歴史の中で位置づけるコンテンツ研究 〜コンテンツ文化史学会例会 | GameBusiness.jp

歴史の中で位置づけるコンテンツ研究 〜コンテンツ文化史学会例会

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コンテンツ文化史学会(会長 吉田正高氏)の第1回例会「コンテンツと場所」が、6月28日に芝浦工業大学 豊洲キャンパスで開催されました。このコンテンツ文化史学会は、2009年4月に設立された新しい学会です。

冒頭、会長の吉田氏は挨拶の中で、「個々のコンテンツの作品論ではなく、その作品が置かれていた時代背景や風俗、環境、歴史性関係性に注目していくことも重要だが、こうした研究は個人の手に負えるものではない」として、学会設立にいたった経緯を説明しました。

その後、ものつくり大学の土居浩氏による「ライトノベル[の/と]場所研究」と、東京大学の玉井建也氏による「異界・リアリティ・聖地」の2つの講演が行われました。

土居氏の講演は、ライトノベルの描く舞台が「日常」と「非日常」でどういった配分になっているかを定量的に把握する手法(行数やページ数で場面配分を計量する)を、小説「涼宮ハルヒの暴走」に収録されている「エンドレスエイト」に適用したケースをレポートするものでした。近年、ファンタジーやSFのような「非日常」な世界から、学校など「日常」の世界を舞台にするものに主流が移ってきたね、という感覚を数字で裏付けるものです。コンテンツの横断的な比較や異なる時代の作品の比較を行うにはこうした定量化が必要で、すでに古典などを対象にした人文地理学という学問分野も成立しています。ただし、「涼宮ハルヒ」シリーズのような特別な能力を持ったキャラクタが活躍するライトノベルの場合、能力が発揮されている場面は「日常」か「非日常」かという難しさがあり、研究者の主観判断を排除すべきかどうかは議論になるとのことです。ゲームに引き寄せると、ノベルゲームなら文字量、アクションやRPGならマップ面積などで定量化できるのかもしれません。

玉井氏の講演は「聖地巡礼」がテーマ。地域社会を機軸に歴史学的な視点から、TVアニメーション「かみちゅ!」とコミック「朝霧の巫女」を取り上げて考察したものです。「聖地巡礼」には土地の歴史性を楽しむ面があり、「かみちゅ!」と「朝霧の巫女」はいずれも神社がその中心にあることが特徴とのこと。「聖地巡礼」で話題となった「らき☆すた」や、さかのぼれば「セーラームーン」のケースも神社にまつわるものでした(神社などが中心にない「聖地巡礼」として「おねがいティーチャー」などがあります)。

もっとも、何らかのコンテンツをきっかけにした観光は急に登場したわけではなく、大昔から和歌の「歌枕」の地を訪問するなどの形であったとのこと。また、「かみちゅ!」の舞台、尾道は映画の舞台として訪問するファンも多く、アニメーションだから特別、ということでもないようです。また、「シャーロック・ホームズ」のべーカー街221Bの例もあります。ファン心理からくる「聖地」感覚は時代的にも地理的にも、広くある心理のようです。

ゲームに引き寄せると、ゲームの中で描かれる土地のみならず、背景素材に使われた場所などもファンにとって「聖地」となりうるでしょう。画面解像度やプレイヤーとのインタラクション具合で「聖地巡礼の起きやすさ」の違いもありそうです。

コンテンツ文化史学会は、幅広いコンテンツを対象とするとのことで、そこにはゲームも含まれているとのこと。今回の例会ではライトノベルとアニメーションが主に取り上げられましたが、今後はゲームについても研究が進められることを期待したいところです。ゲームについて調査や研究に興味のある方は、このコンテンツ文化史学会に参加してみてはいかがでしょうか。
《伊藤雅俊》

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