【CEDEC 2014】道理にしたがって生きる・・・基調講演でセガ・名越稔洋氏が語った「これからのゲームクリエイター」 | GameBusiness.jp

【CEDEC 2014】道理にしたがって生きる・・・基調講演でセガ・名越稔洋氏が語った「これからのゲームクリエイター」

CEDEC最終日、『龍が如く』シリーズで知られるセガの名越稔洋氏は「これからのゲームとゲームクリエイター」と題して基調講演を行いました。名越氏は国内ゲーム産業がコンソールからスマートフォン、パッケージからF2Pに大きくシフトしていく中で、ゲーム開発者が意識す

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CEDEC最終日、『龍が如く』シリーズで知られるセガの名越稔洋氏は「これからのゲームとゲームクリエイター」と題して基調講演を行いました。名越氏は国内ゲーム産業がコンソールからスマートフォン、パッケージからF2Pに大きくシフトしていく中で、ゲーム開発者が意識す
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CEDEC最終日、『龍が如く』シリーズで知られるセガの名越稔洋氏は「これからのゲームとゲームクリエイター」と題して基調講演を行いました。名越氏は国内ゲーム産業がコンソールからスマートフォン、パッケージからF2Pに大きくシフトしていく中で、ゲーム開発者が意識すべき「道理」、すなわち「物事の正しいすじみち」や「人として行うべき正しい道」の重要性について語りました。

セガ取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)の名越稔洋氏


1989年にセガ・エンタープライゼス(当時)にアーティストとして入社し、今年で業界歴25年を迎える名越氏。これまで『デイトナUSA』を皮切りに、数々のヒットタイトルを世に送り出してきました。今では取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)として、同社の全タイトルの開発を統括しつつ、『龍が如く』シリーズの開発にも携わっています。

さて、名越氏は質疑応答で「道理」という言葉が非常に好きだと語りました。道理は川の流れのようなもので、逆らって泳いでも体力を疲弊させるばかり。むしろ、川の流れにそって進むことで、流れの速度を利用して何倍にも速く進むことができます。

もっとも本物の川と違って、道理は目に見えません。そこで常に社会を観察したり、自分を省みたりして、物事のすじみちや、人としての振る舞いについて気にかける必要があります。実際の講演では、そこまで明確に説明されることはありませんでしたが、言葉のはしばしから「道理」という価値基準をもち、それに照らし合わせて物事を判断する様子が感じられました。

一例をあげると、名越氏は業界関係者や教育関係者からよく、スマホゲーム市場の見通しについて尋ねられるそうです。そのたびに「まだまだ市場は拡大する」と断言するのだとか。その理由はフィーチャーフォンからスマホへの移行がまだまだ半ば程度であること。そしてインストールベースが大きいプラットフォームに、ユーザーの消費行動が集約されていく傾向にあるからです。まさにこれは「道理」でしょう。

一方でコンソールゲームが一朝一夕に消滅することがないのは、映画とテレビの関係や、高級レストランとファーストフードの関係などからも明らかです。むしろ邦画がテレビ局のコンテンツ制作力と宣伝力を巧みに活用しながら復活したように、コンソールゲームはスマホゲームの長所を活用するべきだといいます。セガもスマホゲーム向けに、セガネットワークスを立ち上げたほど。これもまた「道理」なのです。

ポイントは社会をよく観察し、人々のライフスタイルの変化に注目すること。市場のトレンドやヒットゲームを決めるのはクリエイターではなく、ユーザーであることは「道理」です。そして携帯電話やインターネットがなかった時代を思い出すのが困難なように、ライフスタイルの変化は過去の慣習やデバイスを簡単に押し流してしまいます。特に日本の狭い家屋では百科事典やステレオのように、一度居場所をなくしたモノが復活することはありません。この変化に敏感になれというわけです。

またフィーチャーフォン時代、しばしば「ゲーム開発者不要論」がソーシャルゲーム会社で囁かれました。カジュアルゲーマーは「ゲームらしいゲーム」は複雑すぎて遊ばないというわけです。しかしゲーム業界でも80年代後半は「アーティスト不要論」が囁かれていました。それがハードの表現力向上に伴い、次第にゲーム業界外の才能を巻き込んだゲーム開発が増加していきます。一方でソーシャルゲーム会社でも、ネイティブアプリ化に伴い、ゲーム開発者の知見は引く手あまたになってきました。こうして時代が繰り返すのも「道理」でしょう。

『龍が如く』の企画についても同様です。名越氏は「認知度が高くて、まだ誰もやったことがない題材」をゲームにすれば、ヒットの可能性は高いと言います。任侠を題材にゲームを作るというのは、まさにこの方程式通りというわけです。もっとも、これを周囲に理解してもらうのが大変だったとか。社内プレゼンは三度目の正直で通ったほど。開発中もスタッフへの説明が大変で、チームから離れていった人も少なくなかったと言います。

一方で道理の中でも「人としてのふるまい」という点については、どうでしょうか。ここは世代間ギャップを感じざるを得ず、考え方が変わってきた点も否めないといいます。中でも驚かされるのがインターネットの普及で、下手をすると業務課題でも検索して答えを求めかねないのだとか。しかし、実際にそれがもとでヒットゲームが生まれたら・・・。少なくとも頭ごなしに否定するものではないと言います。

また採用面接でも、昔はゲーム業界一本というケースが普通だったが、今は他業界との併願が多いとされました。名越氏は「それだけゲームの開発職がカジュアルになってきた証拠」だと言います。「ちょっと寂しい気もしますが、お客様の新しい価値観にあったゲームを作るのであれば、作り手にそうした価値観の持ち主がいてもいい」と、かなり考え方を変えてきたと語りました。



もっとも、昔と変わらないところもあります。それが「デジタルだけで完結せず、アナログの体験を重視すること」です。一例を挙げれば検索エンジンの功罪があります。外食をするとき、映画を見るとき、多くの人はネットを検索して、レビューを参考にします。しかし、たとえレビューの点数が低くても、自分が気になったら実際に行ったり、観たりするべき。それによって、世間と自分の価値観のズレを知るだけでも勉強になるというわけです。

「損をしたくないからデジタルを使うのはいいでしょう。でも絶対に損したくないというのは、デジタル依存症で、体験して感動したいということを避けています。にもかかわらず、何か自分の作ったゲームで人を感動させたいというのは矛盾していますよね。そもそも検索エンジン上位にヒットする内容が真実なら、そんなものはいくらでもねつ造できます」(名越氏)。

これからのゲームクリエイターは世の中をよく知ること・・・名越氏は壇上から、このように語りかけました。仕事が忙しく、家と会社の往復ばかりで、休日も体力温存のため、あまり出かけない。ゲームクリエイターであれば、そういった事情もわかると名越氏は言います。でも世の中がどうなっているか、そこにこそ「道理の種」が散りばめられています。その種を捕まえるためには、結局のところ自分で体験するしかないのです。

道理を意識して仕事をすることは、価値基準を明確にするという意味でもあります。業界が激変している今だからこそ、つい付和雷同してしまいがちですが、自分なりの価値基準に照らし合わせて判断することが求められると言えそうです。もちろん、その価値基準は常に修正を繰り返していく必要があります。失敗は非常に悔しいし、周りの人を巻き込んで不幸にしてしまうので、絶対に繰り返したくない。でも、失敗を恐れすぎると保守的になってしまう。できる限り良い失敗をしてください、そう話していました。
《小野憲史》

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