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GDC2010 Zynga ソーシャルゲーム
【GDC2010】家庭用からソーシャルゲームへ・・・1億ユーザー『FirmVille』開発者が語る「計測的開発手法」
2010年3月14日(日) 05:14 Text by 小野憲史(Kenji Ono)
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「自分たちがソーシャルゲームを作れば、もっと良い物ができる」・・・。そう考えているコンソールゲームの開発者は少なくありません。これは日本でも海外でも変わらないようです。

しかも日本ではソーシャルゲームの開発者自らが「自分たちはゲーム作りのノウハウがないので・・・」とへりくだる姿がよく見られます。これにも「だから一緒に、もっとおもしろいソーシャルゲームを作りませんか?」という本音が隠されていたりするのですが・・・。コンソールゲームとソーシャルゲームの開発文化には、広くて深い溝が横たわっています。
 
Zynga社のプロダクト開発副社長、マーク・スカッグス氏がGDCで11日に行った講演「Creating Successful Social Games:Understanding Player Behavior」は、こうした状況に活を入れるような内容でした。同氏はFacebookで大旋風を巻き起こし、「農場ゲーム」という一大ジャンルを作り出した『FirmVille』開発にもかかわった人物です。

そして彼はまた『コマンド&コンカー:レッドアラート2』や『ロードオブザリングス:バトルフォー・ミドルアース』など、コンソール向けに数々のヒットゲームを作り上げ、1600万枚にも及ぶセールスを記録した人物でもあります。会場は大入り満員で立ち見がずらりと並び、関心の高さを感じさせました。

マーク・スカッグス氏会場は大入り満員で立ち見が出たほど


スカッグス氏が主張したのは「計測的開発手法」ともいえるものでした。勘や経験、開発チーム内での議論に頼るのではなく、徹頭徹尾プレイヤーのゲーム内での行動を計測してデータを収集しろと説きます。そして、それを分析してゲーム開発に生かすことで、よりヒットするゲームが作れるというのです。

「ゲームのおもしろさを計測することはできないが、プレイヤーの行動は計測できる。そして何度もプレイヤーが反復して行う行為があれば、それが『楽しい』ということだ」(スカッグス氏)。

スカッグス氏はまず、ウェブの通販サイトやPCゲームにおけるユーザーアクションのモデルを例に出して説明を行いました。通販サイトでは数多くのユーザーが閲覧しても、そこから商品を検索して、購入操作をはじめ、実際に購入するのは、ほんの数パーセントにすぎません。ほとんどの人はその過程で、操作が分からなかったり、興味が持続せずに、脱落してしまうのです。

これはPCゲームでも同じで、ゲームを買ってもインストールして、チュートリアルを体験し、ゲームを始めるころになると、ユーザー数が減っています。そして一通り遊んで、また翌日も続きを遊ぼうと思うユーザーはさらに減少。そこからどんどん遊び続けて、友達に口コミでおもしろさを伝えるようなユーザーは、まさしくほんの一握り・・・。悲しいかな、これが現実なのです。

実際、スカッグス氏が過去に行ったPCゲームのフォーカステストでは、103名のユーザーのうちゲームのインストールで3名が脱落し、そこからチュートリアルをパスして実際のゲームに進めたのは、25名だけだったといいます。チュートリアルの過程で75名のユーザーが脱落してしまったのです。これでは何のためのチュートリアルかわかりませんが、実際にはしばしば見られる光景です。体験版がクリアできずに買う気がそがれてしまった・・・なども同様でしょう。

ウェブ通販では大半の人が買うまでに脱落するPCゲームでは継続してプレイする人は一握りチュートリアルで3/4が脱落した


これと同じ失敗は、自社のソーシャルゲームでもあったと言います。ZYNGAが2008年8月にリリースした『Mafia Wars』では、5ステップのチュートリアルが用意されていましたが、途中で辞めてしまうユーザーが多く見られました。そこでランダムに2ステップを取り除いたところ、とにもかくにも25%以上のユーザーがチュートリアルをパスして、実際のゲームに進んだのです。しかし、そのためゲームの理解がより困難になったのは否めなかったのですが。

2009年後半にリリースされた『FirmVille』では、この教訓が生かされ、できるだけ画面を見ただけで遊び方がわかる工夫が凝らされました。チュートリアルも別途もうけるのではなく、ゲーム内のダイアログボックスに、ちょっとした情報が表示される形式となりました。これにより、より簡便でわかりやすいチュートリアルができ、ヒットの一要因につながったと言います。

