「当初からUMDなしの案も」PSP go開発インタビュー | GameBusiness.jp

「当初からUMDなしの案も」PSP go開発インタビュー

E3で発表された「PSP go」。UMDを廃してスライド式のデザインを採用したPSPの新モデルで、日本では11月1日に発売されます。この商品の企画を担当した、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント商品企画部部長の松井直哉氏と柳瀬和大氏に対する合同インタビュー

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E3で発表された「PSP go」。UMDを廃してスライド式のデザインを採用したPSPの新モデルで、日本では11月1日に発売されます。この商品の企画を担当した、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント商品企画部部長の松井直哉氏と柳瀬和大氏に対する合同インタビューが17日、SCEで開催されました。

―――はじめに、PSP goの商品コンセプトについて教えてください。

松井:「ネットワークセントリックモデル」が社内キーワードでした。E3で社長の平井からも話がありましたが、実際の企画・開発は2年ほど前からです。もともとUMDドライブを外すという案はPSP誕生時からありましたが、単にそうしたハードウェアだけを出すのでは、ユーザーの皆様にPSPの楽しさを感じていただけません。PlayStation NetworkやPS3とのコンテンツの互換、「Media Go」のようなPC向けのコンテンツ管理用ソフトウェアなど、さまざまな環境準備を整える必要があります。

ディスクというフィジカルなメディアでの流通と、デジタルコンテンツの流通という、環境準備が整った段階で出したい。これらを過去2年かけてやってきました。そういう意味で「ネットワーク配信に特化した商品」ということです。既存のPSPと平行して販売させていただきますが、PSP goはデジタルコンテンツに、より慣れているお客様をターゲットにした商品となります。

―――操作パネルがスライド式になりました。

柳瀬: PSP goでは、様々なコンテンツをより手軽に外に持ち運んで使ってもらうため、小型軽量化をはかることが大きなコンセプトでした。持ち運びやすさと軽さを追求する上で、どんな形状が最適か社内で議論を重ねた結果、スライド式を採用しました。その上でゲーム機としての操作感を保つということで、今回の大きさになっています。

―――お二人の仕事の分担について教えてください。

松井:商品企画部の部長を務めています。商品企画部はPSPだけでなくPS3も担当していて、プレイステーションのハードウェアと、組み込みソフトウェアの仕様の策定、商品コンセプトなどのとりまとめをしている部署となります。私はそこで、PS3・PSP・周辺機器すべての仕様策定を行っています。

柳瀬:私は松井の下で、PSP goの商品企画を担当しています。

―――PSP goという名前の由来を教えてください。

柳瀬:小型軽量化をテーマに、より手軽に、積極的に外に持ち出していただきたいというコンセプトからネーミングしました。PSPは全世界で販売される商品なので、ワールドワイドで分かりやすい言葉ということで議論を重ねた結果「PSP go」を選びました。

―――ボタン類の形や大きさがかなり変わっているようですが?

柳瀬:そこが一番苦労した点です。小さくするだけなら、いくらでもできますが、操作性を失っては本末転倒です。そこでゲームに没入できて、かつどこまで小型化できるか、かなり苦労して調整しました。ボタンの高さや大きさについても、コンマ1ミリ違いの試作品をいくつも作って、社内のさまざまな部署からヒアリングを受けるなど、広範囲に意見を収集して決定しました。

―――アナログボタンの追加などの検討はされましたか?

松井:PSP goはPSPファミリーの新しいラインナップという位置づけです。ゲームのインターフェースとして、UIを増やしてしまえば、PSP go専用というカテゴリーのゲームができてしまいます。当然、それも選択肢としてありましたが、お客様にとってPSPから想像される商品イメージは一つでありたいと考えました。PSPユーザーもPSP goユーザーも同じ体験が享受できる、そこにこだわりを持って開発しました。

―――タッチやモーションセンサーなどがあっても良かったのでは?

