E3主催代表が語る、ゲーム産業の今―マイケル・ギャラガー氏インタビュー | GameBusiness.jp

E3主催代表が語る、ゲーム産業の今―マイケル・ギャラガー氏インタビュー

姉妹サイトのGame*Sparkとインサイドでは、E3を主催するESAのCEOを務めるMichael Gallagher氏へのインタビューを行い、ゲーム産業の移り変わりや日本のゲーム業界の変化についてお話を聞いてきました。

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Electronic ArtsやActivisionをはじめとする米最大手パブリッシャーのブース出展見送りが開催前から話題になり、規模縮小の声も囁かれた中、蓋を開けてみれば7万人超の来場者数を記録するなど大盛況に終わった2016年のE3(Electronic Entertainment Expo)。


姉妹サイトのGame*Spark / インサイド編集部は、E3を主催するESA(エンターテイメントソフトウェア協会)のCEOマイケル・ギャラガー氏(Michael Gallagher)に独占インタビューを行い、代表者が考えるE3のあり方、ビデオゲーム産業の移り変わり、そして日本のゲーム業界についてまで、見解を語ってもらいました。

ESAは米国におけるビデオゲームの業界団体で、ロサンゼルスで開催している世界最大のビデオゲーム展示会E3を1995年から主催しています。Michael Gallagher氏は2007年にCEOとして就任して以来、今日まで精力的に米国のゲーム産業活性化に取り組んできた人物です。

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――今年のE3はいかがですか?

マイケル・ギャラガー氏(以下ギャラガー): 私にとって、E3は驚きを届けてくれる6月のクリスマスみたいなものです。今年は2,000を超えるゲームが展示され、そのうち130タイトルは世界初の発表となりました。それら新作発表のため、SIEやMicrosoft、Ubisoft、Bethesdaなどが会期のはじめに入念なプレスブリーフィングを行っています。また、E3の初日には、5万人もの来場者が初めて触れるタイトルをプレイすることができました。毎年、ゲーム業界が目覚ましい発展を遂げていることに興奮しています。

――今年のE3で最も注目したトピックは?

ギャラガー: 素晴らしいゲームにVR(バーチャルリアリティ)とAR(拡張現実)が追加されたことです。例えば、ベセスダのプレスブリーフィングでは『Fallout 4』のVR対応を発表していますが、(昨年の発表から)1年の間であれだけのことを行ったのは素晴らしいアイディアでしたし、ゲーム産業がどのように急速なイノベーションをもたらすかを消費者に知らしめるものとなったのではないでしょうか。

2年前のE3でVRを扱っていたのはわずか6社でしたが、翌年には27社、今年は53社にも増加し、消費者やゲーマーを驚かせるためのツールと言えるものになりました。この動きから私が感じたことは、これから2年後には、ゲームをプレイするために、現在は存在しないようなものが広く使われるようになるのでは、ということ。例えば、フラットスクリーンのTVや、携帯電話のカラー液晶のようなものです。携帯電話の画面がカラーになったときのこと、覚えていますか? あのときはみんな驚きましたが、今は当たり前ですよね。

E3ではそのように驚かされる進歩を様々な場面で見ることができますし、各コンソールを開発する企業が市場に新型の発表を行うこと、または年内に発売したいと公表することが、技術の平均値を押し上げ、ゲーム産業自体の健全性を示していると思います。それと同じくらい素晴らしい発表が、Microsoftによる、PCやXboxで同じゲームが遊べるクロスプラットフォームです。これは非常にパワフルな技術で、Electronic Artsの『FIFA』や『Madden』が、コンソールでも、PCでも好きなだけ遊べるようになるものです。このような流れが出てきたことに私はとても興奮しています。


――今年のE3では、EAやActivision、Disney、Wargamingのような大手パブリッシャーがショーフロアに出展しないことが大きく報じられ、業界中で注目を集めていました。主催者側の立場で、こうした動きをどのように見られていますか?

ギャラガー: 興味深いと言うべきでしょうか、今挙げられたような企業は依然としてE3の一部を成しています。それはE3がただの展示会ではなく、“エコシステム”として機能しているからです。E3はショーフロアの展示会に加えて、建物のラッピング、パブリックイベントE3 Live、ソーシャルメディア、生中継ブース、パーティやレストラン、プレスブリーフィング、これら全てを同時に体験できるようになっています。各企業がそれらエコシステムの中で違う役割や時間を選んでいるということです。

ブース出展していないEAの『Battlefield 1』はXboxのブースに出展されていますし、Activsionの『Call of Duty: Infinite Warfare』はPlayStationのブースに展示されています。彼らは来年には戻ってくるかもしれません。我々はさまざまなメニューを示し、企業には好きなものを選んでもらいたいと思っています。また、今年は66もの企業がE3へ初参加しています。これはE3のエコシステムが健全で、ゲーム業界が活性化していることを示すものだと思います。E3は毎年違うのです。

――日本のゲーム業界はモバイルやソーシャルに大きくシフトしていますが、E3における日本のハードメーカーやパブリッシャーを見て何か変化は感じられますか?

