【今どきゲーム事情】中村彰憲:「歴女」って何だ?! 戦国アクションゲームをとりまく動向を徹底解明!〜キーワードは「もてなし」と「地方とのコラボレーション」〜 | GameBusiness.jp

【今どきゲーム事情】中村彰憲:「歴女」って何だ?! 戦国アクションゲームをとりまく動向を徹底解明!〜キーワードは「もてなし」と「地方とのコラボレーション」〜

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ここ数年、戦国時代を舞台とした“一騎当千型3Dアクションゲーム”がマーケットを沸かしています。そして、一般のゲームファンに加え、多くの若い女性がハマッていることが、多くのメディアで話題になっています。今回は、歴史ジャンルにおけるあらたな潮流とも言える「歴女」(れきじょ)に注目。歴史ゲームを取り巻くさまざまな状況を取材しました。

■『戦国BASARA』キャラクターが地域特産物の人気を底上げ

本コラムでも何回か取り上げている『戦国BASARA』シリーズですが、このゲームをきっかけに、宮城県、特に仙台市や白石市がたいへん盛り上がっています。同シリーズは、一番人気のキャラクターの一人に挙げられている伊達政宗と、その腹心として『戦国BASARA2』より登場し、『戦国BASARA2英雄外伝(HEROES)』からプレイ可能なキャラクターとなった片倉小十郎のゆかりの地であるということから、若い女性を中心にたくさんの人が訪れているのです。歴史や戦国武将に憧れを抱き、これらの関連コンテンツを積極的に購入し、ゆかりの地を訪ねたりする、いわゆる「歴女」(れきじょ)による効果です。

このような流れに地元メーカーも関心を持っていたのですが、『戦国BASARA』がプロダクションI.Gの手によってTVアニメ化されたことで戦国コンテンツの商品化への気運が一気に高まりました。プロダクションI.Gが地域との連携を宮城県の産業振興課に働きかけ、2月下旬に、宮城県庁で作品の商品化および販売戦略に関する説明会を開催したのがきっかけです。130人ほどの来場者のなかから、数多くの人たちが興味を示し、さまざまなグッズの商品化につながりました。地場産業との連携で生まれた商品とはいったいどんなものなのでしょう? ここからはそのいくつかを紹介していきます。

■ゲームで地ビールが全国区に?! 伊達政宗麦酒

「3月のネット販売は、昨年度比(2008年)で15倍に拡大しました。実売も新規取扱店が増えてプラスになっています」とは、長沼環境開発社長の佐藤倫教氏。奥州仙台伊達政宗麦酒のことです。もともと、2007年頃から、人気が伸びてきた理由もゲームにあると実感していましたが、決定的だったのは、ファンから片倉小十郎ラベルのビールを造ってほしいという要望が多数寄せられたとき。2008年には、要望に応える形で販売しました。

TVアニメ化の際はプロダクションI.Gから早々に商品化のオファーを受け、「戦国BASARA TVアニメーション放映記念ラベルビール」の販売までこぎつけたとのことです。「反響は?」との筆者の問いに、「地ビールは、これまで年配で余裕がある人たちだけに楽しまれる傾向にありましたが、若い女性の方の購入が多くなっている。ちょうど当社の地ビールは口あたりもライトで苦味も少ないビールでしたので、アニメやゲームをきっかけに弊社のビールも受け入れていただけたのは嬉しい」とニッコリ。『戦国BASARA』シリーズに関しては話題の事欠かない2009年、暑い日が続くこれからが、まさに書き入れ時ですね。

■秋葉原のど真ん中で売り出された「戦国BASARA米」。10日間で販売1トンを突破!

一方、5月末には、秋葉原のホビーショップコトブキヤ、ラジオ会館の店頭が通常とは違った雰囲気に包まれました。甲冑武者数名に囲まれた(?)中で販売されていたのが、なんとお米! 当日は、「戦国BASARA米」(以下、BASARA米)と「戦国BASARA笹かま」のお披露目ということで大変賑わいました。この仕掛人とも言えるのが、プロダクションI.Gの執行役員の郡司幹雄氏。BASARA米を前に多くの人が集まっている様子を満足そうに眺めていた同氏に、ここまでに至った背景をさっそく伺ってきました。

地域ブランドのビジネスチャンスはまさにこれからだと思っていたという郡司氏。『戦国BASARA』シリーズのTVアニメ化が決まったとき、「『戦国BASARA』であれば、地方の地場産品と関連づけた展開をすることでムーブメントを起こせる」と思ったそうです。それは、地域に戦国BASARAのキャラクターとなっている武将と関連づけられるものが数多く揃っている点にあります。「伊達政宗公が食していたり、使っていたりしたことを連想させるものであれば人気が出るはず」といった視点からBASARA米も生まれました。

2月末に宮城県庁で実施した商品化説明会当日に宮城県のお米メーカーであるパールライス宮城と交渉を開始。BASARA米には宮城県が現在もっとも力を入れている“環境保全米ひとめぼれ”を採用しているそうです。環境保全米は化学肥料や農薬の使用を県基準の半分以下に抑えた環境に配慮して作られたお米とのことです。

「実際に、若い人が喜々として購入する姿を、目の当たりにできました」と郡司氏。ただし、ここまで展開するための仕掛けも欠かせません。BASARA米発売の1週間ほど前にあたる5月15日から秋葉原キュアメイドカフェに戦国BASARAカフェをオープン。実際にBASARA米を使ったメニューを販売したのです。カフェのスタッフに味見をしてもらったところ、そのおいしさにビックリして、スタッフのなかにも購入する人がかなり出たそうです。戦国BASARAカフェには期間中約3000人の来客があり、土日は行列で2時間待ちになるほど盛況だったとのこと。「宮城米でピンとこなかった人でも、アニメをきっかけにおいしさを知ってもらえれば」と、これからの売れ行きにも期待を寄せているようです。

