Production I.G製作スタッフが明かす、『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』誕生までの道―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第45回 | GameBusiness.jp

Production I.G製作スタッフが明かす、『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』誕生までの道―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第45回

2016年は「VR元年」といわれ、本コラムでも後半の4回は全てVR関連になっていたことからゲーム業界のVRに対する高まりが如何に高かったかを示しています。

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Production I.G製作スタッフが明かす、『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』誕生までの道―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第45回
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Production I.G製作スタッフが明かす、「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」誕生までの道

左が郡司氏、右が前島氏

2016年は「VR元年」といわれ、本コラムでも後半の4回は全てVR関連になっていたことからゲーム業界のVRに対する高まりが如何に高かったかを示しています。2017年もその流れは留まることを知りません。2月には京都でVRに関するカンファレンスが開催され、2月18日にはVR/MRの未来を描いたことで有名な「ソードアート・オンライン」シリーズ最新作、劇場版「ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- 」公開が控えています。このように、VRは既にゲーム業界のみならず、アニメを中心とした映像業界も巻き込んだムーブメントとなっています。実はこの潮流に先駆けてのっていた会社にアニメスタジオの老舗、Production I.G(以下、I.G)があります。I.Gと言えば本誌の読者であればバンダイナムコが展開したVR ZONEのアクティビティ「アーガイルシフト」の監修をしたスタジオということでよくご存じなのではないでしょうか?

しかし、実は同社は2014年から、VR関連コンテンツの展開をずっと進めてきていたのです。そこで本稿は、その中心的役割を果たしてきた同社執行役員で企画本部長でもある郡司幹雄氏と同社企画室経営企画・広報グループの前島昌格氏から話を伺いました。

事の発端はOculus Riftとの出会い。

――まず、御社がVRに取り組むようになった経緯を教えてください。

前島昌格氏(以下、前島):2014年、とある会社の方の新年会に呼ばれ、GOROman氏が開発した「Miculus(ミクラス)」のOculus Rift Development Kit 2 (以下DK2)対応版を試したんです。初音ミクが等身大でそこにいるということに全然違和感を感じなかったことにただ驚きました。そのとき「あ、(これで空想の世界の)中に入れるんだ」ということでした。

更に2014年の春、DK2を正式に紹介してくれた企業がいたことも取組をはじめたきっかけとなりました。当時、弊社では、日本マイクロソフトさんと組んで3Dブラウザーゲーム「翠星のガルガンティア~君と届けるメッセージ~」を開発していた頃だったのですが、そのとき、アニメって3Dの素材をいっぱいつくるのに、終わったら使えなくなるからどうしたらいいかをちょうど考えていたんです。そこで、このプレゼンテーションを受けたときに考えたのが、DK2を使えば「アニメの世界に入れる経験を提供できるようになるよね」というのが私たちの印象でした。とりわけ向いていると感じたのが、SFアニメで、その当時つくっていたのが「宇宙戦艦ヤマト2199」(以下、「ヤマト2199」)でした。そこで、『ヤマト2199』のプロデューサーを務めていた郡司に体験してもらいました。

――そのときの体験はいかがでしたか?

郡司幹雄氏(以下、郡司):私は『ローラーコースター』のゲームを体験したのですが、まさにローラーコースターに乗っているように体が浮いた感覚を得るわけです。そこで思わず「コレはすごいな」と。可能性はあるなと感じたので、直ぐに会社に決済申請をとりました。数百万レベルのものでしたが。まずはタツノコプロの研究所でアニメータをやり、その後ゲーム開発に携わってきた経験を持つ前島1人でつくってもらいました。これは「ヤマト2199」を題材としたもので、宇宙戦艦ヤマトの船外をひとまわりするというものです。3Dデータの使用について委員会からの許諾もとり、台本もメカ設定の小泉聡さんに担当いただき、声優事務所とも交渉して劇場版映画「宇宙戦艦ヤマト2199星の方舟」(以下、「星の方舟」)の主役を務めることが決まっていた、中村繪里子さんにお願いしました。モブなどは我々スタッフが担当しました(笑)

前島:映画が2014年12月公開予定だったのですが、6月にデータをいただいて、11月22日~24日に大阪のアリオ八尾での実施を予定していたVRヘッドセット「DK2」による「ヤマト2199」 体験コーナー(以下、「ヤマト2199 VR」に間に合わせるように開発しました。ただ、実際につくっていたのは3か月で、その後は、ひたすらデータの微調整に費やしていました。もともと3DデータはサンライズD.I.D.様が制作したものなのですが、それをFBXファイルとしていただき、それを私のほうでUnityに組み込みました。もともとこれらのデータはアニメ用だったので、不要なリグやアニメにデザインされたテクスチャなどをVR向けに最適化するなどしていました。

――体験としてはどの程度のものを意識していたのでしょうか?

