2016年の衝撃とエンタテインメント夜明け前【Re:エンタメ創世記】 | GameBusiness.jp

2016年の衝撃とエンタテインメント夜明け前【Re:エンタメ創世記】

2016年も残すところあと少し、2015年の大晦日「NHK紅白歌合戦」で「ラブライブ!」のユニットμ's(ミューズ)を観たことも、ついこのあいだ…くらいの感じがするのだが、あれから一年が経とうしている。

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昨日の…紅白歌合戦

2016年も残すところあと少し、2015年の大晦日「NHK紅白歌合戦」で「ラブライブ!」のユニットμ's(ミューズ)を観たことも、ついこのあいだ…くらいの感じがするのだが、あれから一年が経とうしている。

月並みな表現だが、今年も様々な出来事があった。世の中の事件や事故も一向に減る気配は無い。むしろ無抵抗の弱者を対象にした犯罪や、少年少女が犯罪や事故に巻き込まれるという報道を目にする機会も多かった。そして自然災害と復旧に向けて力を尽くす被災地の皆様、反して薬物依存による有名人の逮捕などもあった。

ゲームやエンタメ業界はどうかと言えば、毎年のことと言ってしまえばそれまでだが、動く金額が大きいこともあり、そのダイナミズムは市場を動かすプレイヤーが都度変わったとしても流れ自体が留まることはない。むしろ急流から激流になったと言ってもいいだろう。

第三四半期の衝撃

2016年、ゲーム業界の話題の出来事と言えば、アメリカで7月6日に先行導入されたスマホ・ゲーム・アプリの「ポケモンGO」だ。

日本での導入は2週間ほど遅れたが、故・岩田聡氏の命日(7月11日)に近い導入がされたのは単なる偶然ではないと思う。「ポケモンGO」導入初速と拡散は他のどのアプリと比べようが無いくらいの大きなスケールだった。(※ギネス記録の5つを獲得している。スマホ・ゲーム・アプリとしては記録づくめ)もちろん、それは首都圏や人口密度が高くポケストップの豊富な地域に限ったことだが、レアなポケモンを探すトレーナーが日夜徘徊していたことを思いだす。初夏から秋にかけて、それらトレーナーの活動自体は徐々に沈静化しているが、課金はしなくとも、日々の行動のなかで遊ぶ人たちと、一方で課金者に支えられているのではないだろうか。

課金者と言えば、サムザップが運営する『戦国炎舞 -KIZNA-』での月次ベースで数億円を課金するプレイヤーが引退したことが11月初旬に話題になった。これだけの「重課金者」がやめるとなるとゲームサービス自体の継続が難しいのではないかという噂になり、サービス停止のデマも流れた。実際にはこのプレイヤー以外にもかなりの数の課金者がいるようで、既存顧客からの課金がうまい運営体制があるようだ。私が以前所属したNHNJapanで運営していた野球系オンラインゲームでも月次3000万円単位のプレイヤーがいたことを思えば、ソシャゲで億円プレイヤーがいたとしても不思議ではない。まあ、あとは個人の価値観と可処分所得に依るものだろう。

さて、個人的に各所にヒアリングした結果なので、適正なデータとは言えないだろうが、中規模ゲームのDAUやMAU、ARPPUが第三四半期から徐々に落ちていると分析している。一般に公開されているゲーム系上場会社の営業利益ベースでも昨年対比で落ち込んでいる会社もたくさんある。それはAppStoreのゲームランキングのトップ10に入っているようなゲームにも、徐々にではあるが影響が出ているのではないかということだ。それは、『ポケモンGO』の影響ばかりではないと思うが、徐々に売り上げが右肩下がりになっていると推測できる。

ソシャゲの斜陽の要因

年末を迎えた今、おそらく読者の皆さんの頭の中にはたくさんの出来事が走馬灯のように蘇るに違いない。

私が感じることは、先に挙げた7月にローンチされたポケモンGOによって、スマホゲーム・アプリの嗜好と市場が変わりつつあるように思える。その要因としては課金をしなくても遊べる、自分の行動や意志によってゲームの展開(ポケモンのGET種類や数)が変わる、さらに課金したければ課金してゲームを楽しむこともできるという点だ。俗にいうソシャゲの「課金しないとダメよ」「課金した人が偉い」的なアオリもなければコンペティティブ(競争を煽る)な匂いが少ないことが挙げられる。おそらく、この遊び方の変化により、従来型の課金中心のソシャゲに対してのユーザーの疑念が生じたのではないだろうか。

あとは単純に同じようなゲームが増えすぎたこと、さらには作り手側の問題としては、開発予算がハンパなく高くなったこと、逆を言えば少ない予算で開発できるコンテンツでは比較されるレベルに達するクオリティを担保できなくなったことがある。ある意味で捉えればスマホ向けのゲーム市場が成熟してしまったとも言えるが、開発予算をある程度潤沢に確保できない会社ではユーザーの満足度に合うものが開発できなくなっていると言っていいだろう。

VRの夜は明けたか?

もうひとつ、2016年はVR元年と呼ばれた1年でもあった。新しいエンタテインメント体験の幕開けだ。

その真価を問われるPSVRが10月13日に発売になった。現時点では日本国内での販売数は約6万台程度と予測しているが、追加販売が店舗やネットに入るたびに蒸発するように売れていることを考えると好調と言っても良いだろう、すでにPlayStation 4の全世界販売台数が12月6日に5000万台を超えた。おそらく今年のクリスマスから来年度にかけては相当数のPS4とPSVRが販売されることと思う。

しかし、まだ『サマーレッスン』を超えるような異次元のVR体験が少ない。人間の五感である、視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚のなかで味覚の実現は難易度が高そうだが、臭覚に関しては日本ベンチャー企業によって小型のVR用臭覚デバイスの開発も行われている。2016年同様に、2017年も、各社のVR企画開発や新たなVR体験の創出に期待したい。


「スーパーマリオラン」がもたらすもの…?

2016年の7月にナイアンティックとポケモンカンパニーが導入した『ポケモンGO』はスマホゲーム・プレイヤーの意識と遊び方を変えたソコンテンツと言えるだろう。そして、このコンテンツによって、プレイヤーもゲームパブリッシャーもソシャゲ自体の在り方に対して向かい合う機会になったことは間違いないだろう。今回の『スーパーマリオラン』(12月16日配信済)は3ステージ分は無料プレイで、ある種のトライルゲームとして楽しめる。その後のステージなどは1200円の定額コンテンツとなっている。この売り方も従来のソシャゲに対しての新しいアプローチになるだろう。

コラムを入稿する時点でのユーザーの反応はまちまちである。若干、否定的な声がネットには目立つ。でも、マリオってこういうゲームだったよなと感心するユーザーもいることも事実である。『スーパーマリオラン』がもたらすもの、もたらしたものに関しては機会を改めて検証をしてみたい。

行く年、来る年、行くエンタテインメント、来るエンタテインメント、皆様にとって2017年もよい一年でありますように。

了)黒川文雄

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■著者紹介
著者:黒川文雄(くろかわふみお)
プロフィール: 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
《黒川文雄》

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