「遊び」を福祉施設に展開、そこからゲーム業界が学べるもの・・・「小野憲史のゲーム評評」第11回 | GameBusiness.jp

「遊び」を福祉施設に展開、そこからゲーム業界が学べるもの・・・「小野憲史のゲーム評評」第11回

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父親の一周忌で11月の連休に、実家の山口県に帰省したのですが、その際に山口市郊外にある「夢のみずうみ村」を見学してきました。たまたま国道が工事中で通行止めとなっており、迂回路を進んだところ標識に出くわしたという、偶然が重なっての訪問です。新聞記事や講演などで以前から関心があったため、まさに渡りに船でした。

「夢のみずうみ村」は、高齢者や療養者が自宅から通いながら治療やリハビリテーションが受けられるデイケアセンターです。最大の特徴は地域通貨の「ユーメ」を発行しており、あらゆるサービスにユーメが必要になること。逆にリハビリで一定の目標に達するなど、ユーメを稼ぐ手段もさまざま。夕方から麻雀やオイチョカブなどの「賭場」が開かれ、ユーメをかけて遊ぶこともできます。

施設内も医療関係というより縁日のような賑々しさで、いたるところにパズルなど、遊び感覚でできるリハビリ向け遊具がおかれています。当日も朝10時の開場と同時に訪れた通所者であふれ、大変な活気でした。

もっとも、この施設が優れているのは、そうした表層的な部分だけではありません。個人的に興味深いのが、「遊び」の精神を巧みに取り入れているところです。

代表者で作業療法士である藤原茂先生は、通所者に自発的にリハビリに取り組んでもらうために「心のほぐし」という概念を提唱されています。これは「とりあえずやってみよう」と思わせるさまざまなテクニックで、ユーメや賭場などもその一つ。その上で「達成感のシャボン玉」「有能感のゴム風船」「生きがいアドバルーン」という3つのステップを通して、少しずつ達成感を積み上げていくことを体系化されています。そこにはゲームデザインとの関連性が感じられます。

ゲームの実用領域への応用というと、DSの知育ゲームやシリアスゲームなどの「製品」が思い浮かびます。しかし、ここでは施設ぐるみで「遊びの精神」がうまく生かされており、ゲームセンターやテーマパークに通じる「場の力」が感じられました。さらに一番良かったのが、アポイントなど取っていなかったにもかかわらず、温かく見学させていただけた開放性と、職員の皆さんのモチベーションの高さ。ゲーム業界としても、非常に参考になるように感じられました。
《小野憲史》

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