報酬の形を取らないインナーリワード:「誇り」「理想」欲求の考察・・・「世界を面白くするGamification」第69回 | GameBusiness.jp

報酬の形を取らないインナーリワード:「誇り」「理想」欲求の考察・・・「世界を面白くするGamification」第69回

インナーリワードを探求する本シリーズ、今回は欲求のうち「誇り」「理想」について考えてみましょう。

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インナーリワードを探求する本シリーズ、今回は欲求のうち「誇り」「理想」について考えてみましょう。
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5)誇り

「人としての誇りを求める欲求」はどのようなときに満たされるでしょうか?これはかなりの難題ですね。「誇り」とは非常に内的なものですし、他人から見てもその人が誇りを得ることが出来ているかは非常に判別しづらいものがあります。一般的には誇りが満たされている状態とは、何かしら自分自身が取り組んだことに対し高い満足感を感じることが出来ている状態と言っていいかと思います。社会的に大きな意義があったと思えること、自分なりに全力を出して取り組んだと言えること、など「誇りを感じる」のは自分自身の内的なものであって、外から何かを言われたから誇りが感じられるようになるということではあまりないような気がします。

以前も取り上げた例ですがオリンピックで金メダルを取れば、それを成し遂げた自分を誇りに思うことが出来るでしょう。自分の子供が小学校の学芸会で主役になれば、我が子を誇りに思うでしょう。自分が勤める会社が社会的に大きく認められるようなことがあれば、それもまた誇りに思うことが出来ると思います。

このように考えてみると誇りを感じる対象というのは自分自身にかぎらず、自分に非常に近しい人や組織・チームのような集団も当てはまることがわかります。そして何か社会的に大きな事・意義のあること、あるいはまた努力を傾けた結果が出た時に感じることが多いように思えます。

インナーリワードとしてこれを考えてみると、誇りが感じられる瞬間自体がリワード性が強いため、それを象徴するもの・その瞬間を記憶に留めておけるようなものがインナーリワードとして機能しそうです。ありきたりではありますがシーンを記録した写真のようなもの、その出来事に紐付いたメダル・トロフィーや賞状のようなもの、といったものがあり得るでしょう。

ゲーミフィケーションのリワードとしてこれを考えていくと、どんなものを付与するかということよりもどうやって誇りが感じられるような瞬間を作り上げるかということにフォーカスを当てることになります。ユーザが努力を傾けていること、その結果が出た瞬間、そういう状況を作り上げるようなゲーミフィケーションデザインが求められることになります。これは言うは易く行うは難しで、相当に難易度の高いゲーミフィケーションデザインです。利用者の目的を理解することはもちろん、利用者にとって強い達成感を感じられる瞬間を理解し、それがサービスの中で発生するようにする必要があります。

6)理想

「理想」といっても幅が広いのですが、スティーブン・リースによれば「社会正義を追求したいという欲求」と説明されていますので、この定義で考えてみましょう。こちらも前回のポストで考察したように「秩序」と少し似た性質がありそうです。秩序欲求は、秩序が保たれていないことに対してそれを何とかしたいという性質の欲求ですが、理想も理想が満たされていないことに対して何とかしたいという性質になります。

ただ、理想の場合はそれが100%満たされるというのは、テーマが社会正義という大きなものであれば、基本的にあり得ないこととなってしまいます。なのでこちらも飢餓を感じるタイプの欲求と言えそうです。

このような理想欲求を満たすインナーリワードとしてどのようなものがあるでしょうか?理想の場合、目指すべき状態というものがある程度あると考えられますので現在の状態と理想状態までの距離を可視化するということがまずは必要になります。その上でその距離が縮まっていっていること、ユーザが何かをしたことによって理想の状態に相対的には近づいていっていることを感じさせてあげる事がインナーリワードとして機能するでしょう(実はこう考えていくと、「社会正義」としての理想の姿に限らず、自分自身あるいは自分のチームといったもっと狭い範囲における理想としても同様のインナーリワードが機能しそうですね)

さて、ここまでで6つの欲求について考えてきました。当初、僕自身インナーリワードとして機能させるものとしては具体的には称号やメダルのような、象徴性の強いものが中心になるのではないかと考えていました。ただ今回の2つでも見たような、誇れる瞬間を記録することであったり、理想へ近づいていることを可視化したりといったこともインナーリワードとして機能しそうなことがわかってきました。こうしたインナーリワードは、言葉通りの「リワード」性、つまり報酬として何かがもらえるという感覚は非常に小さくなります。例えばWeb上でこれを表現することはそれほど困難ではなさそうですが、サイト内の1機能という形になりそうな気がします。

ただ本来インナーリワードというのはそういうものなのかもしれませんね。自分自身の内的な満足感が実感できるような仕組みそのものがインナーリワードと言える、ということになりそうです。
《深田浩嗣》

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