。なので、「これLive2Dかな?」と思っても証拠が無いから分からないでいると、後から制作者の方にお会いして「Live2D使ってます」とお聞きしたりするケースもあります。

あと変わったところでは、NHK「あまちゃん」でも知られている久慈市の市長さんと副市長さんがネット動画を配信しているんですが、そこに登場するキャラクターが「Live2D」で動いているんですよ。

──おお、意外な広がりを・・・それだけ、「Live2D」が多くの方に認められているということなんでしょうね。

中城氏:現実に存在するものを表現するには、3Dの方が適切かなとは思うんです。実際にあるものを3D空間の中に再現して、物理法則なども全て計算して表現するのは、やはり3Dが正解に近いかなと。その反面、漫画やアニメという紙の中で無限の世界を描くものは、ある種デタラメな幅を持つその魅力は、ひとつのモデルを作ってどうにかする3D表現では難しいんだと思います。



──デタラメに描ける2次元の魅力を表現するにはやはり2次元であり、それを幅広く表現してくれるのが「Live2D」なんですね。

中城氏:2Dと3Dは、例えればナイフとハサミのようなものですよね。どちらも便利ですし、目的や用途が違います。だからどちらかがどちらかを淘汰するような関係ではなく、どちらも使われていき、また進化していくべきものだと考えています。

ですが2Dを動かすことに関しては、フラッシュアニメみたいなもので止まっていた面もあったので、3Dと2Dが対等になって欲しくて「Live2D」の開発に励んでいます。

──「Live2D」にとって3Dは、ライバルではなく、共に歩んでいく相手なんですね。

中城氏:ライバルという意味で言うならば、「Live2D」にとってのライバルは「静止画」ですね。

──なるほど、言われてみれば確かにそうですね。

中城氏:静止画の表現力を保ったまま、静止画と同じくらい(の作業で)簡単に動かすことができるという形が、ひとつの理想です。そしていつか、絵を描く人が絵を描くような流れの中で「Live2D」を使うことが、“当たり前の選択肢”のひとつになって欲しいですね。

──静止画に変わる“当たり前”を目指しているんですね。

中城氏:そのためには使いやすく、そして表現力も高く、また組み込んだ時には軽量で。いずれもまだ課題はありますが、実現できる可能性を「Live2D」に感じていますし、高みを目指さなかったら中途半端で止まってしまいますから。

──より進化するために、高みを目指し続けていくと。ちなみに「Live2D」の大きな進化に関しては、いつ頃発表となりますか?

中城氏:(前編で)お話した次のステップに関しては、半年後くらいにお出しできるかなと。これまで毎年「alive」というイベントを開催しており、今年も6月くらいに行う予定です。そこで出そうと考えており、今から本当に楽しみにしています。

──おお!「alive」が更に待ち遠しいなりそうですね。

中城氏:「alive」ではいつも、基調講演をやらせてもらっているんですが、今までは「何を喋ろうかな」と悩んでいたんですが、今年はもう「やらせろ!」という感じです(笑)。

──その意気込みだけでも、期待が高まりますよ(笑)。ちなみにその進化が実現した際には、ゲーム方面も恩恵を受けるのでしょうか?

中城氏:そうですね。クオリティもあがりますし、動きの範囲も広がるので、新たな表現や演出に繋がると思います。「Euclid」での回転もやりやすくなるので、色んな角度から進化した形を実感しててもらえるかなと。



ちなみにゲーム方面と言えば、韓国発のスマホ向けゲームで『DESTINY CHILD』というのが発表されているんですが、すごく拘って作られていて、「Live2D」で作られたキャラがたくさん出てくるんですよ。

──具体的にどれくらいでしょうか。


東舘将之氏

東舘将之氏(取締役 / 事業開発担当):最初聞いた時には300体超えとかだったんですが、最近の発表だと500体くらいになったらしいです(笑)。

──「Live2D」で描かれたキャラが500体も!? それはかつてないスケールですね。


中城氏:今は、中国韓国で「Live2D」が広まり始めており、欧米では「FaceRig Live2D Module」を通してやっと知られたというな感じです。なので、これから「Live2D」を活かして世界に向けて発信していくものに注目が集まって欲しいですね。

──そのひとつが『DESTINY CHILD』なんですね。VRヘッドセットと「Live2D」の相性もいいと思うので、そちら方面での活躍も楽しみです。

中城氏:VRヘッドセットみたいなものも好きですし、世の中的にも盛り上がってきているので、この方面にも力を入れていきたいです。

──その方面でもやはり、「Live2D」ならではの魅力を突き詰める形ですか?

中城氏:3Dで作られた世界にヘッドセットに入っていくというのは、もちろんそこにドラゴンを出したりと刺激的な楽しみ方ができると思いますが、「3D空間に入る」ことそのものは実際の現実で既に味わっていますよね。なので、想像しやすいと言いますか、現実の延長線上なのかなと。

ですが、2Dのキャラが2Dのまま立体のような形でそこにいるような、いわゆる「漫画の世界」に入っていく体験を実現できるのは、VRヘッドセットと「Live2D」の組み合わせならではです。そういった“未知の世界”を体験できてこそ、新しい技術と呼ぶべきものだと思っています。



──現実のような世界をVRで味わう「本物のような体験」ではなく、「本物では味わえない体験」が“VRとLive2D”の出会いで得られるんですね。実にワクワクしてきます。

中城氏:魔法のような技術ですよね(笑)。「入れる2次元」とでも言いますか。

──入ってみたいですね、2次元!(笑)

《臥待 弦(ふしまち ゆずる)》

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