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GDC2010 任天堂 坂本賀勇
【GDC2010】任天堂、坂本賀勇氏が初めて明かすゲーム作りのアプローチ
2010年3月12日(金) 21:02 Text by 土本学(Manabu Tsuchimoto)
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任天堂企画開発本部の坂本賀勇氏は木曜日にゲームデザインのトラックキーノートとして、「From METROID to TOMODACHI COLLECTION to WARIOWARE: Different Approaches for Different Audience」(メトロイドからトモダチコレクション、メイドインワリオ: 異なるユーザーに対する異なるアプローチ)とする講演を行いました。

広い会場は瞬く間に大入り満員となりました。米国任天堂のレジー社長らも最前列に見られました。



坂本氏がこのような場に立つのは初めてだそうで、入念な自己紹介から入ります。それもそのはず、坂本氏の作品は『メトロイド』シリーズを除けば海外展開されているのは『メイドインワリオ』くらいで、多くは「マニアックでドメスティックなタイトルばかり」だからです。しかし、「日本では『メトロイド』さえもマニアックと言われていますが、このマニアックなものしか作らないスタンスはかなり気に入ってます」とのこと。

■岩田社長が疑問に思う坂本氏のゲーム制作

『メトロイド』シリーズは夏頃の発売が期待される『METROID: Other M』を現在プロデューサーという立場で制作しています。既に別記事でお伝えしていますが、多くの豪華スタッフが参加しているそうです。坂本氏はシリーズの生みの親と言われる事も多いですが、本人としては「単純なデザイナーで関わってきたわけではないが、フランチャイズを立ち上げたと言われるのはちょっと違う」と遠慮がちでした。シリーズではドラマ性を重視した演出を多用してきました。

一方の『メイドインワリオ』(海外ではWarioWare)シリーズは180度変わってコミカルなゲームです。自身がクリエイティブにまで関わるというよりは全体の統括をするプロデューサーとしての立ち位置が強いようです。元々はジャイロセンサーの評価のために試作したゲームが岩田社長に「くだらねーと受けた」(坂本氏談)ことから開発が始まりました。その時の様子は↓のように回想されています。その後、DSのロンチの『さわるメイドインワリオ』、Wiiのロンチの『おどるメイドインワリオ』と続き、28日に北米でも発売になる『メイドイン俺』となります。シリーズではハイセンスなバカバカしさを追求したということです。

その他触れられたのは『トモダチコレクション』、自分にとって転機になったという『ファミコン探偵倶楽部』、岩田社長がプログラムをした『バルーンファイト』でした。

メトロイドメイドインワリオトモダチコレクション
ファミコン探偵倶楽部バルーンファイトなんでこんなに作風の違うゲームを・・・?


このように様々な作風のゲームを作ってきた坂本氏。ある時、岩田社長から「ま逆に位置するようなタイトルにどのようなスタンスで取り組んでいるのか」と疑問を投げかけられ、興味深いからGDCで講演するように言われたそうです。そうして「特に何も意識してなかった」という坂本氏は「自信は一体どのようなアプローチをしているのか、そもそもプロデュースとは何なのか」について考え、まとめたそうです。

■ある映画監督から受けたインスピレーション

坂本氏が振り返ったとき、物作りに決定的なインスピレーションを与えられたのは、イタリアの映画監督Dario Argento氏の作品だったそうです。それまで恐怖映画に興味があったものの、作品的に評価できるものに出会ってこなかった坂本氏は、「ムード」「間」「伏線」「コントラスト」を完全に支配した作品に強烈に引き付けられ、「彼のような作品を作りたい」と感じるようになったそうです。

その4つの要素は早速実践する機会がありました。ディスクシステムの『ファミコン探偵倶楽部』です。この作品はDario Argento監督へのオマージュ的な作品になったそうですが、演出方法には自信を持ったそうです。

それから沢山の映画を見るようになったそうです。映画には様々なタイプの「ムード」「間」「伏線」「コントラスト」があります。ハリウッドには余り興味が持てず、カルトムービーから沢山のヒントを得たそうです。特に気に入ったのは「Leon: The Professional」のLuc Besson監督、「A Better Tomorrow」のJohn Woo監督、「Carrie」のBrian De Palma監督だそうです。一方で坂本氏はマニアほど映画を観るわけでも、コンプレックスがあり、いつか監督になりたいと思ってるわけではなく、そこで得た刺激をゲームでも伝えたいという思いだということです。

■そして「笑い」

一方、映画と並んで付き合いの長い趣味として坂本氏が挙げたのは「笑い」です。それも単にお笑いを楽しむといったレベルではありません。「一日のかなりの時間を使い、面白がってもらえるネタを探している」と言います「面白がって貰えるように、周到に作戦を練っていて、高品位なネタを掘り当てたらあらゆるシチュエーションや相手を想定し、ベストパターンを目指している」そうです。そんなこだわりを持つ坂本氏ですが、ある時、「自分は笑いをコントロールしたいと考えている事に気付いた」そうです。そしてその笑いのコントロールは映画と同じで「ムード」「間」「伏線」「コントラスト」で構成されていたのです。

映画では音楽で「ムード」を作り、「間」や「伏線」で物語を演出し、「コントラスト」で印象付けます。笑いでは「ムード」はいわゆる"空気を読む"ことに通じ、ネタに誘導するための「伏線」を張り、「間」を測り、「コントラスト」で笑わせます。

シリアスとコミカルという一見正反対の要素は、実は同じような仕組みで生み出されていることが分かります。基本は、自分が興味を引き付けられるものを常日頃から貯めて、適切な時に引き出すということです。両極端の作品が作れたのは、たまたま坂本氏がシリアスとコミカルの両方に興味があったからということになります。

「シリアスとコミカルな物作りに特に違いはありませんでした。ただそれはあくまで手段の話。色々な物に共鳴できる感性とそれを貪欲に掘り下げようとする心があれば、共通の手法によって人の心を様々な方向に動かす事が考えられると思われます」。

作風は事なれど4つの要素は変わらず同じアプローチ


■ゲーム開発は自分のイメージを形にして伝えていく

坂本氏は言います、ゲームは今までに出会って心を動かされてきたものを置き換え、多くの人に伝えていくという使命だと。

入社時にはまだファミコンはなく、ある時から仕方なくゲーム作りを始めて、それが性に合っていたのか夢中になったという坂本氏。無邪気に楽しんでいた数年後のある日、女性から手紙とチョコレートが送られてきたそうです。そこには「『ファミコン探偵倶楽部』がとても良かったのでバレンタインデーにチョコを送ります」と書かれていたそうです。坂本氏は感激よりも先に衝撃を覚え、自分たちの発信するものが人の心を動かし感動させるのだと気づかされ、責任感とプロ意識に目覚めたそうです。

そこから、自分の作ったものを遊ぶ人を思い浮かべてゲームを作るようになったそうです。それは妻、友人、息子、見知らぬ誰かといった人たちです。

「私は、自分のゲームを遊ぶ人の一番良い顔のためにこれからも努力をしていきます。ここにいる方は何かしらの形でゲームを作られている方だと思います。心に蓄積された美しいものや感動したものをぜひ伝えていってください。そうすれば、ゲームは永遠に続いていくと信じております」

著者: 土本学 株式会社イード。GameBusiness.jp編集長。興味関心はゲームビジネス、ウェブメディア、リサーチなど。Twitterでもつぶやいてます。
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