アナログゲームをデジタルの世界へ―デジタルだからこそできるアナログゲームの新たな形を求めてオインクゲームズが模索したこと【CEDEC 2022】 | GameBusiness.jp

アナログゲームをデジタルの世界へ―デジタルだからこそできるアナログゲームの新たな形を求めてオインクゲームズが模索したこと【CEDEC 2022】

ボードゲームの良さをデジタルの世界で再現するにはどうしたらいいのか? 試行錯誤の中で見えてきたのは「デジタルだからこそできるアナログゲームの新たな形」でした。

ゲーム開発 プロデュース
(C)Oink Games Inc.
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コンシューマーゲームとして発売されている『レッツプレイ!オインクゲームズ』は、オインクゲームズが手掛けたボードゲームをデジタルに落とし込んだいわば「デジタル版」。

アナログなボードゲームの良さをデジタルの中で再現しつつ、デジタルならではの要素を加えて多くのユーザーや配信者に愛されている人気タイトルです。

収録されてるのは合計7種類のデジタル版アナログゲーム。

オインクゲームズが考案した「海底探検」「エセ芸術家ニューヨークへ行く」「スタータップス」「月面探検」に加え、無料アップデートで「この顔どの顔?」「藪の中」「ファフニル」の3本も遊べるようになりました。

最終的には大成功を収めたデジタル化ですが、開発段階では「ただデジタルに置き換えればいい」という安易な考えでは解決できない問題が次々と立ち塞がったといいます。

2022年8月23日から25日まで開催された「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2022」(CEDEC 2022)にて、8月23日に実施されたレギュラーセッション「ボードゲームのデジタル化への挑戦 - レッツプレイ!オインクゲームズの UI・ゲームデザイン」。

株式会社オインクゲームズのデジタル部でUIデザイナー・プログラマーを務める新藤愛大氏が登壇した本セッションでは、その『レッツプレイ!オインクゲームズ』にまつわる開発の試行錯誤についてUI(ユーザーインターフェース)とゲームデザインの視点で解説がされました。


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アナログの手触りと空気感を重視した開発コンセプト


本タイトルを開発したオインクゲームズは、2010年よりさまざまなボードゲームを企画・開発・リリースするゲームメーカーです。人が集まってワイワイと盛り上がるボードゲームの良さにこだわりがあるからこそ、これまでボードゲームのデジタル化には消極的でした。

しかし2020年より流行がはじまった感染症の影響で人が集まりづらい状況になり、ボードゲームという娯楽が危機に立たされていることを実感。デジタル化の道を模索しはじめます。

デジタル化にあたり、スタッフは3つの開発コンセプトを掲げることにしました。

1.人と会わなくてもプレイできるような環境づくり
2.人と人との関わり合いを邪魔しないゲームデザインにする
3.友だち同士で遊ぶことに集中できるものをめざす

オインクゲームズが考えるボードゲームの長所は、対面でプレイする際に相手から感じ取れる表情・動き・会話などのメタな情報です。それらをもとに相手の手の内を見抜いたり、駆け引きをしたりすることでプレイ体験をさらに向上させます。

これまではその「メタな情報」がボードゲームならではの要素だと考えていたためデジタル化には消極的でしたが、開発に踏みきったからにはそれらの「壁」を超える必要があります。そこで3つの開発コンセプトを掲げ、可能な限りアナログの手触りや空気感をデジタルでも再現しようとしました。

そうやって第一歩を踏み出した際のビジュアルが、ゲームの選択画面、初期実装ゲームである「海底探検」と「スタータップス」のサンプル画面です。

▲ゲームの選択画面。

ゲームの選択画面では、各ゲームのパッケージを並べた状態で「どれから遊ぶ?」とプレイヤーが選び取るようなイメージで仕上げました。その際、みんながワイワイと遊んでいるだろう遊技場の雰囲気を感じ取ってもらうため、あえて逆光の構図にしたそうです。

▲「海底探検」の初期ゲーム画面。コマを進めながら宝をより多く集めるゲームです。

「海底探検」では、コンポーネント(ダイスやコマなどのゲーム一式)を3Dで表現し、目の前にアナログゲームを広げているような見せ方が採用されました。その際、デジタルならではの「現実ではあり得ない演出」は避け、あくまで実際にアナログゲームをプレイしている感覚が再現できるようデザインしました。

▲カードゲーム「スタータップス」の初期ゲーム画面。

「スタータップス」も「海底探検」と同様、アナログの手触りにこだわりました。特に画面4隅にある得点用チップはデジタルの数字でも表現できましたが、あえて得点が移動するアナログな感覚を表現するためチップを置く仕様にしました。

このように「はじめの一歩」は難なく踏み出すことができました。しかし実際のゲーム開発が進むと、さまざまな「壁」が立ちはだかることになります。


《気賀沢 昌志》

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