郡司:このときは、お金をはらってでも体験したいというのがどの程度なのか分からなかったので、10分位の体験を完全新作として作りました。話もオリジナルのものにして。ヤマトの艦外を周る途中で敵に襲われるものの古代進に救われ一安心というものだったんです。ひとつのお話ですね。

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

――お客さんの反応はいかがでしたでしょうか?

郡司:無料だったということもあるのですが、大行列が出来たりして非常に話題になりました。

前島:ただ、イベントとして、10分は長すぎたという印象でしたけど。

郡司:体験をしていただいた後に、お客様にどの程度の金額ならこの体験をしたいか確認していったんです。中には1回の体験で500円から1000円位払っても良いという方もいました。そして、どの程度のクオリティとボリュームであればお金を払ってでも体験したいものになるのか理解を深めていきました。同時に「これはイケる」と実感し、次により本格的に進めていったのが、「翠星のガルガンティア」でした。

前島:実は、私が「ヤマト2199 VR」を制作していた際、近くの席にすわっていた「翠星のガルガンティア」のスタッフが「何か面白いことやってますね。私たちにもやらせてください」と言ってきたんです。同作のOVA「翠星のガルガンティア ~めぐる航路、遥か~後編」のイベント上映及び販売が2015年4月に控えていたこともあり、2015年2月のワンダーフェスティバル(以下、ワンフェス)に何か出展したいとの要望があったことから、「Oculus Rift DK2」を装着してチェインバー搭乗体験できるコンテンツ(以下、「ガルガンティア VR」)を開発することになりました。プロジェクトをはじめたのが、「ヤマト2199」が終わった2014年12月からです。

――ということは、開発期間はたった2か月間ということですか!?

前島:「ガルガンティア VR」では企画段階から、イベント、つまりプロモーションで体験させることを前提としたので3分に短縮しました。また、アニメーション制作に携わった3D制作スタッフがそのまま協力してくれたので、私が担当したのはVRとして組み込むことに専念しました。AnimeJapan 2015では、チェインバーというロボットの1分の1スケール頭部モデルの中で、DK2をかぶりVRが体験出来るというものにしたのです。実際にチェインバーに乗って空を飛ぶというアニメのワンシーンを再現しました。本物の頭部に搭乗して体験するのでハマるだろうと思ってました。

(C)オケアノス/「翠星のガルガンティア」製作委員会

(C)オケアノス/「翠星のガルガンティア」製作委員会

(C)オケアノス/「翠星のガルガンティア」製作委員会

(C)オケアノス/「翠星のガルガンティア」製作委員会

(C)オケアノス/「翠星のガルガンティア」製作委員会

郡司:ワンフェス、AnimeJapan 2015などで出展していきました。両方とも盛況でしたが、AnimeJapan 2015のときは凄まじい大行列でした。最大2時間待ち位にはなってましたね。『ヤマト2199 VR』と『ガルガンティア VR』の両方を出展したのですが。

――これらの経験が、「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」につながっていくわけですね?

郡司:当時、弊社の石川(※石川 光久 Production I.G代表取締役社長)が2015年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に参加していたのですが、その際、同じく映画祭に参加していたメディアアーティストで人の顔にプロジェクトマッピングする「Omote」や横浜ドックヤードのプロジェクション・マッピングなどで知られる浅井宣通氏が「攻殻機動隊」のVR化企画について打ち明けたようなんです。私たちはその話を石川から聞き、早速浅井さんにお会いしました。そこでIGとしても既にVRをやってきたということもあるので、一緒にやっていこうといことになったんです。これで、はじめて、VRコンテンツの大規模プロジェクトを進めていくことになったんです。

《中村彰憲》

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