【CEDEC 2015】オートデスクが満を持して放つ内製ゲームエンジン『Stingray』の実力とは? | GameBusiness.jp

【CEDEC 2015】オートデスクが満を持して放つ内製ゲームエンジン『Stingray』の実力とは?

2014年6月、ゲーム業界に震撼が走りました。『Maya』『3ds MAX』などで知られるオートデスクが、スウェーデンのFatshark社の買収を発表したからです。

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【CEDEC 2015】オートデスクが満を持して放つ内製ゲームエンジン『Stingray』の実力とは?
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2014年6月、ゲーム業界に震撼が走りました。『Maya』『3ds MAX』などで知られるオートデスクが、スウェーデンのFatshark社の買収を発表したからです。同社はゲームエンジン『BitSquid』を開発しており、SFシューティング『HELLDIVERS』などに採用されるなど、欧州ではそれなりに名の通った企業でした。数々のDCCツールやミドルウェア企業を買収し、成長を続けてきたオートデスクが、いよいよプログラミング側に本格参入することを意味していたからです。

その後、本ゲームエンジンは新たに『Stingray』という名称となり、2015年8月にGDC Europe 2015で発表。あわせて一般販売が始まりました。この、できたてほやほた(バージョンも1.0.0)の『Stingray』の概要について、同社はCEDEC2015でさっそくお披露目を実行。梅澤孝司氏によって「新しいゲームエンジン Autodesk Stingray の紹介 ~GDC2015でテクニカルプレビューを行ったゲームエンジンを日本初公開~」と題してセッションが行われました。

ライブリンクでつながるDCCツールと実機端末



あえて頭の悪い言い方をすると、昨今のゲーム開発は次の手順に分けられます。

(1) アセットを制作する(グラフィック、サウンドなど)
(2) アセットを統合し、ロジックを組む
(3) ターゲットマシンにデプロイ(展開)する

この時、メインで使用されるツールが、(1)では(グラフィックでは)DCCツールであり、(2)がゲームエンジンです。そして(1)と(2)、(2)と(3)の手間を省くことが、イテレーションの速度を上げることにつながり、ゲームの完成度が高まります。

これを実現するためにも、DCCツールとゲームエンジンの開発元が同じ企業であるということが、非常に有利に働くことは容易に想像ができるでしょう。梅澤氏もStingrayの特徴を「軽量・パワフル・イテレーション」と説明しましたが、中でもイテレーションの部分について、たっぷりと時間を割きました。すなわち、同社のDCCツールである「Maya」「Maya LT」「3ds Max」との連携であり、ターゲットマシンへのデプロイについてです。



まず最大の特徴ともいえるのが、「ライブリンク」という機能です。これはDCCツールとStingray、そしてStingrayとターゲットマシンをWi-Fiなどのネットワーク環境で結び、データの相互移動や作業、チェックなどを円滑に進めるという機能です。もっとも、開発中のデータをやりとりするため、ツールがクラッシュする事態も考えられます。そのためStingrayではフロントエンドにあたるStingray Editorと、システム部にあたるStingray Editor Backendが別のプログラムとなっており、万が一の事態においてもデータが保存される仕組みになっています。

デモではMayaとStingrayでFBXファイル(オートデスクが推奨する3DCGの汎用フォーマット)をやりとりし、頂点カラーを変更して同期させるなどの手順が紹介されました。Stingrayでは物理ベースのレンダリングシステムが採用されており、DCCツールとゲームエンジン側でまったく同じシェーダが利用できます。さらにトーンマップをあわせることで、双方でガンマ値の同期までとることができ、文字通りまったく同じ色味が得られます。これは地味ながら非常に強力な機能でしょう。

※ライブリンクの様子。左側がMaya、右側がStingray


一方で作成したゲームプログラムは、複数ターゲットマシンに対して同時にデプロイしたり、ワンクリックでの更新作業が可能です。ターゲットマシンとはWi-Fi環境などで接続され、複数のAndroid端末を同時に制御して動作確認を行う様子もムービーで公開されました。ある端末で画面をタッチして操作すると、ライブリンクされている別の端末や、Stingray(PC側)のプレビュー画面が同期して動くといった様子も紹介され、変更結果のテストなどに大きく貢献しそうです。

ノードベースのロジック制作に大量のミドルウェア群



Stingray自体の特徴としては、昨今のゲームエンジンで一般的になっているデータ駆動型構造や、「Flow」と呼ばれるノードベースのコーディングシステム、簡単なゲームロジックの修正デモなどが紹介されました。StingrayのUIフレームワークにはQt(キュート)が採用され、表示はHTML5で行われているので、将来的なカスタマイズなども可能です。またストーリーエディタという機能があり、カメラの動きなどをキーフレームベースのアニメーションで制御できます。



なお、Flowで作成されたコードはJASONで記述されており、テキストエディタなどで開くことができます。そのため改変やコピー&ペーストが容易で、自分で作成したCustom Flowデータつき3Dアセットを販売・流通させるためのマーケットプレイスも用意されています。このほかBeast、HumanIK、Navigation、Scaleform Studio(Scaleform をベースにした UI テクノロジー)、FBX、Audiokinetic Wwise、NVIDIA PhysX など、さまざまなミドルウェアが統合されています。

このように非常に強力なStingrayですが、ライブリンクを十二分に発揮させるためには、「3ds Max 2016 Extension 1 SP1以降」「Maya 2016以降」「Maya LT 2016 Extension SP2以降」との組み合わせが必用とのこと。OSはWindows7かWindows 8.1 64bit版で、現状ではDirect X 11対応のみを発表。対象プラットフォームはWindows 7以降、iOS OpenGLES 3.0対応、Android TegraK1のみ、PS4、Xbox One、Oculus Rift DK2であることがあかされました。

そして気になるライセンス形態は、毎月4000円からのサブスクリプションモデルのみで、商用利用版の無償提供は予定されていないそうです。もっともMaya LTのサブスクリプション契約をすると、もれなくStingrayが無償で使用できる特典付き。また学生や教育機関では無償で使用でき、1ヶ月間の体験版も用意されています。そして何より制作物へのロイヤリティも発生しないとのこと。一方でソースコードへのアクセス(C++)も、有償で可能とのことでした。



残念ながら今のところドキュメント類は英語のみで、日本語版の作成やコミュニティサポートなども鋭意準備中とのことでした。しかし、なんといってもオートデスクの内製ゲームエンジンということで、今後の展開が期待されます。まずは噂のライブリンク機能だけでも、ダウンロードしてテストしてみる価値はありそうです。
《小野憲史》

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