身体と技術を組み合わせた「超人スポーツ」とゲームデザインの未来 | GameBusiness.jp

身体と技術を組み合わせた「超人スポーツ」とゲームデザインの未来

CEDEC2016にて、「新たなスポーツを創造するためのゲームデザイン」と題されたパネルセッションが開催されました。登壇したのは、東京大学の稲見昌彦教授とUnity Technologies Japanの簗瀬洋平氏。

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8月下旬に横浜で開催されたゲーム開発者向けイベントCEDEC2016にて、「新たなスポーツを創造するためのゲームデザイン」と題されたパネルセッションが開催されました。登壇したのは、東京大学 先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授とUnity Technologies Japanのエヴァンジェリスト、簗瀬洋平氏。

■身体と技術による新たなスポーツ

東京大学大学院の暦本純一教授と慶応義塾大学大学院の中村伊知哉教授らと共同で「超人スポーツ協会」を立ち上げた稲見教授は、「身体」による文化である従来のスポーツだけでなく、「技術」や日本の文化がプラスされた新たなスポーツが台頭する可能性について説明しました。

「身体」に「技術」を追加する「超人スポーツ」は、テクノロジーとともに進化するスポーツで、年齢や身体能力に囚われずに楽しめるものであるとしています。つまり、肉体だけでなく機械や道具といった「技術」を取り入れたスポーツなのですが、一般への普及を目指すには観客として見ても楽しいものでなければならないと稲見教授は述べます。

「超人スポーツ」の競技を作る上で大きく関わってくるのがゲームデザイン。従来のスポーツとデジタルゲームでは、ゲームルールを作る上で必要とされるノウハウは同じであるとされ、プレイしても観戦しても面白いというゲームバランスを作る上で、日本のゲーム開発技術が役立つのだそうです。

■現実の新しいスポーツを生みだすデジタルのゲームデザイン

ゲームデザイナーとしてPS2『ワンダと巨象』やPS3/Xbox360『魔人と失われた王国』に参加し、今は研究者として「超人スポーツ」に関わっている簗瀬氏。ゲームデザインとは、ゴールとルールを与えて人の行動を変えることであると説明します。「超人スポーツ」とビデオゲームは、デジタルの中に世界を作っていくことと元々ある世界を使ってゲームを作ることの違いしかないのだとか。

簗瀬氏は、スポーツを変えるためには、「道具を変える」「環境を変える」「人間を変える」という要素のどれか1つが必要であると述べます。その内、「道具を変える」ことによって簗瀬氏がデザインした競技「Hover Cross」は、いわゆるホバーボードと呼ばれる2輪の乗り物に乗り、両手のスティックを使ってボールを3つあるゴールに入れるというもの。ホバーボードはわずかな体重移動で動かせるため予測できない動きが可能。そういった、身体だけでは不可能かつ魅力的に見えるものが「超人」的な要素になるのだとしています。

ビデオゲームのデザインでは、一方的に強者が勝ち続けないようにランダム要素が追加されていますが、偶然に弱い人間が勝ってしまうのも強い弱いが曖昧になり魅力が薄まることに繋がりかねないのだとか。「Hover Cross」のこれまで行われた試合では、身体能力が優れた若い学生ではなく稲見教授がトッププレイヤーになっていますが、これは身体能力ではなくホバーボードに慣れているかの差が大きくでたものです。ホバーボードという特殊な要素をうまく組み込んだことで、意外なヒーローを生みだすことに成功したのだそうです。

このような例は、ゲームデザインをやっている開発者にはいくらでもアイディアが出てくると語る簗瀬氏。新しいスポーツを作る上でのゲームデザインは、現実と重力、技術の制約の中で様々なメカニクスを作ることであるとしています。技術は未だに発展し続けており、宇宙の無重力空間での競技など数々の新しいスポーツが誕生する可能性は十分にあるとされています。

■「超人スポーツ」という新たな文化を目指して

身体と技術を組み合わせた「超人スポーツ」は、決して突飛な発想ではありません。身体能力のみで競技が行われるオリンピックに対し、パラリンピックは義足や車椅子をはじめとしたさまざまな補助器具に最新の技術が投入されており、選手の身体能力と最新技術を使った競技の場となっています。そういう点では、「超人スポーツ」とパラリンピックは根幹を同じとしているので、国が研究費を付けるのも頷けます。

東京オリンピックが開催される2020年までに、稲見教授らが最新技術を使い一体どのような新しいスポーツを披露するのか、期待が高まります。
《佐藤大介》

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