ヴァーチャル・リアリティは新しい産業革命だ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第33回 | GameBusiness.jp

ヴァーチャル・リアリティは新しい産業革命だ・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第33回

「バーチャル・リアリティですか? 人間の感覚は簡単に騙すことができるんですよ・・・」と言ったのはセガ・エンタープライゼス(現在のセガ)・AM2研の鈴木裕氏だった。

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「バーチャル・リアリティですか? 人間の感覚は簡単に騙すことができるんですよ・・・」と言ったのはセガ・エンタープライゼス(現在のセガ)・AM2研の鈴木裕氏だった。
  • 「バーチャル・リアリティですか? 人間の感覚は簡単に騙すことができるんですよ・・・」と言ったのはセガ・エンタープライゼス(現在のセガ)・AM2研の鈴木裕氏だった。
「バーチャル・リアリティですか? 人間の感覚は簡単に騙すことができるんですよ・・・」と言ったのはセガ・エンタープライゼス(現在のセガ)・AM2研の鈴木裕氏だった。

それは1993年、春、当時リリースしたばかりのアーケード版『バーチャファイター』のメディア取材の時のことだった。取材でバーチャル・リアリティをどう考えているか?という問いかけに対してのものだ。

当時、3Dのコンピュータグラフィックスを使って格闘ゲームを開発したことが画期的な時代で、リアルな人間の動きを取り入れた『バーチャファイター』そのものが、時代の最先端のゲームにおけるバーチャル・リアリティ的なクリエイティブとして広く熱狂を持って受け入れられた。

さらに、鈴木氏は「電車がホームに止まっている状態で、反対のホームに電車が入線してきたとしましょう。一度は両方の電車が止まっている状態から、反対側の電車が、先に進行方向に進んだときに、自分の乗っている電車はそこに止まっているのに、バックしているような感覚になることがありますよね。あれこそがバーチャル・リアリティで、人間の五感実は簡単に欺くことができるのです」と言った。

さらに「暗闇や時間や平衡感覚を遮断された場所で、床を油圧で作動する機器で動かしたりすれば、それだけでアトラクション的な疑似的な異空間を味わうことができるのではないでしょうか」というコメントをした。

今から20年以上も前に、バーチャル・リアリティの本質を見抜いていた鈴木氏の慧眼ぶりは今もって素晴らしいと思っている。(ちなみに当時の3DCGを再現するゲーム開発基板はアメリカの軍産複合体のゼネラルエレクリック・エアロスペースとセガの共同開発に依るものだった。)

鈴木氏が語り、夢をみた、その異空間の再現が間近に迫っている。

それがプロジェクト・モーフィアスであり、オキュラス・リフトなどに代表されるバーチャル・リアリティ向けヘッドマウントディスプレイだ。

先だって、SCE・WWSプレジデント吉田修平氏を取材することができた。その時のインタビュー記事はこちらを参照願いたい。

吉田氏の考えは簡単である。「従来は大型のアーケードやロケーションベースでしか実現できなかったヴァーチャル・リアリティ技術が、最新の3Dモーションセンサー、高性能ディスプレイと、3Dのグラフィックスの生成できるパソコンやプレイステーション4のようなコンピュターのパフォーマンス・スペックの向上、それらの3つの要素が成長し成熟し、同時にそれらの製造コストも安くなったことにより、ヴァーチャル・リアリティの臨界点をに迎えたことによりコンシューマレベルでのヴァーチャル・リアリティ実現の可能性が高まったということです。」

指摘のように、セガに在職した私は、ジョイポリスなどを使った大型のバーチャル・リアリティ的なアトラクションの開発や実機をたくさん見てきた。しかし、思ったほどの「びっくり感」や「斬新さ」が演出できないまま、徐々に大型のバーチャル・リアリティ的なロケーション・ビジネスは減っていた。

しかし、ユニバーサルスタジオ(米)でも定番の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のライド型アトラクションや「スパイダーマン」のアトラクション、または東京ディズニーリゾートで展開されるシアター型のバーチャルリアリティアトラクションが徐々に浸透し、一方、2009年に後悔されたジェームス・キャメロン監督のヒット作品「アバター」によって、3Dという映像の表現もバーチャル・リアリティへの布石になったと思われる。

結果としては大手ゲーム会社やハリウッド、さらには軍産複合体の巨大なマネーによって徐々にバーチャル・リアリティの夜明けが近づいてきたと言っても過言ではあるまい。

吉田氏は取材をこう結んだ「オキュラス・リフトがフェイスブックに買収されたことに対して、インディーからスタートしたのに、フェイスブックというメジャーに買収されたことをけしからんという声も一部あるようですが、個人的には歓迎しています。ソニーという会社と、フェイスブックという若くて大きな会社がヘッドマウントディスプレイを使った新しいコミュニケーションビジネスに注力しているということは大きなニュースソースであり、ビジネスの可能性を感じさせるものになるはずですから。そして、その意味ではソニーとフェイスブックはヴァーチャル・リアリティの市場を開拓して、新しいビジネスチャンスを開拓する『共闘』関係にあるのです。さらに、マーク・ザッカーバーグはヴァーチャル・リアリティを新しいコミュニケーションの手段として考えているようです」と語った。

手紙、電報、電話、ファックス、モバイル、電子メール、と人間のコミュニケーションの手段は時代とともに大きく変化してきました。一部のネットのツールを除いては「フェイスtoフェイス」のコミュニケーションではなく、文字、声などに依るもので今までのコミュニケーションの時代が過ぎていきました。その意味ではヘッドマウントディスプレイに象徴されるヴァーチャル・リアリティが新しいコミュニケーションツールとして台頭する可能性は大きいと思われる。

個人的には、それよりも先にエロ系コンテンツを使った市場がどれだけ発展するかという部分が大きなカギを握っているように思います。いずれにせよ2014年内のプロジェクト・モーフィアスの発売はありませんので、2015年の導入に期待してみたいと思います。

「バーチャル・リアリティ」から「ヴァーチャル・リアリティ」へ、その「語感」の変化が「五感」に変化を呼び覚ますのではないかと思う。

■著者紹介

黒川文雄
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。

現在は、インディーズゲーム「モンケン」、東映アニメーションのスマートフォン向けゲーム「円環のパンデミカ」を手掛ける、また全日空公式映像ソフト「ANA747 FOREVER」を製作。
「円環のパンデミカ」公式サイト

ツイッターアカウント ku6kawa230
ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』
ニコニコチャンネル 黒川塾ブロマガ」も更新中。
《黒川文雄》

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