カプコンはデジタル好調で増収増益、ただし『エグゾプライマル』で完全新作の難しさ露呈か【ゲーム企業の決算を読む】 | GameBusiness.jp

カプコンはデジタル好調で増収増益、ただし『エグゾプライマル』で完全新作の難しさ露呈か【ゲーム企業の決算を読む】

カプコンが今期の業績を予想通りに着地すると、4期連続で2桁増収増益を成し遂げることになります。業績は極めて堅調ですが、上半期の決算内容からは課題も見えてきました。

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カプコンの2024年3月期第2四半期(2023年4月1日~2023年9月30日)の売上高が前年同期間比52.7%増の749億3,400万円、営業利益が同54.5%の338億3,500万円と、大幅な増収増益となりました。

カプコンは今期の売上予想を前期比11.2%増の1,400億円、営業利益を同10.2%増の560億円と予想。この2桁増収増益という強気の計画に対し、通期売上予想に対する進捗率は53.5%(前年の進捗率は39.3%)、営業利益の進捗率は60.4%(同43.8%)と好調に折り返しました。

カプコンが今期の業績を予想通りに着地すると、4期連続で2桁増収増益を成し遂げることになります。

このように業績は極めて堅調ですが、上半期の決算内容からは課題も見えてきました。

「デジタル×人気IP×グローバル」の巧みな戦略

同社のコンシューマー向け販売本数は右肩上がりの成長を続けています。

2024年3月期 事業戦略資料より

世界的に「パッケージ販売からデジタル販売へ」という流れがある中、カプコンも以前からデジタル販売を強化しています。ゲームタイトル販売本数のうちデジタル販売が占める割合は増加し、2019年3月期には60%、2023年3月期には89%となりました。

カプコンはこの「デジタル化」に、同社の強みでもある人気IPを掛け合わせることで、巧みな戦略を取っています。『モンスターハンター』や『バイオハザード』といった主要な人気シリーズにおいて、新作を投入するだけでなく、過去作品の本編・追加コンテンツのDLC、HDリマスター版を積極的に販売。熱心なシリーズファンを多角的に囲い込んでいるのです。

実際に、2015年3月期には46.2%だった「販売本数における旧作比率」は、2023年3月期には70.3%まで増加しました(上図 黄色のグラフ)。今期は79.3%を目指しています。

また、SteamなどのPCプラットフォームを活用することでグローバル展開も加速しており、過去5年間で販売する国・地域は218から230へ増加。各地域に合わせたマーケティング戦略を強化し、着実に成長しています。

もちろん今期もその戦略は変わっていません。後述する新作に加え、『バイオハザード RE:4』や『モンスターハンターライズ』などのリピートタイトルのデジタル販売が好調に推移し、売上を支えました。

デジタル販売は原価がほとんどかからず、低単価でも利益が出るという特性があります。このデジタル戦略は奏功しており、営業利益率は40%台まで高まりました。

決算短信より

ライセンスビジネスで効率的に稼いでいるスクウェア・エニックスの営業利益率は、20%に届いていません。カプコンはゲーム会社の中でも稼ぐ力の強い会社だと言えます。

eスポーツの種目に決定していた『ストリートファイター6』

カプコンのゲーム開発と販売を行うデジタル事業の2024年3月期上半期の売上高は、前年同期間の1.7倍となる612億7,500万円、営業利益は1.6倍の345億300万円に跳ね上がりました。

大幅な増収増益を支えているのが、2023年6月2日にリリースした対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』です。リリースから5日後に全世界で100万本を突破するヒット作となりました。

「ストリートファイター」シリーズ最新作『ストリートファイター6』本日より発売!より

『ストリートファイター6』は2023年9月末時点で247万本を販売しています。

このシリーズは『ストリートファイター2』が全世界で630万本販売するメガヒット作となったものの、その後は目立ったヒット作に恵まれませんでした。カプコンは各タイトルの販売本数を公開していますが、2023年6月末時点で『ストリートファイター』シリーズの販売本数は5,200万。人気を獲得しているのは間違いありませんが、タイトル数は98にも及びます。

『スト2』の630万本と『スト6』の200万本を引いて、1本当たりの販売本数を割り出すと46万ほど。ゲームファンなら誰もが知るシリーズですが、2のリリース以降は爆発的な人気を獲得するまでには至りませんでした。

その要因の一つとして、古参プレーヤーにファンが固定されてしまい、ビギナーに裾野を広げられなかったことがあると考えられます。

『ストリートファイター6』はコマンド入力をせずに自動コンボもできる「モダン操作」を導入しました。更に練習用モードを充実させ、初心者でも楽しめる工夫が凝らされています。

ヒットした背景には、ビギナーに照準を合わせたことがあるでしょう。

同作のヒットに後押しされる形で、カプコン主催の大会『CAPCOM Pro Tour 2023』をはじめとするeスポーツシーンも人気を博しています。プレイブレーン社の発表したデータによれば、2023年7月~9月の『スト6』関連の累計視聴時間は2億分を突破。大会別の累計視聴時間ランキングにも同タイトルの大会が複数ランクインし、「eスポーツにおける『ストリートファイター6』の人気が確立」したと評価されています。


開発費の負担が重くヒットも難しい完全新作の開発

ただし、すべてが上手く行っているわけではありません。


《不破聡》

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