【CEDEC 2015】『ベヨネッタ2』におけるインタラクティブミュージック~プラチナゲームズ流のWwise活用法 | GameBusiness.jp

【CEDEC 2015】『ベヨネッタ2』におけるインタラクティブミュージック~プラチナゲームズ流のWwise活用法

ゲーム開発 ミドルウェア

【CEDEC 2015】『ベヨネッタ2』におけるインタラクティブミュージック~プラチナゲームズ流のWwise活用法
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プラチナゲームズ株式会社 開発部 リードミュージックコンポーザーの上田雅美氏と、開発部 技術戦略室 サウンドプログラマー木幡周治氏は、CEDEC2015の講演で『ベヨネッタ2』(発売元:任天堂株式会社)でのBGMの演出方法の実演および実装部分の解説を行いました。

上田雅美氏は過去に『バイオハザード1~3』『デビルメイクライ』『ビューティフルジョー1~2』『大神』などアクションゲームの作品を幅広く手掛けるコンポーザーで、木幡周治氏はプラチナゲームズ株式会社内唯一のサウンドプログラマーとしてシステム・ツール・エフェクトプラグインなどの開発を担当しています。

今回の講演アジェンダは以下の通りです。

・Wwiseを選んだ理由
・実装スペック
・実装工夫をしたところ
・Interactive Music実装事例
・社内製ツール&プラグイン紹介
・まとめ

WwiseとはAudiokinetic社から発表されているゲーム開発用インタラクティブサウンドエンジンで、これまでアーティストとプログラマーの間で分業化されていたBGMや効果音実装のワークフローを改善し、より簡単にサウンド演出上の様々な仕掛けを実現することを可能としました。今回の講演は予めWwiseに関しての基本情報がある方向けの、専門的かつ具体的な導入事例の紹介となりました。

『ベヨネッタ2』でWwiseが選ばれた理由



講演ではまず今作の開発でWwiseが選ばれた理由が説明されました。Wwiseを使用する以前はプログラマーがフレーム単位での調整をしており、実装する人によって精度や作業時間にばらつきがあったため、待ちの時間が発生しがちでした。しかし、「導入後はWwiseへの実装に割く時間こそ増えたが、慣れさえすれば自分だけでスピーディにBGM演出に関するトライアンドエラーを行えるようになり、特に演出面におけるメリットが非常に多い」と上田氏は言います。


状況を判断して音声をインタラクティブに制御可能。実装バグに素早く対応できるサウンドキャスター機能も非常に便利とのこと。



本作ではBGMを管理するアセット数が263にも及び、そこで使用される楽曲数は183曲(サウンドトラック準拠)にも達する。BGMはステレオ3本(6ch)、SEを含めて瞬間最大32ch使用。


Wwiseイベントの自動コールなど実装上の多数の工夫



実装上で工夫したところとして、フェーズシステム(自社エンジンのゲーム進行管理システム)による自動コールが取り上げられました。『ベヨネッタ2』ではBGMのWwiseイベントは1700個ほど、自動コールされる数は600個とのことで、ゲーム上頻繁にコールされるカテゴリに関しては命名規則に従ったWwiseイベントが自動でコールされる仕様となっています。


オーディオバスの階層についての説明。さまざまなゲーム中の状況が予め用意されている。


各バスの名称も工夫されており、例えばIn Water Duck(水中、音がこもる)Barrier Duck Music(戦闘結界、フィールド操作中に敵と遭遇した際のもの)など「何に反応するか」という観点から名前が付けられていて、閲覧し易いように工夫されています。二重でダッキングされている理由は、バトルBGM→環境音→フィールドBGMと推移させるためで、戦闘終了時に環境音のダッキングが解除され、その後にBGMが戻って来る仕組みとなっています。バス構造は非常に複雑化していますが、結果として再生音の経路切り替え動作を音が鳴っている最中でも動的に行う事が出来るようになっています。また、カラフルに色分けされたイベントコール履歴をゲーム画面に表示し、どのタイミングで何がコールされているのかを視覚的に分かり易くする工夫もしていました。緑色は自動コールされているもの、オレンジ色はモーションなど、一見して「ゲーム内で何が起こっているのか」が理解出来るような仕組みになっています。


