家業再興への想いからマイコンとの出会い、そして世界的なゲーム会社へ・・・コーエーテクモホールディングス襟川陽一社長インタビュー 2ページ目 | GameBusiness.jp

家業再興への想いからマイコンとの出会い、そして世界的なゲーム会社へ・・・コーエーテクモホールディングス襟川陽一社長インタビュー

コーエーテクモホールディングスの舵取りを行う代表取締役社長・襟川陽一氏。同氏は創業から現在に至るまで、クリエイターとしても活躍している異例の人物です。その生い立ちから会社の現状、そして未来の戦略までじっくりお聞きしました。

企業動向 戦略
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3つのアイデアをミックスして、作品づくりを行う



――『三國志』も30年です。一つの作品がこれほど長く続くというのはすばらしいことですね。続けて行くご苦労もあるかと思うのですが、いかがですか?

私の苦労というよりも、まずはファンの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。30年間支持し続けていただいたことが、長く続けてこられた大きな理由だと思っています。当社の経営理念で「創造と貢献」というものがあるのですが、新しい面白さを作り出してお客様に楽しんでいただくことを、『三國志』シリーズや『信長の野望』シリーズでずっと大事にしてきました。それが、ファンの方々の支持をいただけた大きな理由だと思っています。

――タイトルの持続性はすごいですよね。『三國志』のナンバリングが13になり、発売してから30年経ったりするというのは、他に類を見ないと思います。

そうやって長い間お客様が楽しんでくださるのは、本当に嬉しいことですよね。実は、新しいものを作っていくときに大切にしているのは、自分自身のアイデアであったり、プロジェクトチームのアイデアだったりします。みんな「何かやりたい」というのを持っているんです。特に、当社に入ってくる新しい社員は、『信長の野望』や『三國志』、『真・三國無双』が好きだと言って入ってくる人が多いです。そういう社員はもともと、心の中に志を持っています。「いつか俺が『信長の野望』を作ろう」とか。それは心強いですよね。当社では、みんながやりたいこと、それを大事にしています。

――みなさんそれぞれが”野望”を持っているわけですね(笑)。

そう(笑)。それと、お客様からさまざまなご要望をいただきます。例えば、『信長の野望』の1作目を作ったときは、近畿・中部地区だけの大名を対象にしていたのですけれども、そうしたら九州や東北などの方々から「地元の大名も出して欲しい」とたくさんご要望をいただきました。それで、それらの要望を元に、『信長の野望・全国版』を作りました。お客様からの要望やアイデアを大切にして、次回作を作っていくようにしています。

――なるほど。

それから、ハードの技術進化に伴って、演出能力が上がってきますよね。2D表現が3D表現になったり。そういった技術の進化に対する対応を大事にしています。そのための部門(技術支援部)も社内で作りました。そこでいつも、新しいマシンで最大の能力を出すためのゲームエンジン作りをやっています。ただ単にアプリケーションを作るだけではなく、アプリケーションを作るための大本のところの基礎技術を大切にしています。世界の中で優位性を保つには、技術力が重要だと思っています。話をまとめると、プロジェクトチームのアイデア、お客様のアイデア、技術的なアイデア、この3つをミックスして、今まで作品を作ってきています。

シミュレーションゲームは複数人で遊ぶのに適したゲームだった



――ネットをインフラとして使うという点でも御社が先んじていたと思いますが、それは先を見据えてお考えになっていたのですか?例えば、インターネット対戦であるとか。

インターネットが普及する前は、パソコン通信でゲーム対戦することが流行っていた時代がありました。その時代にパソコン通信への対応版を作っていますし、『信長の野望』でもゲームボーイで対戦版を作ったりしています。もともとシミュレーションゲームで対戦するのは楽しいなというのがありましたので、そこはすんなりと入っていけました。

――なるほど。

それから、『三國志』を始めに作ったのは1985年なのですが、1台のパソコンで8人まで遊ぶことができました。友達が8人集まって、自分の武将を順番に動かしていくわけです。自分の手がバレバレなんですけど(笑)。そこから進化していくわけですが、シミュレーションゲームと複数の人で遊ぶというのは相性が良かったんでしょうね。

――その話から少し派生するのですが、e-Sportsに関してのご関心はいかがですか?

もちろんあります。テクモがずっと昔から格闘ゲーム『DEAD OR ALIVE』のトーナメントを国内外でやっています。あれはまさに、e-Sportsですから、これからもどんどん取り組んでいきたいと思っています。

――話は変わりますが、堺雅人さんが『三國志』の大ファンだと伺いました。

先日、取材でお会いしたのですが、堺雅人さんはコアファンですね。マイナーな武将でスタートして、どんどんのし上がっていくのがお好きなようです。普通は、曹操や劉備、孫権といったメジャーな武将を使いますよね。けど、堺雅人さんは、呂布の配下の陳宮だとか、マイナーな武将がお好きだそうです。

――自分なりの三国志を作りたい、遊びたいという気持ちがあるんでしょうね。

この間吉川晃司さんが『三國志13』の発表会に来てくださったのですが、吉川晃司さんも三国志のコアファンでして。吉川晃司さんは張角がお好きだとおっしゃるんです。これもまた珍しいですよね(笑)。そういったことって、ご本人と話して初めて分かるんです。

歴史のifを楽しんでもらいたい



――ゲームの歴史が長いと、長く遊んでいるファンがシニア化していると思いますが、彼らに対して何か新しいアプローチを考えたことはありますか?

