ゲームコンテンツの認知難化問題について・・・大河内卓哉「ゲームクロスメディアの現場から」第1回 | GameBusiness.jp

ゲームコンテンツの認知難化問題について・・・大河内卓哉「ゲームクロスメディアの現場から」第1回

ゲーム、映画、漫画、舞台、テレビ、アニメ、カード・・・コンテンツが活躍する舞台は無限に広がり、例えゲームから発生したコンテンツであってもゲームというプラットフォームのみに留まるという事は少なくなってきました。クロスメディア、あるいはメディアミックス

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ゲーム、映画、漫画、舞台、テレビ、アニメ、カード・・・コンテンツが活躍する舞台は無限に広がり、例えゲームから発生したコンテンツであってもゲームというプラットフォームのみに留まるという事は少なくなってきました。クロスメディア、あるいはメディアミックス、というキーワードはこれからも重要性を増していくのではないでしょうか。新連載「ゲームクロスメディアの現場から」では、カードゲーム大手のブシロードでプロデューサーとして活躍する大河内卓哉氏にクロスメディアについて知見を語っていただきます。(編集部)

こんにちは。株式会社ブシロードというカードゲームの会社に在籍している大河内卓哉です。GameBusiness.jp愛読者の一人でしたが、この度はご縁がありまして連載を行わせて頂くこととなりました。皆様よろしくお願いします。

こちらのコラムで皆様と共有したい感覚を単刀直入に申し上げます。

面白いゲームを創るだけで売れる時代は既に過ぎ去りました。

正確に言うと、ゲームコンテンツが面白くあることは非常に大事です。しかしそれだけではそもそも遊ばれない。シビアに言うと存在すら認知されません。その現状を真摯に受け止め、如何に問題を打開して行くか考えて行きたいと思います。

まず、コンテンツを幅広く知って頂く手法から考えていきましょう。身近なところでは、雑誌広告、WEB広告、テレビCM等があります。ですが現実問題はプロジェクトに対して開発費の他に広告費を含んだ規模感及び投資費がある程度決められており、自社単独でプロデューサーの施策したいことを全て行うのは大変難しい現状ではないでしょうか。

予算を使わない広告として記事やツイッター等がありますが、それだけでは一部ユーザーまでにしか情報が届かないことが多々あります。

この告知問題に関して、他社とメディアミックスやクロスメディアを発生させることで解決させようとする試みが様々な企業間で行われています。自社のみでは届かない人々に対してアピールする機会を用意する手法は、広告としても効率良く機能します。

現在私はゲーム・アニメ・コミック等、様々なコンテンツと関わりのあるカードゲームの制作・広告・運営等に携わっております。これは原作イラストやキャラクター設定を使用した玩具媒体におけるコンテンツ表現の1つです。ビジネスパートナーとして相乗効果を高めるという意味において、様々なゲーム会社様や出版者様とクロスメディアを推進させて頂いております。この時代においてクロスメディアという仕掛けが今後更に重要になり、存在感を高めると考えているからです。

近年のデジタルゲームコンテンツは日々進化し、より良く構築されており、純粋にユーザーとして遊んでいて大変楽しいものです。デジタルゲームコンテンツ自体は、ゲームエンジンや表現方法も含めて素晴らしい進化の過程にあります。一方で、ゲームビジネスとしては様々な問題を包括しております。特にゲームコンテンツの存在を人々に認知させることは、年々難化している問題と捉えています。次々と素晴らしいコンテンツが創り上げられているにも関わらず、世間の反応が薄過ぎるとも感じています。

稀にゲームコンテンツは広告費をあまりかけずに垂直立ち上げが成功することもあります。

しかし成功事例を解析すると、大体決まった前提条件があります。それは投入したコンテンツ分野の市場及び遊び方が成熟していないということです。後に○○分野と呼ばれるゲームの先駆者であれば、表現方法が1つでもコンテンツを成功させることが可能です。このゲームの歴史にはゲームコンテンツの力と可能性を感じます。

その一方で、私たちが置かれている開発内容は、先駆者で無いことも多いです。業界による差はある程度存在するとしても、基本的には敷かれたレールの上でのビジネスが行われていると思います。

これは近年話題の携帯系ソーシャルゲームであっても同じで、非IP(Intellectual Property)タイトル、つまり版権を使ったゲームではなく完全なオリジナルゲームの立ち上げは、月日が経過する毎に難しくなっている状態です。

広告費をかけなければ、サービスインしたことすら人々に認知されないことも多いです。

認知されないゲームにおいては、ユーザー数は増えませんし、回収金額もコンテンツ内容において単価差はあるにせよ、ある程度の規模の事業に落ち着いてしまいます。勿論ゲームの完成度や運営はとても大切です。しかしゲームコンテンツ自体を認識されずに消えて行くゲームコンテンツ達が多いことも事実です。非常に勿体無く、また残念に思います。

現在、成功している携帯系ソーシャルゲームは実写ドラマ化、小説化、漫画化等という形でメディアミックスやクロスメディアが進んでいます。広告やコンテンツ内に国民的アイドルを抜擢するようにもなりました。ゲームの存在を世に広げるという意味においては、正しい一手と思われます。その他にはリアルタイムでアニメとメディアミックスを行う事例や、有名ゲームタイトルの続編や番外編も続々と登場し、デジタルゲームコンテンツ同士のメディアミックスも成立しています。

しかし、この事例は魅力的な未開拓分野という状態では無くなったことを明確に示していると感じます。つまり市場として一段階成熟した状態であると言えます。成熟したのであれば、新しい分野のゲームコンテンツを生み出すことは大変難しいでしょう。現在は既にゲーム自体を人々に知って頂く為の投資を行うことやニュースになる話題や口コミで伝達する仕組みを構築することが重要になっています。

今後発展すると考えられるスマートフォン分野に関しては同様です。プラットフォームは違いますがサービスの在り方を解析すると既存の延長上にあると感じます。そう考えるならば普及台数が一定値を超えるタイミングで急激に競争激化する事が予測されます。その時に伸びる大多数のゲームは、やはりメディアミックスやクロスメディアに対して真剣に取り組んだコンテンツになると考えています。

このコラムでは、[ゲームクロスメディアの現場から]と冠して、自分が立っている現場の肌感覚をリアルタイムでお伝え出来ればと考えています。よろしければ今後もお付き合い頂けますと幸いです。 

■著者紹介

大河内卓哉(Takuya Ookouchi)
1985年生まれ。事業家。大手ゲームメーカーに勤務した後、株式会社ブシロード所属プロデューサーとして活動。様々なゲームプロジェクトに携わる。アニメ『カードファイト!! ヴァンガード』には、当人をモデルとするキャラクター「ドクター・オー」が登場する。ラジオ・テレビ出演等、活動は多岐にわたる。
Twitterアカウント @vanguard_dro
《大河内卓哉》

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