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GDC2010 シド・メイヤー 基調講演
【GDC2010】伝説のゲームデザイナー、シド・メイヤーが語るゲーム哲学とは・・・GDC基調講演
2010年3月13日(土) 10:19 Text by 今鳩越前(Echizen Imabato)
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金曜日の午前10時より、『Civilization』シリーズなどで知られ、以前GDC 2008 のGame Developers Choice AwardsにてLifetime Achievement Award(生涯功労賞)を受け取ったSid Meier氏による基調講演「The Psychology of Game Design (Everything You Know Is Wrong) (心理学的観点からのゲームデザイン(あなたの知っている事は全て間違っている))」が行われました。

今回のGDCではプラットホームホルダーによる基調講演が行われなかったため、氏のキーノートスピーチが最も注目を集めるものとなりました。GDCのイベントディレクターであるMeggan Scavio氏から紹介を受け登壇したMeier氏は会場から大きな拍手を受けて講演を始めます。

非常に多くの観衆で埋まった会場シド・メイヤー氏


まず彼は「ゲームとは心理学的な経験である」とし、彼が歴史をベースとしたゲームを数多く作ってきた理由を、それらを可能な限りリアルにすることが可能だからだ、と説明しました。当初彼は史実に忠実にすることのみにとらわれ、プレイヤーの感情には配慮しなかった、と言います。

しかし、経験を積んでいく中で彼はプレイヤーの心理こそが最も重要であることに気づき、その分析を始めます。そしてたどり着いたキーワードが「egomania、paranoia、delusions(自己中心主義、偏執病、妄想)」です。『Civilization』の目的である「最強の文明をつくり時代の覇者となれ」はまさに自己中心主義そのものではありませんか、と会場を爆笑させました。

続いてのキーワードが「Winner's Paradox(勝者のパラドックス)」です。現実ではいつも勝てるわけではなく、勝者はただ1人です。しかしゲームの世界では全てのプレイヤーが勝者になれる可能性があり、それにクレームをつける人もいません。映画や小説もしかり、ランボーは常に勝ち、シャーロック・ホームズは必ず事件を解決します。プレイヤーは常に満足、達成感を求めており、現在のMeier氏のゲームデザインはそれに報いるものになっているそうです。



次のキーワードは「Reward and Punishment(報酬と罰)」、プレイヤーはほめられる限りはそれを素直に受け取ります。「ホントにほめられるような事をしたの?」とわざわざ内容を確認するプレイヤーは多くありません。しかし、プレイヤーがミスした場合、なぜそうなったのかがプレイヤーに明確になっている必要があります。次に同じミスをしないためです。プレイヤーが段階的に学習できるような構造になっていること、それがまた遊びたくなる欲求(リプレイ性)につながります。この仕組みが非常に大切だ、とMeier氏。

次に、彼はゲームの最初の15分は報酬を与え続けるべき、少なくとも15分間はプレイヤーが迷うことなく楽しんでゲームを遊ばせるようにし、不安を感じさせないようにするべきだ、と説明します。しかしそれは難易度を下げることではなく、カジュアルゲーマーもコアゲーマーも楽しめるようにするには異なる難易度設定が必要です。

続いてのキーワードが「Unholy Alliance(不条理な同盟)」です(商標登録しておこうか、とキーワードに「TM」がくっつき、会場を笑わせます)。かつてフライトシミュレーターはグラフィックもシンプルで操作も簡単でした。しかし、ハードが進歩するにつれグラフィックはリアルに、そして操作系もリアリティを求めるためにどんどん複雑になっていき、結果として脱落するユーザーが続出する事態になってしまいました。製作者はプレイヤーを常に喜ばせておく必要がありますが、それはリアリティの追求ではありません。映画の中で主人公が超人的な活躍をしても、かつてゲームに16色しか使えなかった時代にもユーザーは不満を抱いたりはしませんでした。「suspension of disbelief(ユーザーに不信感を持たせない)」が重要なのです。



次のキーワード、「Moral Clarity(明瞭な道徳性、意志)」。「Civilization Revolution」では様々なリーダーがいますが、彼らはあと都市が1つしか無い瀕死の状態でも極めてアグレッシブな態度を示します。開発中、テストプレイヤー達は「これはおかしい、この状態でそんな強気でいられるわけがない」と言ってきたそうです。しかし、逆にリーダーに命乞いをさせてみると、今度は「そんな相手を攻め落としても達成感が無い」と言ったのだそうです。

続いてのキーワードは「Mutually Assured Destruction (MAD) (相互を認識した破壊)」。Meier氏は、『Cold War』の開発チームとプレイヤーの関係性がとても面白かった、と言います。そのどちらもがゲームバランスを完全に破綻させることが出来るから、だそうです。その他にも、MicroProse社にて途中でキャンセルになってしまったアドベンチャーゲームを例として挙げました。そのゲームではプレイヤーが苦労して探し出した王様が実は敵で、その後ゲームの振り出しに戻されてしまう、というプロットを採用、開発チームはとても気に入っていたのですが、ではプレイヤーがこれを気に入るかというと間違いなく怒り出すだろう、と開発を中止させたそうです。

ここまで説明した事例、そして『Civilization Revolution』の戦闘システムを開発しているとき、プレイヤーというものがいかにわがままなものなのかに気が付いた、とMeier氏は語ります。

『Civilization Revolution』では戦闘前に勝利確率が表示されるのですが、例えば確率3対1の戦闘で負けるとプレイヤーは怒り出します。こちらが「確率なので負ける場合がある」と説明しても聞く耳をもってくれません。しかし、逆の状況になった時はそうではありません。確率1対3の戦闘に勝利した場合に不条理に感じるか、と聞いても、「正しい戦略があったから勝てたのだ」などと自分を正当化します。また、2人対1人の戦闘で負けてもそれほど怒らないのに、20人対10人の戦闘で負けるとたいていのプレイヤーが怒るそうです。数学的にはそこに違いは無いのですが。

このように、プレイヤー心理というものは論理や数学とは異なるものですが、それでもプレイヤーに不信感を抱かせないようにするためのさらなる調整を行うことが重要だ、と説明しました。


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