【CEDEC 2009】「安い、早い、美味い」カプコン流開発キーワード | GameBusiness.jp

【CEDEC 2009】「安い、早い、美味い」カプコン流開発キーワード

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「安い、早い、美味い」。大手ファーストフードチェーンの標語ではありません。これがカプコン流の開発キーワードです。
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「欧米でヒットするゲームを作れ」。今やこれが、大手経営陣の共通認識だといって良いでしょう。しかし口で言うだけで実現できるなら、こんなに楽なことはありません。

「グローバル時代のゲーム開発」では、カプコンの編成部部長で「バイオハザード5」のプロデューサーとしても知られる竹内潤さんが、「安い、早い、美味い」をキーワードに、どのように現場の意識・組織改革を進めていったか講演しました。

カプコン 編成部部長 竹内潤さん


はじめに竹内さんは海外市場の分析を行いました。第一に今年と昨年の上半期における、日米ソフト販売本数の推移では、当然ながら北米市場が巨大であること。そして北米ではPSPのみ減少しているものの、他は順調に伸びていることがわかります。一方で国内におけるソフト販売本数の占有率では、Wiiだけがファーストパーティが強く、他はおしなべてサードパーティタイトルが多いことを示しました。

また今後の購入意向では、WiiとPS3の購入意欲が高く、Xbox360がある程度普及している北米では、欧州に比べて購入意欲が低めである点も指摘しました。北米では、いまだにPS2の直近の購入意欲が高い点も特徴です。全世界でゲームをヒットさせるには、まず先入観を廃して、正しい市場情報を掴むことが重要というわけです。

北米ではソフト販売が拡大中Wiiを除くとサードパーティ率は高い
北米ではPS2の直近需要も高い欧州もPS2を除けば北米と同じ傾向


続いて話題は今回の主題である、「グローバル時代のゲーム開発」に移りました。

カプコンで北米重視の戦略が定められたのは、約5年前のことです。当時のカプコンは著名クリエイターの退職が続いたり、大型プロジェクトで結果が出なかったりと、非常に厳しい状況におかれていました。倒産や身売りといった噂も囁かれていました。

そんな中で経営陣が示したV字回復の戦略が「海外進出で売り上げを拡大する」ということでした。「そんなん、言うだけなら簡単ですがな」と竹内さんもツッコミを返したそうですが、「こんなシンプルなことを、ずばっという会社はない!」という回答に、「そりゃ、そうやなあ」と思わずうなずいてしまったとか。この戦略に従って、具体的な戦術を考える必要に迫られたのです。

竹内さんをはじめとした部長クラスが集まって、飲みに行ったり、食事をしながら頭をひねった結果、「世界で売るには、そのための基礎体力が必要」だという結論に落ち着きました。そして生まれたキーワードが「安い、早い、美味い」だったのです。例によってこれも現場から激しいツッコミに遭いましたが、説明されると「そりゃ、そうやなあ」と納得してもらえたそうです。ちなみに竹内さんは誰にもわかる、シンプルなメッセージにすることが重要だと補足しました。

早い、安い、美味いのトライアングル


さて「安い」とは、効率化と共有化を進めるということです。具体的には開発のブラックボックスを撤廃し、ライブラリの共有化、開発経験のシェアを進めることでした。その結果として誕生したのが、ゲームエンジン「MTフレームワーク」というわけです。もっとも竹内さんは、昨今ではMTフレームワークが一人歩きをしていて、すごいグラフィックエンジンがあると誤解されている節もあるとか。MTフレームワークは研究チームの努力のたまものだが、あくまで「全社で共通して使う」ことが重要だと強調しました。また優秀な研究開発スタッフを束ねることで、無駄な開発コストも省けたといいます。
 
続いて「早い」は、組織化を進めて無駄を省くということです。そのために最大7つだった開発部署が、まず2つ、次いで1つに統合されました。ベテラン開発者のノウハウ共有に加えて、未経験者が組織で勝負する体制も進めました。これによって情報の伝達ロスを減らし、知識の共有を進め、余剰人員の効率的な活用が可能になりました。結果として管理コストが減り、固定費も下がり、意思決定と行動のスピードが明らかに上がったのです。これが近年の移り変わりの激しいゲーム業界でプラスに働きました。

ただし「早さは安さにつながるが、安さは早さにつながらない」と竹内さんは釘を刺しました。無駄を省いた結果、コストが下がるのであって、コストを下げるために無駄を省くと、モラルハザードなどが発生し、上手くいかないというわけです。

そして最後の「美味い」です。ここで竹内さんは「早い、安いは会社の都合。美味いは、ユーザー側の都合」と断言しました。自分たちが「美味しい」と思うゲームを作るのではなく、お客さんに「美味しい」と思ってもらえるゲームを作ることが、何よりも重要だというわけです。ちなみにカプコンでは新作ゲームが発売されると、家電量販店に繰り出して、お客さんが自分たちが作ったゲームを買っていく様を、みんなで見学するといいます。竹内さんは、こうした行為を重ねていくと、ユーザーと開発者の「おもしろさの価値観」が徐々に共有されていくと語りました。

武内さんはカプコンのゲーム作りで「反主流化」というキーワードも上げました。「ゲーム業界では、まれに『ドラクエ』みたいなゲームを作れという人がいるが、それで何の得になる?」と竹内さんは続けます。他社が作ったものを真似るのでは、モチベーションが下がるし、発想力も磨けません。これは続編制作においても同じで、同社ではジョブローテーションが徹底されており、世界中で大ヒットした「バイオハザード5」についても、すでにチームは解体して、別のチームに統合されているそうです。同じ開発チームからは、新しいIPは生まれないと竹内さんは語ります。

「早い」は効率化で達成「安い」は組織化で達成「美味い」の元は「反主流」


ここで例として出されたのが「ロストプラネット」です。同作は日本人が作る三人称シューティングで、ロボットが登場し、しかもSFです。社内から「失敗の三重苦」とも言われましたが、「アメリカ人は、これらの要素がみんな好きだが、たまたまヒットしたゲームがなかっただけ。こんなチャンスを逃したらダメ」という無茶な理屈で企画を通してしまいました。そうなると現場も張り切り、良いゲームになったといいます。潜在的な需要を探り出すことが、新しいヒットにつながる、というわけです。さらに、こうした三重苦でヒットしたタイトルは、会社の財産にもなるとも続けました。

また竹内さんは、今後のゲーム開発体制を、「総合力と専門力の組み合わせ」というキーワードで整理しました。これはパブリッシャーとディベロッパーの組み合わせだけでなく、国内のゲーム業界全体にも及びます。これから海外で戦っていくには、サードパーティ同士がシェアを競っていてもダメだというのです。それよりも日本のゲーム業界全体で、各社の専門力を生かして、総合力に束ねていくことが重要ではないか・・・。ちなににカプコンでも理想の開発組織に対する答えはなく、来期から大幅な組織刷新を予定しているとのこと。「今までにない、けったいな組織」になるとのことでした。

最後に竹内さんは、自分なりの武器を持つ重要性について語りました。「僕らの武器は時代にあわせて変わっていくこと。鮫と同じで、止まったら死んでしまうんです」

組織力と総合力の組み合わせが次の鍵自分だけの武器を持つことが大切「我こそはと思う企業はぜひご連絡を」(竹内さん)
《小野憲史》

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