松井:当然、ハードの更新の時点でいろんな機能追加はできます。ただし、PSPファミリーとして同じユーザー体験を保つ点が重要でした。そこで今回はBluetoothであったり、「ゲームスリープ」機能など、使い勝手を向上させる方向での機能追加をしました。

―――ダウンロード配信でゲームソフトを購入する流れを教えてください。

柳瀬:大きく3つの方法があります。1つは昨年10月のシステムソフトウェアのアップデートで、PSP本体から直接PlayStation Storeにアクセスできるようになりました。PSP goでも同じようにアクセスして、無線LANで直接ダウンロード購入いただけます。

2つめはPS3を経由する方法です。PS3でPlayStation Storeにアクセスし、ソフトをダウンロード購入いただいた上で、USBでPSP goに転送していただけます。

3つめは「Media GO」という、PCでコンテンツの管理ができるアプリケーションをインストールしていただくと、PlayStation Storeにアクセスできますので、無線LAN環境がなくて、PS3もお持ちでないお客様でも、PCからダウンロード購入いただけます。そこからPSP goにUSB転送いただく形です。

―――PSP goでゲームソフト以外のコンテンツを楽しむ際、何か特別なデジタル配信の方法は用意されますか?

松井:従来のPSPと同様に、すべてPlayStation Storeで配信されているものを、ご購入いただく形となります。PlayStation Storeのコンテンツは、日米欧の、それぞれの地域のお客様に分けて配信されています。日本のお客様に対しては、アニメを中心とした映像コンテンツが配信されています。

―――既にユーザーが購入したUMDソフトの変換サービスなどの予定はありますか?

松井:前向きに検討しています。

―――ユーザーターゲットについて、もう少し教えてください。

柳瀬:既存のPSPユーザーの方はもちろんですが、今回新しい使い方の提案を行う商品が出るということで、PSPの名称は知っているが、触ったことがないユーザーの方々にも、これを機会にご購入して、楽しんでいただければと思っています。

―――スライドを開かないで操作することはできますか?

柳瀬:はい、スライドを閉じた状態でもLRキーなど、表に出ているボタンなどは操作できます。だから『LocoRoco』のようにLRキーでプレイするゲームは、メニューの決定や選択などの際はスライドを空ける必要がありますが、ゲームプレイ自体はスライドを閉じた状態でもお楽しみいただけます。これ以外に一度スライドを開いて音楽やビデオを再生し、スライドを閉じて視聴したり、Bluetoothで操作したりといったことができます。

―――Bluetoothで何がつながるのか、周辺機器のイメージを教えてください。

柳瀬:Bluetooth機能の搭載、特に音楽をワイヤレスで楽しむというのは、お客様からのご要望で、最も多いものの一つでした。ゲームプレイ時もサウンドをワイヤレスで飛ばして楽しんでいただけます。またPS3のワイヤレスコントローラを使ってPSP goの操作もできます。PSP-2000からテレビに映像を出力してPSPのゲームを楽しめるようになりましたが、PSP本体をコントローラとして使う場合、これまではケーブルの長さという制約がありました。そこでもう少しテレビから離れて、ゆったり楽しめるように、PS3のコントローラをBluetoothでPSP goに接続して操作できるようにしました。

―――画質と音質は従来と同じですか?

柳瀬:はい。同じクオリティです。唯一違うのが液晶のサイズで、4.3型から3.8型になっています。スピーカーも同じ品質のものです。

―――PS3コントローラーでPSP goを操作する場合、ボタンの数が違いますが?

柳瀬:PSP goと共通のボタンのみが反応します。ですから右アナログスティックやL2,R2ボタンは反応しません。

―――UMDドライブがなくなり、液晶サイズが小さくなったにもかかわらず、価格が現在のPSPより7000円高くなった理由は何ですか? Bluetoothなどの機能を外して、よりコストを削減する考え方もあったと思いますが?