「前に作った時はこうだったから」「プレイヤーはこの仕様を気に入るはずだから」「こんな仕様を入れるなんて本気か?」「もう決定したんだ!このやり方でやるんだよ」・・・。コンソール開発現場でよく聞かれる、こうした会話はすべて無意味だとスカッジ氏は続けます。それよりもテストをして、効果を測定するべきだと。なによりも重要なのは先入観を捨てることだというわけです。

よくウェブで見られる、ニュースなど強調したいリンクを赤色で表示するやり方も、本当に効果的なのかとスカッグス氏は疑問を投げかけます。実際に4色のリンクでクリック数を計測したところ、なんとピンクが一番多かったのです。これには『FirmVille』に女性プレイヤーが多かったから、という背景もありそうですが・・・。いずれにせよ常識を疑い、計測してみることが重要なのです。

この計測的開発は新しいアイテム開発にも生かされています。ある計測結果で、価格が安く成長が早いイチゴの種が多く売れていることがわかりました。そこでさらに成長の早い「スーパーベリー」を投入したところ、予想通り人気アイテムになりました。他のアイテム開発についても同様だと言います。

『MAFFIA WARS』ではチュートリアルを簡略化『FirmVille』ではチュートリアルをより意識
赤色が目を引くというのは思い込みにすぎないユーザーの行動計測から新アイテムを開発


スカッグス氏が計測的開発を重視するようになったのは、バリバリのハードコアゲーマー向けRTS『コマンド&コンカー』シリーズの開発が背景にありました。テストプレイの結果、あるマップや仕様が本当におもしろいのか、効果的に開発チームにフィードバックする手段が難しかったのです。

そこでゲーム内のプレイヤーの行動を5分単位で計測し、グラフ化して、行動パターンを分析する試みが実施されました。その結果「資源採掘」「建造」「移動」「攻撃」の4つの行動比率が、ゲームの展開につれてバランスよく推移している時は、プレイヤーがゲームに熱中している時だとわかりました。そしてパターンが単調になった時は、ゲームに飽きてしまった証拠だとわかったのです。これにより開発チームへのフィードバックが格段に向上したと言います。

「計測は楽しい」とスカッグス氏は語ります。プレイヤーはすべてのゲームにおいて血液の循環のようなもので、その行動を追跡していくことで、問題を発見して解決できる。やみくもにユニークユーザー数や有料ユーザーの平均消費額の工場を求めて試行錯誤するのではなく、リアルのデータを客観的に分析しよう。そして「計測的開発」をソーシャルゲーム開発者の共通認識にしよう。それをもとにローンチ後の継続的な運営を行っていこう、そう述べられました。

PCゲーム開発時代の経験が生きたプレイヤーの行動を5分単位で計測
ゲームに熱中している時のパターンゲームに飽きている時のパターン


スカッグス氏の「データ主体の開発」はオンラインゲームの運営でよく聞かれる内容で、それほど目新しいものではありません。しかし、すべてをクリック数で計測でき、オンラインゲームよりも圧倒的に開発負荷の軽いソーシャルゲームでは、この計測と改良のループを非常に短くできます。そして、この繰り返しがカジュアルユーザーを捉えて放さないコンテンツ開発につながるのです。

なにより本講演は、ハードコア向けゲーム開発のトップクリエイターが、その経験を生かしてソーシャルゲーム開発に、本気で取り組んでいる姿勢を広く示したという点で印象的でした。「この程度の作り込みで良いのか」「こんなのゲームじゃない」・・・。まだまだ、こうしたコメントが多く聞かれるソーシャルゲームですが、その影には、コンソールゲームの開発とは異なる苦労や取り組みが隠されています。逆にそれなくしてソーシャルゲームで成功することは困難だ、といえそうです。
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この記事に関するつぶやき
muhaku96 (紙白梅彦)
作り方メモ。計測自体より、「先入観を疑う」「プレイヤー視点追求」がポイントだろうなと。 RT @GameBizJP 【GDC2010】家庭用からソーシャルゲームへ・・・1億ユーザー『FirmVille』開発者が語る「計測的開発手法」 http://bit.ly/dbv4cy
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