インゲームでイベントコール履歴が全て表示されることにより、「いま何が起こっているのか」が瞬時に分かるようになっている。


Interactive Music-動的なBGM制御の実装-



例えばフィールド画面からメニュー画面に入った時は、BGMにディストーションを掛け、ループ素材のレコードノイズをレイヤーして再生していますが、「こうした少し込み入った演出も簡単に実装出来るのがWwiseの強み」と上田氏は言います。ゲーム中にポーズする際も、曲毎ではなくシーン毎にポーズリクエストに反応するかどうかを決めているため、ループミュージックはポーズ画面中も途切れる事なく再生されます。また、『ベヨネッタ2』ではシーンで再生されるBGMが導入部分とクライマックスなど一曲の中でも複数に分かれており、ゲームの進行度に合わせてこれらが曲頭に帰ること無く次々に変化していきます。サウンドギャラリーではユーザーがBGMの展開を自由に操作でき、たとえば導入部からクライマックスへ一気に遷移させるといった操作が可能です。ユーザーがインタラクティブにBGMを操作出来るという、まさにゲームならではの新たな試みと言えます。


この場面のBGMは3つのパートに分かれており、画像では3番目のBGMが再生されている。ユーザーはBGMの展開を自由に操ることができ、BGMもシームレスに変化していく。


続いてはボス戦闘時のBGM遷移のデモンストレーションが行われました。対象となったのは高層ビルにしがみついているボスとの戦いで、ボスの体力値および特定ポイントに移動することでBGMが推移します。ビルの中腹(Region2)や頂上に差し掛かる(Region3)とBGMがシームレスに遷移し、体力が減った時にはクライマックスBGMに遷移するなど、ゲームの進行度に合わせて楽曲が途切れることなく展開しているように再生されています。


ボス敵との戦闘シーン。序盤はRegion1のBGMが流れ、戦況が変わるにつれて音楽も変化して行く。


また、フィールド移動時も同様に、広場や大橋に移動した際にそのフィールドのBGMに遷移し、地上戦がスタートした段階でも戦闘BGMに遷移するなど目まぐるしく楽曲が展開しているにも関わらず、ユーザーはそれを意識することなく「自分の操作と音楽の展開がマッチしている」というダイナミックな音楽体験を与える事が出来ていると説明されました。

制作を助ける3つの社内製ツールの紹介



続いては木幡周治氏より、社内製ツールの紹介がありました。



最初に紹介されたのは、DAW上でのマーカー情報をWaveファイルに書き込み、そのままWwiseに実装する「インポーターツール」です。制作したBGMにDAW上でマーカー情報を付与、その後マーカートラックをxml形式でエクスポートした後にBGMの波形とxmlファイルをインポーターツールで読み込むと、波形が分割されリージョン情報が付加される仕組みです。これによって実装作業速度が格段に向上しています。



また、全てをWwise上で処理しようとするとイベント総数が莫大になり、難解な実装になってしまうという反省点をもとに開発された「マクロツール」ではイベントの条件分岐による一元管理が可能で、条件変更のリスクとチェックのコストが明確になり大変便利になったと木幡氏は言います。



最後に紹介されたのは、2chステレオから5.1chサラウンドへのアップミックスを行う社内製のアップミックスプラグインで、パラメータ操作時のノイズの発生がなく、リアルタイム操作が出来るWwise内で利用できるプラグインです。元の楽曲や逆位相の音源をどの位置のスピーカーから再生するかといった設定やローパスフィルターを備えたLFEセンドなどが利用可能で、『ベヨネッタ2』ではBGM用と環境音用の2基搭載されています。


Wwise上で使用できるアップミックスプラグイン。ゲーム内パラメータで再生状況を可変することができる。


これによりサラウンドミックスをしなくて良くなる=2MIXを作るのに集中出来るという観点からコンポーザーの補助となり、また誇張したサラウンド演出も可能になる点も大きなメリットとなりました。また、ゲームパラメーターでオートメーションが書けるため、例えば「BGMの定位を狭めて行く」「環境音を回転させる」といったことが容易に設定する事が出来るようになります。

まとめ-Wwiseがもたらした恩恵





インタラクティブミュージックはコンポーザーと実装担当の連携が必須ではありますが、「WwiseによってBGMによる演出が容易になったことで、やり方次第では作る楽曲の数が減るかも知れないし、まとめて作る事でむしろ作業自体が楽になるかも知れない」と上田氏は言います。また、こうした試みは敷居が高いと思われがちですが、ツール側で極限までやり易さを追求することでコンポーザーもやる気を出し、結果的に良い演出になる可能性が高まります。


ポイントを移動させることで途切れることなくBGMが8bitサウンドに変化


最後に、現在研究開発中であるという「トーンフィルター」のデモが行われました。こちらは音程を検出して矩形波に置き換えるプラグインになるとのことで、現在は事前に作成した8bitバージョンに最終段でクロスフェードされる仕様でしたが、行く行くは全自動で8bitサウンドが作れるようになるようになるかも知れないとのことで、会場からも拍手や驚きの声が上がるなど大いに盛り上がった講演となりました。

《神山大輝》

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