松井:まずPSP goの商品コンセプトの中に小型軽量化がありました。それを実現するために必要な部品であったり、持ち運んで、より便利に扱っていただくために、Bluetooth対応を考えました。それと一番大きいのが、16GBという、ポータブル機としては比較的大容量のフラッシュメモリを搭載させていただいたことです。もともとゲームを10本持ち運んでいただきたい。それで16GBという数字を決めたのですが、PSP go1つで完結できるような形として、まずミニマムセットを定義したところがあります。そこで結果的に、コストのバランスなども考えまして、日本では税込希望小売価格26800円という価格となりました。それで我々としては十分、これまでのPSPに対して付加価値のご提供ができていると判断させていただいています。

―――フラッシュメモリへの書き込みになったことで、ダウンロード速度の向上はありますか? また通信規格で現行のIEEE 802.11b以外に対応される予定はありますか?

松井:ネットワーク環境は国内だけでなく、ワールドワイドで考えた場合、かなり無線環境で左右されてしまいます。そこで一概にPSP-3000とPSP goでダウンロードのスピードが変化するか、といった問いには答えられません。また新しい無線規格の採用については、世の中の進歩に応じて対応していきたいと考えています。

―――カラーバリエーションを黒と白の2色に決められた理由と、今後の展開について教えてください。

柳瀬:まずピアノ・ブラックについては、PSP発売当初からの基本色という意味で採用いたしました。また男性だけでなく、女性の皆様にも安心して手にとって使っていただけるように、PSP-3000で導入してご好評いただいたパール・ホワイトを採用しました。今後のカラーバリエーションについては、お客様のご要望を鑑みながら検討していきます。

―――PS3で保存している動画を、PSP goにBluetoothで転送することはできますか?

柳瀬:その機能はないです。大容量データのやり取りはUSBで行うことになります。

―――今後のシステムソフトウェアの更新はPSPとPSP goで同じですか?

松井:システムソフトウェアについても、同じPSPのプラットフォームとして、広くあまねく、同じ物を提供していきます。もっともワンセグ機能などのように、型番によって対応していないサービスもあります。

―――既存の周辺機器などを、そのまま使えるようにする仕組みはありますか?

柳瀬:PSP goでは端子の数を減らして、「マルチユース端子」に集約しました。そのためUSB端子を使う、既存の周辺機器は物理的に挿せません。しかし、今後PSP goでも使えるような手段を検討中です。

―――メモリースティックが変更された理由は何ですか?

柳瀬:これも小型軽量化が理由です。基本的には16GBのフラッシュメモリを搭載していますので、セーブデータや音楽、ビデオなどは、ここに保存していただけます。さらに16GBでも容量が足りないと感じられるユーザー様のために拡張用の保存メディアとして、より小型のメモリースティックマイクロ(M2)のスロットを搭載しました。

これ以外に柳瀬氏から、「ゲームスリープ」という新機能について補足がありました。これはPSP goでは大容量フラッシュメモリを利用して、ゲームの状態を一時的に保存できるというもので、従来の「サスペンド」と違い、クロスメディアバーにまで戻ることができます。これによって他のアプリケーションを起動させることが可能になりました。ゲームを一時中断してブラウザを起動し、インターネットで情報を閲覧してから、再びゲームを再開する、などのシームレスな活用ができるようになるとのことです。

今回の合同インタビューで松井氏と柳瀬氏が協調したのは、「PSPファミリーとしてのPSP go」という位置づけでした。PSP goはダウンロード配信がめだちますが、PSP-3000との併売であったり、PlayStation Store内でのコンテンツ購入であったりと、あくまで既存のPSPの枠内に収まる商品だということです。これには一部で報道されているような、iPhoneなど他のカテゴリとの対抗商品ではない、というメッセージが言外にこめられているようにも感じられました。

また実際に本体を持ち上げた時の感触は、想像以上に薄く、軽いものでした。実際に店頭で触ると、よりハッキリ魅力がわかる「体験型商品」という印象ですので、ぜひ読者の皆さんにおいても、発売後は店頭で実機を触ってみてください。
《小野憲史》

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