『信長の野望・創造』も『三國志13』もそうですが、コアなシミュレーションゲームファンは細かいところまで全部自分でコントロールしてゲームを進めていく方が多いのですが、年を召されると、細かいところよりも全体の戦略だけを決めたいというニーズが出てくるんです。そういったニーズにも応えるようなゲームシステムにしています。

――『信長の野望』や『三國志13』について、海外の反応はどう思われていますか?

台湾や中国でも『三國志』は人気があるゲームです。欧米に関しては、一部のコアファン、それからシミュレーションゲームが好きな方については、日本や中国の歴史に関係なく楽しんでいただいていますね。それと、ヨーロッパの方では、クールジャパンで日本の文化に興味を持っている人が増えているように感じます。特にフランスはそうですね。

――美化というと語弊があるかもしれませんが、武将を魅力的な人物に仕立て上げたのは御社が初めてだと思います。例えば、御社の中でも、昔と今で織田信長の顔には変化があると思います。そこはどういった思いで作り直されたのでしょうか?

ドット絵がメインのころはそれ程差別化できなかったのですが、だんだん表現がリアルになってくると、顔の輪郭や目、しわ……いろいろなところが作れるようになりました。そのようになってくると、魅力のある武将はスターにしていかないと、お客様の期待しているものと違ってくるんじゃないかなと思いまして。いくらか誇張して作っているところはありますが(笑)、武将の容貌は、実際とは多少変えてもいいんじゃないかなと思っています。

――なるほど。

また、ストーリーについても同様です。歴史を真面目に研究されている方から見ると、「とんでもない」という話もあるのですが、私は歴史のifを大いに楽しんでいただきたいと思っています。歴史通りにゲームをするのではなく、ゲームの世界を一定に作って、自分自身で新しい歴史を作っていくことをゲームの根幹としているんです。特に、『真・三國無双』や『戦国無双』といったアクションゲームは、かなり自由にプロジェクトチームが作っています。

社長自らが外部にアプローチ



――『アンジェリーク』シリーズは乙女ゲームのルーツになっていると思うのですが、これは襟川社長がお考えになったのでしょうか?

考えたのは、会長の襟川恵子ですね。私がゲームの開発を始めたのが1980年になるのですが、その当時から「男のゲームではなく、女のゲームがほしい」と襟川恵子は言っていました。ただ、女性がパソコンを持ってゲームを遊ぶというのは、まだまだ先の話でした。ですから、実際に実現したのは、1994年になりました。『ネオロマンス』というシリーズ名称で、恋愛SLG『アンジェリーク』を作ったんです。女性の手による女性のためゲームにしようと思い、女性のプログラマーやプランナーを集めて制作しました。男性はなかなか女性が喜ばれるような甘いセリフは作れないので、女性向けゲームは女性でないと作れないですね(笑)。

――社内企画のこともお聞きしたいのですが、『信長の野望 201X』や『のぶニャがの野望』などの派生作品は、現場からボトムアップで企画が上がってくるのでしょうか?

そうですね、これらは現場から上がってきました。『信長の野望 201X』は企画を見た瞬間にいいなと。織田信長が機関銃を持っているだけで面白いなと思いました。企画を出してきた本人は恐る恐るだったかもしれませんが(笑)。ねこ武将という発想の「のぶニャが」も素晴らしいですね。

――襟川社長は、ゲームを作るだけではなく、ゲームをプレイするのもお好きだと聞いたのですが。

『信長の野望 201X』は毎日やっています。今は『Fallout 4』にもハマっていますよ(笑)。その前は『Bloodborne』をやっていました。ゲームをプレイするのが大好きなので、いろいろなゲームをやっています。

――御社では外部とのコラボが非常に盛んですが、それは先方から「『三國志』とコラボしたい」というオファーがおありになるのですか?

いえ、ほとんど私や会長の襟川から、もしくは社長の鯉沼久史からアプローチしています。トップセールスですね。私も鯉沼も直接ゲームを作っていますので、どことどこが繋がるとどういう面白いゲームになるというのは、直接お話をできますので。最近は若手の役員もがんばっていますよ。

――外部のタイトルやコンテンツへの取り組みも非常に盛んで、2月18日には『進撃の巨人』もリリースにされましたが、それも御社が自らアプローチされたのでしょうか?

それは講談社さんにアプローチして「ぜひ使わせてください」とお願いしました。特に社長の鯉沼には立体機動のところは絶対面白くできるという自信がありましたので。


《松木和成》

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