【GTMF 2015】サウンドクリエイターの仕事は「音の演出」~トイロジック×Wwiseの挑戦 | GameBusiness.jp

【GTMF 2015】サウンドクリエイターの仕事は「音の演出」~トイロジック×Wwiseの挑戦

音が鳴らないのが当たり前だったガラケーソーシャル時代を経て、ゲームサウンドが再注目されている昨今。キーワードは「サウンドによるゲーム体験の総合演出」であり、それを手軽に実現できるのがオーディオミドルウェアです。

ゲーム開発 ミドルウェア
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音が鳴らないのが当たり前だったガラケーソーシャル時代を経て、ゲームサウンドが再注目されている昨今。キーワードは「サウンドによるゲーム体験の総合演出」であり、それを手軽に実現できるのがオーディオミドルウェアです。

トイロジックの西隆宏氏はGame Tools & Middleware Forum 2015で「ミドルウェアを使ってはじめてわかる、ゲーム開発におけるサウンドクリエイター本来の役割~Happy WarsのWwise導入事例~」と題して講演し、その可能性の一端を示しました。

『Happy Wars』は2012年にXbox 360でリリースされたF2Pのマルチプレイオンラインアクションです。最大30人のプレイヤーが二つの陣営に分かれて対戦し、互いに陣地を取り合います。当初はマイクロソフトの内製オーディオミドルウェアが使われていましたが、2015年4月にXbox One版がリリースされたのにあわせて、オーディオミドルウェアもAudiokineticが提供する「Wwise」に切り替わりました。

「オーサリングツールを眺めているだけで、サウンドを用いた演出やアイディアを次々に思いついて、実際に試せた」・・・西氏はこのように語ります。その結果「サウンドクリエイターはBGMやSEなどのリソース制作も重要だが、サウンドの演出や仕様を考えることが大事」という、本来の立ち位置を実感できたのです。

Wwiseで可能になった『Happy Wars』の3つのサウンド演出



(1)Wwise的ポーズの実装
ゲーム中にポーズボタンを押すとコンフィグ画面が表示され、BGMなどの音量が下がる・・・ゲームでおなじみの演出です。Wwiseを使用することで、プログラマーの作業はポーズ時と解除時の2つのイベントをコールしてもらうだけで済んだといいます。イベントの中身は空のデータにしておいて先に組み込んでもらい、その上で後からサウンドを作り込み、じっくり調整できたのです。

もっともゲームはインタラクティブなメディアなので、プレイヤーの操作によって、どのような音の組み合わせが発生するかわかりません。実際にループSEなどは、SEをポーズしただけでは音が止まらないことがあったとのこと。そのためステージSEをポーズした後に、改めてSEバスをミュートする処理を加えています。

一方で単純に音量を下げるだけでは、ポーズ時にコンフィグSEの音量自体も下がってしまうことが判明しました。そのため専用のバスを作って対応しています。こうした調整も後から簡単にできたと振り返りました。





(2)ゲーム中のチーム状況を知らせるジングルが目立たない問題
ゲーム中は常にアップテンポな音楽が流れており、マルチプレイで対戦が行われています。そのため多種多様な音楽やSEにまぎれて、戦況を伝えるジングルが目立たないという問題がありました。そこで「Auto-Ducking」というダッキング(他の音量を自動的に下げる)で対応しようとしましたが、新たな問題が発生しました。この処理ではしばしば、ジングル再生後にワンテンポ遅れて音量が回復する現象がみられたのです。原因は一部のジングルで余韻が加えられていたためです。

ここで貢献したのがイベントベースではなく、音ベースでダッキングがかけられる「Side-Chaining」という方法です。「ジングル再生」というイベントの発生に応じてダッキングするのではなく、ジングルの音量を数値化してサウンドのトリガーに指定し、他の音量を調整できるというもの。これによりスムーズなダッキングと回復が可能になりました。

西氏はこの機能を応用し、「大きな効果音が鳴ったときに自動的に音楽の音量が下がる(緊張感の演出)」、「きちんと音楽を聴かせたい場面でSEの音量を下げる(ゲームの状況が変わったことを表現)」など、さまざまな演出も盛り込んだといいます。



(3)インタラクティブ雷
昨今注目を集めている「インタラクティブサウンド」。プレイの仕方でゲームの状況が変わるのなら、それに伴ってサウンドも動的に変化するはずだ・・・という古くて新しい考え方です。GTMF大阪ではWwiseを用いてダメージSEをランダムに変化させる手法が紹介されましたが、東京では雷魔法「サンダーストライク」の鳴り方を変えるやり方が紹介されました。

サンダーストライクはマップの任意の地点に落雷を落とす魔法です。当然距離に応じて雷の聞こえ方が変わるはず。ゲーム中でも音量・音のこもり方・スプレッド(距離が近いとワイド感が増し、遠いと点音源になる)・クロスフェード(近距離・遠距離で音素材自体を切り替える)・音の遅れ(距離が遠いと音が遅れて聞こえる)が設定されています。

このうち音の遅れは通常の減衰でうまく設定できず、「Built-In Parameter」という機能が応用されました。これはカメラからみたオブジェクトの距離・方向・角度・遮蔽物の有無などについて、各パラメータをリアルタイムに取得できるという機能です。これをトリガーにして設定することで、距離に伴う音の遅れを表現できました。





西氏はプログラマーの手をわずらわせることなく、さまざまなパラメータが取得できる「Built-In Parameter」を革命的な機能だと評価します。「これだけで、ヘリコプターの距離や高度によってプロペラ音のピッチを変えるなど、さまざまなアイディアがわいていきます」。

映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に触発されて、自分の近くにサンダーストライクが落ちた時だけ、他の音量をぎゅっと止めるというアイディアが浮かんだ西氏。さっそく実機でテストした結果を会場で披露しました。もっとも、イマイチ狙った効果が出なかったとのことですが、こうしたトライ&エラーが簡単にできる点がWwiseの良いところだと指摘します。

なお、Wwiseを用いたインタラクティブミュージック専用の演出については、CEDEC2015で講演するとのこと。最後に西氏はあらためて「サウンドクリエイターの役割はリソースを作ることだけでなく、効果的な鳴らし方、演出を深く考えて実装すること」と指摘し、ユーザーが受けるだろう気持ちを考えて調整し、サウンドの品質を上げよう」と呼びかけました。
《小野憲史》

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