新しいコンテンツを創るということ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第34回 | GameBusiness.jp

新しいコンテンツを創るということ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第34回

7月24日、私が企画運営する「黒川塾」が25カ月で20回の開催を迎えることができました。

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7月24日、私が企画運営する「黒川塾」が25カ月で20回の開催を迎えることができました。
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7月24日、私が企画運営する「黒川塾」が25カ月で20回の開催を迎えることができました。

初めて開催したのが2012年の6月22日ですので、25カ月経ちました。ひとえに登壇していただけたゲストの皆様、そして足を運んでいただきましたお客様のおかげです。さらに、ボランティアにも関わらず応援してくれる多くの友人、知人たちの支えに依るものと感謝しております。

さて、今回の黒川塾二十(20)ですが、個人的にも思い入れのあるゲストに登壇いただきました。

一人目は、私がレコード会社で働いていた1980年代からの憧れの存在である丸山茂雄氏です。丸山氏はソニーミュージックの前身であるCBSソニーで営業・制作で辣腕をふるい、その後、エピックソニーを創業、ソニー・コンピューターエンタテインメント(以下・SCE)の創業にも立ち会い、取締役会長を務められました。

もうひとりは同じくCBSソニーを経て、SCEの創業に立ち会われた佐藤明氏。佐藤氏はプレイステーションの営業面全般と自社内コンテンツの開発制作の責任者として活躍しました。当時、私と佐藤氏との接点はありませんでしたが、私がデジキューブに勤務していたときに、SCEのソフトを仕入れる営業担当者から佐藤氏のお名前はよく聞かされていました。

そして、松浦雅也氏はCBSソニーでの「PSY・S」での活躍は十分すぎるほど存じ上げていました。

当時はまだ珍しかったシンセサイザー(フェアライト社製)を駆使した楽曲を制作されて、80年代のバンドカルチャーが熱気を帯びていた時代に、デジタルポップを前面に押し出したユニットは新しい音楽のありかたを見せてくれたと思います。そして、松浦氏との接点は、SCEが開発制作した『パラッパラッパー』をデジキューブが積極的に販売したことです。

当時はコンビニエンス・ストアという流通自体が、あまり受け入れられておらず、そのなかで新しいお客様に、新しいソフトを売ろうという気概をもって臨んでいたこともあり、ジャンルとして珍しかった音楽ソフト『パラッパラッパー』を積極的に販売しようとしたことを今でもよく覚えています。

今回の黒川塾はその当時を振り返りつつ、新しいコンテンツを生み出すということはどういうことか、そしてそれを制作(プロデュース)することとはどういうことかを語っていただきました。そして、私自身の人生を遡るという二重の意味を含んだ内容になればと思って企画したものでした。


黒川塾二十(20)に登壇した面々。左から黒川、佐藤氏、丸山氏、松浦氏


1986年、私がまだレコード会社の営業マンで北陸地方のレコード店を営業巡回していた頃、ソニーから廉価盤CDデッキ・CDP-510(49.800円)が発売されました。(当時のCDデッキの一般的な価格は7-15万円)そのCDP-510は、尾崎豊・渡辺美里・バービーボーイズ・もちろんPSY・Sを含むニューミュージックCDの再生マシンとしてレコード店を中心に販売を活性化させていました。それはCBSソニー(ソフト)とソニー(ハード)の見事な戦略だったと記憶しています。このあたりに、のちにプレイステーションの販売戦略を彷彿させるものがあります。まさにアナログからデジタルへという大きな波が押し寄せている時代でした。

そのような時代の進化の過程においてこそ生まれる別のエンターテイメントがあるのではないでしょうか。そしてその進化の中から生まれたエンターテイメントを再び技術が追随することでまたそこから何かが生まれてくるということを丸山氏も示唆しています。

現在、丸山氏はK-POP「少女時代」の宣伝プロデュース実績もあり「ミュージックビデオでアーティストを魅力的に見せると、音楽とはまた別の新しいエンターテイメントが生まれてくる」というお話もしていただきました。

松浦氏は『パラッパラッパー』の制作過程においてゲーム開発の経験がなかったこともあり、試行錯誤したとのことでしたが、「仕様書もなく、音楽制作型のスタジオで創り上げていく感覚で開発を進めていた」というエピソードを披露してくれました。それを開発と営業面で佐藤氏がバックアップしたのは、従来のRPGタイプの定番ゲームばかりではなく、新しいジャンルを積極的に打ち出していく必要を感じていたことに由来するといいました。それが、丸山氏や佐藤氏の連携と、久夛良木氏の設計した初代プレイステーションの上に見事に花を咲かせ、最終的にはミリオンを超えるヒットになったことは誰しもが知ることです。

佐藤氏は「(同業での)比較対象や前例のない立ち上げ時の仕事は楽しいもので、そのモチベーションの高さがSCEの成功の背景にある」と語り、松浦氏は「新しいヒントを見つけないと自分を含めたソフトは沈んでしまうと思い、音楽を維持するだけではなく、拡張する部分も自ら見いだして行った」と語り、丸山氏は余命3ヶ月と宣告されてから、すでに3年以上にわたり元気に活躍されています。そのモチベーションを最後に丸山氏は「新しい才能溢れるクリエイターと巡り会える機会が減っているが、もう一回捕まえたい」と語りました。

型にはまった何かを求めることではなく、仕様書に囚われるものではなく、素人集団ならではの新しい発想や制作、販売、新人発掘、現状打開、進化、拡張、推進力、熱量など示唆に富んだキーワードやエピソードが多く語られ、古いものにこそ新しいものが溢れていると感じた90分間でした。

■著者紹介

黒川文雄
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。

現在は、インディーズゲーム「モンケン」、東映アニメーションのスマートフォン向けゲーム「円環のパンデミカ」を手掛ける、また全日空公式映像ソフト「ANA747 FOREVER」を製作。
「円環のパンデミカ」公式サイト

ツイッターアカウント ku6kawa230
ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』
ニコニコチャンネル 黒川塾ブロマガ」も更新中。
《黒川文雄》

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