ただ、アニメキャラクターをパッケージのメインビジュアルにするということで、デザイン調整などは注意を払う必要があったとのこと。地場産業の人たちはキャラクタービジネスに関わった経験が少ないこともあり、きめ細かくアドバイスを与えたとのことです。「感覚的なものなんです。もともとキャラクタービジネスに関わったことがないので、なぜアニメのキャラクターをパッケージに使うとファンが買うのかというところが、実感として理解できない。もしかしたら、私がいろいろキャラクタービジネスに関して説明しているのを、“東京から来ているこの人たちは、何をわけわからないことを言っているんだろう”と思っていたかもしれません(笑)。やはり実際に発売して、売れ行きを見てはじめてキャラクター商品の効果を実感できたというのが正直なところだと思います」(郡司氏)

考えてみれば、日本全国の若年男女層を想定するビジネスと、地元の消費者を意識してのビジネスではまったく違うわけで、細かな意識のすり合わせが必要なのは当然と言えば当然ですよね。ですがこのような形で、コンテンツを作る側もそれを活用して新たなビジネスを創出する側も、双方がともにファンを楽しますことを意識すれば、おのずと利益に結び付くということにつながります。「もてなし」と「コラボレーション」の重要性を改めて実感できるインタビューでした。

宮城県庁の発表によると、BASARA米は発売から10日間で販売数が1トンを突破と、好調な売れ行きだとのこと。東京の宮城県のアンテナショップ「宮城ふるさとプラザ」でも販売を行っており、地方アンテナショップにはこれまで来店することのなかった若い女性の姿が目立つようになったそうです。

■戦国モノなら何でもござれ!歴史専門書房の時代屋を探訪!

このような、若い女性を中心とした歴史ブームの流れに乗って、流行の最先端を走っているのが歴史専門書店「時代屋」です。2006年に神田小川町店をオープンしてから、現在は、新百合丘、お台場、川崎、越谷レイクタウンに店舗を構えるようになりました。前述のBASARA米とのコラボキャンペーンが開かれていたもう1つの会場が神田小川町店の2階にある茶屋で、そこも秋葉原の会場と同様にファンでごった返していました。店内に流れる曲は、abingdon boys schoolの「JAP」。一般的な書店とはまったく違った異空間がそこにはありました。

「もともとは古書販売のチェーン店“ブックマート”が新事業を立ち上げようとしたとき、時代小説の売り上げがよかったという調査結果に着目したのが、時代屋のはじまりです」とは、快く対応してくれた大内学氏。時代モノといえば、江戸の人情モノから戦国モノと多岐にわたるのですが、これまで歴史ジャンルを専門的に扱う書店というのがなかったのです。

そこでファンの要望を調査したところ、新刊がほしい人もいれば、古書でもかまわないといった人、初版にこだわる人、絶版も希望する人など、実にさまざまなことが判明。これらのニーズに応じるのは、通常の古本屋では難しいということで、30代の社員を中心に事業部を立ち上げ、それが現在の時代屋につながったとのことです。雑貨もスタッフが全国各地から情報を集め歴史に関するモノを店舗に集結させるといったこだわりよう。最近では自社でオリジナル雑貨の開発もするようになったとのことです。

また、時代屋の名が全国に知れ渡るとともに、地方の物産店から商品の取り扱いに関するオファーも貰えるようになったとのこと。

取材に快く対応してくださった大内氏。両手には時代屋オリジナルの情報誌こちらも時代屋オリジナルのキャラクターグッズ。「ネクストひこにゃん」を目指す!

場所が神田というオフィス街で2階には茶屋もあることから、仕事の合間やお昼休みに少し休憩してから、本をついでに買っていく40代から50代の男性層が多かったという時代屋。女性が顕著に増えだしたのはここ1、2年とのことで、この変化はやはり戦国アクションゲームの流行と無関係ではないようです。

また、地方から、観光がてらに来店するのも時代屋の特徴。最初は、コンテンツ関連の大きなイベントの時期にあわせて女性客が増えたりもしたわけですが、今では、「時代屋」を目当てに週末に来られる方も多数いるということで、その名は歴史ファンを中心に確実に浸透しているようです。

ここまでの人気について、「潜在的に歴史を好きだった人はたくさんいたわけですが、そこに対してアプローチする書店というのはなかったんです。そこをオンリーワンとして狙ったことが今の成功につながっています」と分析する大内氏、もし、昨今の歴史ブームが去ってしまったら、という少し意地悪な質問にも「もともと、40〜50代の男性層は固定客として存在しており、これらの方々は時代小説をコンスタントに購入されます。さらに今回のブームで興味をもたれた方がすべて離れていくわけではありません。そんな老若男女すべての皆様に次のアプローチができるよう頑張ります」と歯切れよく答えていました。

■異業種とのコラボレーションに見るゲームビジネスの可能性

お米にビールに書店。一見ゲームとは何の関係も見えないところにこれからのゲームビジネスの可能性を見いだせるような気がします。“お米やビールで、ゲームやアニメをプロモーションしよう”という発想は通常考えられませんが、今回のコラムが示すように、地方や異業種とのつながりを広げることで自然と斬新なアイデアの実現へとつながっていくのには本当に驚きました。地方にとっても、このような機会は地域ブランドを確立するうえでもまたとないチャンスのはず。そのような意味からも、ゲームと、地域や異業種のコラボレーションが生み出す新たなトレンドからは目が離せません。
《中村彰憲》

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