ギャラガー: 日本の会員や出展者は、E3が始まった頃から世界のリーダーでした。任天堂、ソニー、カプコン、スクウェア・エニックス、コナミが提供する素晴らしい体験とハードウェアは、E3でも20年以上の歴史があります。彼らはエンターテイメントを再定義する牽引役でもあり、素晴らしい作品を世界に発信するためにE3、ロサンゼルスを訪れています。業界全体がより消費者に直接関わるように変わってきており、この柔軟さが大きな成功へと繋がると考えています。PlayStationはインディーゲームやインディー開発者に門を開いていますし、プレスブリーフィングでも大きく取り上げています。モバイルの影響についてですが、モバイルとは、どこでもゲームができるということ。日本はモバイルの消費大国で、その流れがこのアメリカにも伝わってきているという印象です。モバイルゲームから生まれる市場と技術はとても幅広いものでしょう。そして日本企業はこの流れの先駆者と言えます。他の例として、フランスの企業Ubisoftは、全く異なるアプローチです。E3のブースで、今後のエンターテイメントがどうなっていくのか、そのビジョンを見せようとしているのは素晴らしいことです。次に一体何が来るのか、109カ国の3,500人にものぼる記者によって、世界へ伝えられるのです。


―― 今年から始まった消費者向けのパブリックイベント「E3 Live」のコンセプトをお聞かせください。

ギャラガー: 私たちは、パブリッシャーがゲーマーや消費者と直接的に関わりを持っていくという業界の移り変わりを体験しています。各社は何千万人との会話を通し、どんな作品の何が良くて何がダメか、というフィードバックを得ています。最近ではゲームメーカーがタイトルごとにコミュニティマネージャーをたて、そのゲームのコミュニティを活発に保たせています。E3としては、主催者として何をしたらよいか、どうしたら消費者をダイレクトに引き込めるか、という観点から、5000にものぼるプロシューマー(注: 生産者でもあり、消費者である人のこと)へ向けたトレードショーを行っていこうとしているのです。E3 Liveは、消費者が参加しやすく、楽しめるイベントとして開催したものです。VRを試したことがない消費者が、短い時間ながらHTCやFacebookによる興味深いVRを試すことができます。また、E3が閉場する17時以降にも参加することができ、ライブ音楽も楽しむことができます。E3 Liveは、単なる展示会という枠組みを超え、消費者との強いつながりを可能にしているのです。

――「E3 Live」の規模は来年さらに大きくなりますか?

ギャラガー: 開催後、今回のE3の状況を分析し、出展者と話し合います。その結果、拡大するかもしれませんし、あるいは変化を取り入れるかもしれません。世界に何を見せたいのか、消費者、ゲーマー、ゲームメーカーに対して最も興奮を届けられる方法を模索するつもりです。


――北米のビデオゲーム市場におけるパッケージ販売とデジタル販売の割合や規模についてどう思われていますか?それによるE3への影響は。

ギャラガー: 我々ESAが公開している調査資料には、パッケージとデジタル販売の推移をみることができます。この調査によると、ゲーマー、パブリッシャーともに、ダウンロード版によって恩恵が得られると言えます。Xbox OneもPlayStation 4も、ボタンを押して短い間待つだけでソフトを購入でき、遊べる機能を備えています。車を運転してお店でディスクを買って帰る必要なく、ディスクを入れ替える必要もないという、即時性があって魅力的なものです。ただ、世界には十分な回線速度でゲームをダウンロードできない地域があるので、依然としてディスクは重要な存在です。E3での展示はこのようなトレンドに合わせて進化しています。


――VRや新しいハードウェア以外で、何か面白い流れがありましたか?

ギャラガー: 私は、毎年E3で何か新しくて素晴らしい体験が起こっていると思っています。今年のその体験を一言で表すとしたら、「ドラマ」です。PlayStationのプレスカンファレンスや任天堂の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』など大変魅惑的なものがありました。これらのタイトルは、非常に没入的であったり、恐ろしいものであったり、刺激的であったりして、起こっていることすべてが「ドラマ」であると言えます。そんなドラマとゲーマーとのつながりは、ゲーマーの常識を変え、ストーリーに引き込むことでしょう。

――米国のゲーム産業とE3の関係性、役割をあらためて教えてください。

ギャラガー: アメリカには1,641に上るビデオゲームの会社があります。E3の出展者数は250ですので、1,641との比較でその大きさが理解できると思います。現在は、大企業が多くのタイトルを発表し、広告を打って収入を得ており、それらの企業が全体の収入に占める割合は大きいでしょう。もし、食品関係の展示会にいったなら、5,000、もしかしたら50,000の企業が出展しているかもしれません。しかし、250から500の企業でも展示会になり得るのです。何をしているかを直接見せるため、そして見るために来るのが展示会という場所です。それはすべての人に向けたものではないかもしれませんが、私たちはとても健全な形だと思っています。

――わかりました。本日は貴重な機会ありがとうございました。


(聞き手/編集: Rio Tani 撮影/文: Daisuke Sato)
《Game*Spark》

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